距骨下関節症は、距踵関節症ともいい、距骨と踵骨の関節が何らかの原因で変形し、痛みが生じる疾患です。
歩くぐらいでは、痛みはありませんが、走ったり、でこぼこ道を歩く登山などで踵の奥に痛みを覚えます。
自覚症状を表現すると「足の中のほうが痛いっ!」
という感覚であると思われます。
このページでは距骨下関節症について原因や、
どういった病態であるのかを詳しくご説明していきたいと思います。
距骨下関節とは?
距骨下関節とは、以下の図のように距骨と踵骨によって構成されている関節のことです。
距骨下関節は足関節を内側や外側にひねる動きに関与しています。
距骨下関節症は、距骨と踵骨の重なる関節の部分の適合性が悪くなると変形が生じます。
距骨下関節症が起こる原因は?
距骨下関節症は前述したように、距骨と踵骨の適合性が悪くなると生じます。
適合性が悪くなるほとんどの要因は、踵骨骨折です。
踵骨骨折が生じ、距骨下関節まで骨折が及んでいると、関節の不適合性が起こります。
距骨下関節は、でこぼこ道を歩いていると、距骨下関節の動きがわるくなっているため、
骨同士がぶつかり、痛みが生じます。
平地を歩いているだけでは、痛みが出ないこともあるのですが、
走ると着地時に距骨下関節に衝撃が伝わり、痛みが生じます。
距骨下関節の適合性をみるのには、以下の図の「ベーラー角」をレントゲン画像で確認します。
踵骨骨折をすると、上の図のように、ベーラー角は減少します。
このようにベーラー角が減少すると、距骨下関節症が生じます。
距骨下関節症の画像診断
距骨下関節症はレントゲン画像で以下のように描出されます。
距骨下関節症のレントゲン画像
正常な距骨下関節のレントゲン画像
正常な距骨下関節のレントゲン画像は、黄色丸印で示したように関節がはっきりと確認できます。
それに対して、距骨下関節のレントゲン画像では、
赤色矢印で示した後方部分(赤色矢印の部分)がギザギザになっていることがわかります。
さらにこのような状態の距骨下関節を詳しくCTを用いて観察すると以下の図のようになっています。
正面から見たCT画像
側面から見たCT画像
上から見たCT画像
それぞれ赤色矢印で示した距骨下関節がCT画像でははっきりとギザギザになっていることがわかります。
このような状態が見られると、踵の奥が痛いと感じます。
以下で実際の症例をご覧いただきたいと思います。
23才の男性です。
半年前から、左足関節の奥の方が痛いということで、来院されました。
走ると足関節の内側部分に違和感があり、痛みも感じるそうです。
昨年、踵骨骨折をされており、手術を受けられたそうです。
仕事で登山のインストラクターをされているのですが、
走ったり、でこぼこ道を歩くのがつらいとのことでした。
左の写真は初診時の外観です。
患側である左足は回内側が認められました。
左のレントゲン画像は初診時のものです。
黄色の丸印で囲んだ健側の距骨下関節に比べ、
赤色の丸印で囲んだ患側の距骨下関節は
ギザギザになっていることがわかります。
痛みを訴えている部位と、一致したため、関節部分の詳細を知るため、CT撮影を行いました。
左の写真はCT画像です。
側面像のCT画像では、レントゲンと同じように、
距骨下関節の後方部分がギザギザになって変形していることがわかります。
正面像のCT画像でも、関節面の骨棘や骨硬化像が確認できました。
以上のことから、踵骨骨折後の距骨下関節症と考え、
手術を目的に大学病院へ紹介となりました。
34才の男性です。
左足関節外側の痛みを訴えて来院されました。
約1年前に、高所から転落し、踵骨骨折をされたそうです。
観血療法による治療を行ったそうですが、現在も痛みがあるとのことです。
運動をしたいそうですが、痛くて走れないそうです。
左のレントゲン画像は初診時の外観です。
右足に比べ左足は回内側になっていることがわかります。
左のレントゲン画像は初診時のものです。
健側と比較すると、赤色丸印で示した距骨下関節部に骨硬化像が見られ、関節症変化を認めました。
踵骨骨折もされているとのことでしたので、距骨下関節を詳しく見るため、CT撮影を行うことにしました。
左の写真はCT画像です。
赤色矢印で示した距骨下関節部は変形による骨硬化像が認められ、
関節の隙間は狭くなっていることが確認できました。
以上のことから、踵骨骨折後の距骨下関節症であるということがわかりました。
原因のわからない足の奥の方の痛みに距骨下関節症があります。
あまり聞き慣れない疾患ですが、踵骨骨折後や、関節リウマチに併発することがあります。
ねんざもしていないのに、足の痛みが続くようなことがあれば、
一度お近くの整形外科を受診されることをおすすめいたします。