筋皮神経麻痺(きんぴしんけいまひ)

上肢の神経麻痺の中でも、それほど多くはないのですが、
肘を曲げるとか、前腕をねじる動作などを行うための神経が麻痺することがあります。

筋皮神経が麻痺すると、力瘤を作る上腕二頭筋が麻痺してしまいます。

このページでは、事例を御紹介して、どんな症状が出るのか御説明したいと思います。

筋皮神経の走行

上の図にあるように、腕神経叢から下降して、枝分かれした神経の一つが筋皮神経です。

上腕の前面を通り、上腕二頭筋、烏口腕筋、上腕筋を支配しています。

この神経が麻痺すると、上腕二頭筋の主な作用である肘を曲げる手のひらを上側に返す(回外)動作などに影響が出ます。

筋皮神経が圧迫を受ける箇所

上の図は筋皮神経が圧迫を受けやすい個所を示した図です。

前述したように、頚椎から枝分かれして出てきた神経が腋の前を通り、上腕二頭筋を貫いて前腕部分まで走行しています。

腋の前を通ったところで、何らかの原因で筋皮神経が圧迫を受けると、
上腕二頭筋の筋力が弱まるので、肘を曲げる動作に支障が出てきます。

上の図にあるように、筋皮神経は肘のあたりで枝分かれをし、前腕の外側の知覚もつかさどっています。

そのため、上の図で示した外側前腕皮神経の支配する領域に知覚障害が起こります。

腕の神経が圧迫を受ける可能性のある姿勢

上の写真は20代の男性が、頚部の痛みと、上肢のしびれ感を訴えて来院された時のものです。

問診できっかけとなった動作を伺っていると、御神輿を担いだ後から、腕の脱力感などが出たということなので、
その姿勢を再現していただいたところ、
ちょうど腕神経叢から各神経が枝分かれする場所が圧迫を受けていたのだとわかりました。

このような姿勢になった場合に、当院へ御来院になられた患者さんは、
筋皮神経麻痺をはじめとして、腕神経叢麻痺がおこるということが比較的多くみられました。

では、以下で実際の患者さんの様子を御説明しながら、
具体的にどういった影響が出るのかを御覧いただきたいと思います。

〜症例1〜

16歳の男性です。

2日前に、お祭りで御神輿を担ぎ、その後から左上肢全体のしびれを覚えて、その後、軽快しないので当院を受診されました。

痛みはないのですが、しびれ感があり、腕を上げようとすると、完全に上まで上がりません。

腕を上げて水平を保とうとしても、体を横に倒して腕を支える状態で、腕だけで腕の重みを支えることができません。 

肘を曲げて、支えようと思っても、肘を曲げることすらできません。

以上の所見から、腕神経叢から出る筋皮神経の麻痺が生じていると考えられました。

この方の場合は、筋皮神経だけが単独で麻痺がおこっているのではなく、複数の神経の麻痺が複合して起こっている結果、このような症状がでたと考えられます。

原因は、御神輿を担いだことで、肩の前面部分に圧迫を受け、
複数の神経麻痺が生じたことだと考えられます。

さらに、肘を曲げて、手のひらを上に返そうとする動作もうまくできません。

この動作も、上腕二頭筋の支配する動作であるので、筋皮神経が麻痺していることがわかります。

この方の経過は10日ぐらいたった時点で、肘が曲がって肩に手が届くぐらいになり、日常生活に支障がでないぐらいに回復されました。

〜症例2〜

49歳の男性です。

左の前腕外側の知覚低下と、上腕二頭筋の脱力を訴えて来院されました。

2週間前より、特に思い当たる原因もなく、この症状が出てきたそうです。

この方は、趣味でボディービルをやっておられるそうです。

診察時に、力瘤を作っていただいたところ、左側の力瘤が右に比べて盛り上がりが少ないことがわかりました。
赤色矢印で示した部分。)

左側の前腕外側の部分に知覚低下が認められたので、筋皮神経から枝分かれした前腕外側皮神経の支配領域での障害であると考えました。

原因は、はっきりとはわかりませんでしたが、筋力トレーニングを繰り返すことで、筋肥大を起こし、肥大した筋肉によって神経を圧迫し、この症状が発生したものと推測しました。

最初は肘が曲がらなかったり、腕の脱力感があって、心配になるものですが、
物を担いでから生じた症状であるということがはっきりとしていれば、
この筋皮神経麻痺であることを疑ってみてください。

また、筋皮神経が麻痺を起すと、前腕の外側に知覚障害が起こる場合もあります。

こういった場合には、早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします。