一般に、「捻挫をすると、くせになる」と
よく言われています。
しかし、
本当に「捻挫はくせになる」のでしょうか?
じつは、
捻挫後に足関節が不安定になってしまう場合があり、
それで、あたかも捻挫が「くせ」に
なってしまっているように思われるのです。
捻挫後、足の関節が不安定になる障害の一つに「足関節不安定症」という疾患があります。
そもそも、足関節は安定して捻挫がしにくいように靭帯などで守られていますが、
捻挫後に、靭帯が緩んだ状態で、
治ってしまったり、
捻挫したときに骨の一部分がはがれて、
そのままの状態で治ってしまったりしたばあいに、
「足関節不安定症」がおこるのです。
上の絵は足関節を外側から見た絵です。
①で指すグレーの線は足関節の前方移動を止める靭帯(前距腓靭帯)です。
この靭帯が緩んでそのまま治ってしまった場合、足関節の不安定性が生じます。
②の部分は腓骨の下端部分を示しています。
②の赤丸で囲んだ部分は小児期は軟骨成分が多いので、子供さんが捻挫をした場合などは、
靭帯と一緒に引っ張られて、はがれてしまうことがあります。
子供の時に捻挫をして、その当時はちゃんと治ったつもりだったのに、
中学生や高校生ぐらいになって、足首の捻挫を繰り返すということがよくおこります。
こういった場合、②の部分がはがれてしまっているということが考えられます。
上の写真は13歳の女性の足関節を前から撮ったレントゲンです。
捻挫をしていない足を手で内側にねじって撮ったものです。
正常な足なので、内側へひねっても、骨がずれているところは全くありません。
右の図は足関節の靭帯をエコーで撮ったものです。
赤→で示した前距腓靭帯は奇麗に整っていることがわかります。
上のレントゲン写真は同じ人の怪我をした左足を前から撮ったものです。
こちらは腓骨の下端部に小さな骨片(赤丸の中心部分)が認められました。
右のエコー図でも、骨片(赤丸の中心部分)が確認でき、靭帯が波打っているのがわかります。
こちらは靭帯が少し緩みなおかつ骨片があったため、足関節が不安定性になっていたとかんがえられます。
上の写真は怪我をしたほうの足関節を軽く内側にひねって撮ったレントゲンです。
先ほど写真で赤丸で示した骨片が動いているのがわかります(赤→の先端部分)。
エコーでみると、骨片についた靭帯部分が確認でき、ゆるんで いることがわかります。
このようになると、足首の安定性がなくなってきます。
足首の安定性がなくなると、
写真のような爪先立ちの状態で、
足首を固定しづらくなります。
上の写真は18歳男性のレントゲンです。
過去に5回の捻挫歴があり、テニスのプレー中に痛みと不安定感を覚えるので、当院を受診されました。
捻挫をしていない良いほうの足関節は靭帯(水色の線の部分)が緊張しているため、
ぐらつく様子は見られません。
この写真は捻挫している方の足関節です。
足首をねじると足首の骨(距骨)が大きく傾いているのがわかります。
つまり、靭帯(水色の部分)が緩んでいるために、
足関節が不安定であると考えられます。
靭帯が緩んでいるので、前方部分(黄色矢印の方向)へ足関節が動いてしまい、
その結果、不安定感がでてくることになります。
靭帯が緩んでいるので、前方部分(黄色矢印の方向)へ足関節が動いてしまい、
その結果、不安定感がでてくることになります。
このように、足関節の捻挫といっても、
いろんな原因があります。
足関節の不安定感を覚えてお困りの方は、まずは専門医までご相談ください。
足関節不安定症といっても、全員が手術に至るというわけではありません。
まずは、リハビリをして、
足関節の周りの筋肉を鍛えて治していきます。
それでもなお、足関節の不安定性が残り、
スポーツ時や生活上に問題があるという場合には、
手術適応になると考えていただくとよいかと思います。
靭帯が緩んだ足関節を放置しておくと、
こんどは足関節の軟骨を傷めてしまうという結果になることもあります。
ですので、足関節不安定症を放置せず、きちんと治療しておくことが大切です!