不安定型の鎖骨骨折に対する保存的治療成績

このページでは、当院で行っている鎖骨骨折の治療成績とその後の経過をお伝えいたします。

鎖骨骨折は、近位端骨折や骨幹部骨折、遠位端骨折があります。

今回、このページでは、鎖骨骨幹部についてご覧いただきたいと思います。

当院では、鎖骨骨幹部骨折に対して、積極的に保存療法に取り組んでいます。

ほとんどが保存療法で骨癒合し、良好な結果が得られています。

今回、第26回日本柔道整復医学会学術大会で、当院スタッフの鎮西勇人先生が

「不安定型の鎖骨骨折に対する保存的治療成績」という演題名で発表をされましたので、このページで、ご紹介したいと思います。

鎖骨骨幹部骨折は保存的治療で骨癒合が十分に期待できる骨折です。

その中で、転位の大きい骨折タイプは観血的治療が選択されることが多く見られます。

今回、不安定型の鎖骨骨幹部骨折に対して保存的治療を行い、良好な結果が得られたため、ご紹介したいと思います。

対象となった患者さんは、以下の図のとおりです。

不安定型の鎖骨骨幹部骨折とは、ロビンソン分類を用いて、2B1、2B2を対象としています。

ロビンソン分類とは、以下の図です。

治療は、基本的には鎖骨バンドによる固定を行いました。

しかし、痛みが強い患者さんのみ、ギプス固定を1~3週間行い、その後鎖骨バンドの固定に変えました。

なお、今回骨癒合は仮骨形成が見られた時点で骨癒合としました。

以下が結果になります。

年齢別と骨折タイプ別にみる骨癒合率です。

以下の図は、年齢別と骨折タイプ別にみる骨癒合期間です。

年齢が若いほど、骨癒合期間は短くなり、反対に年齢が高くなるほど、骨癒合期間も長くなる結果となりました。

骨折タイプ別にみる骨癒合期間は、どちらも平均6週間でした。

以下で実際の患者さんの経過をご覧いただきたいと思います。

〜症例1〜

14才の男性です。

右肩の痛みを訴えて来院されました。

昨日、壁にタックルをして受傷されたそうです。

こちらの写真は初診時の外観です。

赤い丸印で囲んだ部分に腫脹が見られます。 

こちらのレントゲン画像は初診時のものです。

赤色矢印で示した鎖骨骨幹部に骨折が認められました。

痛みが強かったため、ギプス固定を2週間行いました。 

こちらのレントゲン画像はギプス固定を行った後、撮影したものです。

ギプス固定を行うことで、骨折部は安定し、痛みがなくなったそうです。

こちらのレントゲン画像は受傷2週間後のものです。

この時点で、ギプス固定から鎖骨バンド固定に変更しました。 

こちらのレントゲン画像は、受傷7週間後のものです。

赤色矢印で示した部分に仮骨が旺盛にできていることが確認できました。

痛みもないため、鎖骨バンドは除去しました。 

〜症例2〜

18才の女性です。

左鎖骨部の痛みを訴えて来院されました。

昨日、柔道の受け身の練習時に、左肩をマットで強打して受傷されたそうです。

こちらのレントゲン画像は、初診時のものです。

第3骨片を伴う骨折タイプであることが確認できました。

痛みが強いため、ギプス固定を3週間行いました。 

こちらのレントゲン画像はギプス固定後のものです。

この状態でギプス固定を3週間継続しました。

3週間後からは、鎖骨バンドに切り替えました。

こちらのレントゲン画像は受傷16週間後のものです。

赤色丸印で示した骨折部分に仮骨が認められました。

この時点で痛みは完全に消失していました。

こちらのレントゲン画像は受傷1年後のものです。

変形はあるものの、骨癒合はしっかりしており、肩の挙上などの問題も全くありませんでした。 

〜症例3〜

51才の女性です。

左鎖骨部の痛みを訴えて来院されました。

昨日、自転車を運転中転倒し、受傷されたそうです。

こちらのレントゲン画像は初診時のものです。

痛みが強かったため、ギプス固定を行いました。 

こちらのレントゲン画像は、ギプス固定後のものです。

ギプス固定は2週間継続し、その後は鎖骨バンドに変更しました。
 

こちらのレントゲン画像は、受傷10週後のものです。

10週の時点で仮骨形成がなく、異常可動性があり、遷延せんえん治癒と考えられました。

手術目的で、他院へ紹介となりました。

手術所見では、近位骨片と遠位骨片は骨癒合が得られていないが第3骨片と、遠位骨片は骨癒合していたとの報告でした。 

〜症例4〜

71才の男性です。

左鎖骨部の痛みを訴えて来院されました。

受傷日から13週間経過した時点で来院されました。

他院で鎖骨骨折と診断を受けており、保存療法を希望し、当院を受診されたそうです。

こちらのレントゲン画像は受傷13週後のものです。

この時点では、仮骨は認められていませんでした。

こちらのレントゲン画像は、受傷24週間後のものです。

赤丸で示した部分に、骨折部に仮骨が認められました。 

この時点で、鎖骨部の痛みは消失していました。

こちらの写真の様に、肩の挙上も痛み無く行うことができ、趣味のゴルフも、できるようになったそうです。 

〜症例5〜

63才の男性です。

右鎖骨部の痛みを訴えて来院されました。

昨日、酔っ払っていて、転倒し、受傷されたそうです。

こちらのレントゲン画像は初診時のものです。

痛みが強かったため、ギプス固定を2週間行いました。 

こちらのレントゲン画像はギプス固定後のものです。

ギプス固定を2週間行い、その後は鎖骨バンドの固定に切り替えました。

こちらのレントゲン画像は受傷24週後のものです。

この時点で、仮骨形成も見られず、偽関節であると判断しました。

偽関節になった要因は、痛みがなくなった時点で、ご自身で固定を外し、肩の運動をしてしまわれたそうです。

しかし、肩の挙上も可能であり、痛みもなく、卓球も楽しくできているそうです。

手術の意思がないため、この時点で治療終了となりました。

骨癒合(率)について

骨癒合率に関しては、今回の結果から25才以下では、全例が骨癒合をしており、
60才以上では、86%という結果でした。

タイプ別骨癒合率は、2B1で、88%、2B2は、100%でした。

岩田らの報告では、2B1の骨癒合率は89.2%、2B2の骨癒合率は100%という報告があり、
今回の当院での治療成績と同様でした。

第3骨片を認めるタイプでも、骨癒合が十分期待できると考えます。

骨癒合不良例の検討

初診時のレントゲンが20mm以上の短縮転移を認める症例では、偽関節の発生率が高いと報告されています。

当院においては、初診時に20mm以上の短縮転位を認めた症例でも、

以下の図のように偽関節を発生することなく骨癒合が得られました。

骨癒合に長期間有したケース

岩田らは、45才以上のタイプ2B骨折で、受傷後13週時点で仮骨形成が認められなければ、
偽関節の可能性があると報告しています。

今回71才の男性で13週の時点で仮骨形成は認められませんでした。

しかし、保存的治療を希望し、鎖骨バンド固定を継続していたところ、
24週間後のレントゲン画像で、骨癒合が確認できたケーすがありました。

このことから、骨癒合が得られにくいと重られる70才を超える高齢者であっても、
24週間保存的治療をおこなうことで、以下の図のように骨癒合が得られると考えられます。

今回ご紹介した患者さんの中に、10週間では仮骨形成が認められず、手術に至った症例において、
手術所見から、偽関節ではなく、遷延治癒であったことがわかりました。

このことから継続して鎖骨バンド固定による保存的治療を行うことで、
骨癒合を得ることができたと考えられました。

転位を認める不安定型の鎖骨骨幹部骨折は鎖骨バンドを用いることで骨癒合は十分に得られると考えます。