鎖骨遠位端骨折

鎖骨骨折は全骨折の中でも頻度が高い骨折の一つです。

しかし、鎖骨骨折にも骨折する部位によって、分類がされています。

今回ご紹介する「鎖骨遠位端骨折」は従来多いとされる鎖骨の真ん中よりも、外側で起こる骨折です。

一般には、この骨折は難治性であると言われており、通常の鎖骨骨折よりは骨折部が不安定であるため、

手術療法が選択される場合が多いのです。

通常は、手術適応になることが多いのですが、当院では、患者さんがどうしても手術は嫌だとおっしゃる場合や、
骨折部の状態などを踏まえたうえで、保存療法を試みています。

では、当院で行っている鎖骨遠位端骨折の治療について以下でご覧いただきたいと思います。

鎖骨遠位端骨折の外観

上の写真は鎖骨遠位端骨折の患者さんの外観です。

赤矢印の先で示した部分が、健側と比べて、突出している部分があることがわかります。

上のレントゲン写真は、同じ患者さんのものです。

右鎖骨の遠位端が骨折し、中枢骨片が突出していることがわかります。(赤矢印の先の部分)

また、骨折した方の鎖骨の位置が健側の鎖骨に比べて、上方へ移動していることがわかります。(の棒の長さの違いより)

鎖骨遠位端骨折と、肩鎖関節脱臼の違い
鎖骨遠位端骨折
肩鎖関節脱臼

上の写真は、鎖骨遠位端骨折の受傷機転とよく似ている肩鎖関節脱臼を比較したものです。

外観の突出している部分は非常に良く似ていますが、肩鎖関節脱臼に比べて、
鎖骨遠位端骨折では、骨折部での出血などにより、全体に腫脹が見られます。

鎖骨遠位端骨折の場合には、圧痛部位も、肩鎖関節直上から離れた位置にありますので、
肩鎖骨関節脱臼との判別は容易に行う事ができます。

さらに、レントゲン写真で、確認してみると、やはり、鎖骨遠位端部での骨折であったとわかります。

鎖骨遠位端骨折の分類

鎖骨遠位端骨折は、いくつかのタイプに分類されています。

分類には色々ありますが、大きく分けて、下のような安定型と、不安定型にわかれています。

安定型の骨折では、骨折線を認めるのみで、鎖骨が上方へ移動することはほとんどありません。

しかし、不安定型の骨折では、肩甲骨と鎖骨をつなぎとめる烏口靭帯が損傷されたり、
烏口靭帯よりも、近位部で折れた場合や、骨片が多数にわたる場合などで重症度が変わってきます。

ですので、安定性をより求めるために手術適応になることが多いのです。

鎖骨遠位端骨折の治療

当院では、鎖骨遠位端骨折の固定療法としては、以下の鎖骨固定バンドを用いて行っています。

上の写真は、鎖骨骨幹部骨折の場合でも用いるバンドです。

鎖骨遠位端骨折のなかでも、主に安定型の骨折に用いています。

不安定型の鎖骨遠位端骨折の場合には、上の写真にあるような鎖骨の遠位部を押さえるバンドを用いています。

骨折部を直接圧迫すると、痛みが強く出るので、右側の写真にあるように、全体を面で押して力が一点に集中しないようにラバーをバンドの下にひいています。

下のレントゲン写真で装具装着前と、後を比べてみましょう。

装具装着前

装具装着後

上のレントゲン写真2枚を比べてみると、鎖骨の中枢骨片が押さえられて、末梢の骨片により近づいているのがわかります。

このように、できるだけ骨折部が離開していかないように装具とパッドを用いて固定します。

固定期間は約8週間です。

では、以下で実際の患者さんの症例についてご紹介していきます。

〜症例1〜

26歳の男性です。
左肩が痛むという事で来院されました。

レントゲンを撮ると、こちらの写真のように左鎖骨遠位端部に骨折が認められました。

赤色矢印の部分に骨折線が認められましたが、安定型であると判断し、クラビクルバンド固定を行いました。

こちらのレントゲンは、初診から約1カ月半のものです。

赤色矢印の部分に、新しい骨ができており、骨癒合が確認できました。

〜症例2〜

41歳の男性です。
右肩の痛みを訴えて来院されました。 

車を運転中、雨で車が滑り、縁石にぶつかり、右肩を強打されたそうです。

こちらの写真は、当院初診時の外観写真です。

左右の肩を見比べてみると、赤色矢印の先で示した部分に突出している部分があることが確認できました。

斜め方向から見ると、肩鎖関節よりも中枢部で突出していることが確認できました。
赤色矢印で示した部分。) 

レントゲンを撮ったところ、鎖骨遠位端部(赤色矢印の部分)に骨折線が認められました。

患側と健側を比較したレントゲンでは、左の患側の烏口突起と鎖骨の距離が開いることから、不安定型の鎖骨遠位端骨折であるとわかりました。

しかし、手術はしたくないという患者さんの希望もあり、クラビクルバンドによる固定を行いました。

こちらのレントゲンは約1ヶ月後のものです。

赤色矢印の部分に骨折線が認められますが、下側の矢印の先で示した部分に、新しい骨ができてきていることが確認できました。 

こちらのレントゲンは約2ヵ月後のものです。

上のレントゲンでは、赤色矢印の部分に新しい骨ができていますが、まだ骨折線も見られ、まだ完全に骨がついていないのではないかと思われました。

しかし、レントゲン撮影の角度を変えてみると、鎖骨遠位端部が骨癒合していることがわかりました。 

〜症例2〜

51歳の男性です。

昨日、駐車場で転倒し、左肩を強打されたそうです。

こちらの写真は初診時の外観写真です。

赤色矢印の部分で、腫れと盛り上がりがあることがわかりました。 

押さえて痛い部分を探してみると、赤色矢印の先で示した×印の部分に圧痛が認められました。 

レントゲン撮影を行ったところ、左鎖骨遠位端部(赤色矢印の部分)に骨折が認められました。

不安定型の骨折でしたが、患者さんが手術をせずに治したいという希望であったため、クラビクルバンドによる固定を行いました。 

こちらの写真は約1ヶ月後のレントゲンです。

赤色矢印の部分に骨折線は認められますが、転位などはしておらず、固定によって骨折部が安定していると考えられました。 

約2ヶ月後のレントゲンです。

赤色矢印の部分に、少しずつですが新しい骨ができているのが確認できました。 

受傷後、約3か月のレントゲンです。

新しい骨もでき、骨癒合が確認できました。 

〜症例3〜

15歳の男性です。
左肩の痛みを訴えて、来院されました。

部活の練習中に左肩を強打し、受傷されたそうです。

こちらは初診時のレントゲンです。

左右の鎖骨の位置を確認してみると、明らかに左側の鎖骨は上方に移動していて、あたかも肩鎖関節脱臼のように見えますが、肩鎖関節はそれほど突出していません。

では、どういった病態であるのか考えてみますと・・・。

赤い丸で囲んだ部分で示したように、鎖骨の遠位部で、骨膜からはがれたようにして骨折しているものと考えられました。 

ですので、初診時のレントゲン写真では明確な骨折線は認められないのです。

約2週間後のレントゲンです。

赤色矢印の部分に骨膜性仮骨形成が始まりました。

約1ヶ月後のレントゲンです。

赤色矢印の部分には、前回よりはっきりと仮骨が認められるようになってきました。

約1ヵ月半後のレントゲンです。

仮骨は旺盛にわいてきており、骨癒合してきていることがわかりました。 

鎖骨遠位端骨折は、一般的に不安定な骨折のタイプが多いため、手術に至るケースが多く見られます。

しかし、不安定なタイプでも、固定を工夫することで、骨折部が安定しており、
また、患者さんの協力の下で治療を固定療法を行う事で、
手術をせずに骨癒合を得られる場合があります。

肩を強く打って痛みが強い場合などは、こういった疾患もあるため、
早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします。