鎖骨骨折は、比較的良く遭遇する疾患です。
鎖骨骨折は、鎖骨の中央で骨折するタイプや、肩関節に近いところで骨折する遠位端骨折、
また胸の前で起こる近位端部での骨折の3つのタイプがあります。
このページでは、
比較的稀な鎖骨近位端骨折について、
どのように受傷し、
治療を行えばよいのかについてご説明したいと思います。
鎖骨近位端骨折はどのようにして起こるの?
鎖骨近位端骨折の大多数は、肩から落下したり、肩を強打することでおこります。
肩関節外側に加わった外力が鎖骨遠位部を後方に押す力となり、
これがてこの作用になって、
胸鎖関節前方に向かう介達外力となり、
近位端部に骨折が生じると考えられています。
それについて示したものが、下の図です。
鎖骨近位部は肋鎖靭帯や、胸鎖靭帯などで強固に固定されています。
ですので、
骨が靭帯の強度より劣る50~70歳代に鎖骨近位部(靭帯付着部)で骨折が起こると考えられています。
それに対し、靭帯より骨の強度が強いとされる若年者は、胸鎖関節脱臼が起こると考えられています。
鎖骨近位端骨折の分類
鎖骨近位端骨折はいくつかのタイプに分類されています。
分類には色々なタイプがありますが、大きく分けて、
上の図で示したような安定型と、不安定型にわかれています。
転位の小さな安定型の骨折は、保存療法でほとんど骨癒合が得られます。
肋鎖靭帯の損傷を伴う骨折の場合、転位の程度に応じて、
手術療法が適応になる場合があります。
鎖骨近位端骨折の症状とレントゲン画像
鎖骨近位端骨折が生じると、以下の写真のように、胸鎖関節部の腫脹や、皮下出血が生じます。
また、骨折部の転位がある場合には、骨折部で前方凸変形が認められます。
以下が、鎖骨近位端骨折のレントゲン画像です。
赤色矢印で示した部分が骨折部分です。
他の骨性要素や肺陰影と重なるため、わかりづらい場合もあります。
安定型の場合は、保存療法として、三角巾やクラビクルバンドによる固定を行います。
鎖骨近位端骨折のほとんどは転位が小さく、強固な靭帯に覆われているので、
ほとんどが手術をせずに、固定療法による治療が可能です。
以下で、実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。
〜症例1〜
72歳の男性です。
左肩の痛みを訴えて、来院されました。
転倒して、肩を強打したとのことです。
こちらの写真は初診時のものです。
赤色矢印で示した左胸鎖関節に、腫脹と圧痛があり、前胸部に皮下出血も確認できました。
肩関節を外転すると痛みが出るとのことでした。
こちらの写真は、初診時のレントゲン画像です。
赤色矢印の鎖骨近位端部に骨折が認められましたが、
肺陰影と重なり、わかりづらかったので、
詳しく状態を確認するためCT撮影を行いました。
こちらの写真は、胸鎖関節部を輪切りにし、上から見たCT画像です。
赤色矢印で示した鎖骨近位端部に骨折が確認できました。
CTによる3D画像でも、赤色矢印で示した鎖骨近位端部に骨折が確認できました。
クラビクルバンドによる保存療法を行いました。
〜症例2〜
61歳の男性です。
左肩の痛みを訴えて来院されました。
受診当日、2階のベランダで窓ふきをしていて、転落されたそうです。
こちらの写真は初診時のものです。
赤色矢印で示した部分に腫脹が見られました。
こちらの写真は初診時のものです。
赤色矢印で示した鎖骨近位端部に骨折線が確認できました。
こちらの写真は初診時のレントゲン画像を拡大したものです。
赤色矢印で示した部分に骨折がはっきりと確認できました。
治療は、クラビクルバンドによる保存療法を行いました。
こちらの写真は、受傷から約6週後のレントゲン画像です。
赤色矢印の骨折部分に仮骨が認められ、痛みも消失していたため、
クラビクルバンドを除去しました。
鎖骨骨折の中でも、近位端骨折は稀ですが、落下や転倒によって肩を強打し、
胸の前面が痛いといった場合には、
鎖骨近位端骨折が生じる場合があります。
肩を動かして、痛みがあったり、日常生活での支障がある場合には、
お近くの整形外科を受診されることをお勧めいたします。