急に肩が痛くなって動かせない!(石灰沈着性腱炎)

肩の関節の疾患の中で、眠れないくらい痛く、
肩があげられないという疾患がこの「石灰沈着性腱炎せっかいちんちゃくせいけんえん」です。

ちょっとした誘因でこの疾患が発生するのですが、
これほどまでに痛いのはどんな原因があるのでしょうか?

また、どんな経過をたどるのかなどについて
このページで御説明していきたいと思います。

上の図は石灰沈着をおこした棘上筋腱板ちょくじょうきんけんばんを表しています。

棘上筋ちょくじょうきんの中では石灰化という現象がおこりやすく、
腱自体が変性してしまった状態です。

石灰沈着性腱炎は40歳代から60歳代の女性に多いといわれており、
鞄を持つとか、後ろのものを持とうとしたちょっとしたことがっきっかけで肩の痛みを覚え始めます。

そして、急激に痛みが増してきて、
痛くて夜も寝れないぐらいになります。

レントゲンを撮ってみると、
以下のようなものになります。

肩の中に赤矢印の先に示した様な陰影が見えます。

これが腱板の中に生じた石灰なのです。

このように、レントゲンを撮ってみると、
この疾患はすぐにわかります。

左の図の赤丸で囲んだ部分は、腱板の中でも抵抗に対して弱いといわれる部分です。

その部分は肩を使っているうちに、加齢などによる腱の微妙な変化が生じて、石灰がたまるなどの状況になります。 

石灰のもととなる成分は「炭酸アパタイト」だといわれており、人体のpHに近い状態で石灰化しやすく、溶けやすいことから血中では白血球に貪食され、炎症を引き起こしやすいといわれています。

石灰化した部分があっても、必ずしも急性炎症をおこすとは限りません。

無症状の状態があって、レントゲンを撮ったときに、たまたま見つかることもあります。

では、どんなことで痛みが発生するのかを以下で御説明します。

何かしらのちょっとしたことがきっかけで、石灰化した部分が肩峰下滑液包けんぽうかかつえきほうの中に漏れ出してしまいます。

そうすると、肩峰下滑液包けんぽうかかつえきほうの中では異物が侵入したということで、炎症反応が生じます。

炎症を起こした肩峰下滑液包けんぽうかかつえきほうは腫れて来て、熱を持ち、外から見ると皮膚が赤くなるぐらいになります。

見た目には水がたまったかのように、肩がぼんやりと腫れます。

腕を痛くて動かすことができなくなり、反対の手で痛い方の手を支えて来院される方もいらっしゃいます。

この状態では、腕をどんな状態にしても痛く、湿布なども効きません。

この時点では、注射による痛み止めが一番効果があります。

やがて、時間が経つとともに、漏れ出た石灰を修復しようとする反応により、石灰化部分が小さくなってきます。

このころには肩も動かせるようになり、日常でも支障のない程度まで回復します。

ですが、完全に石灰が修復されるまでには2~3カ月かかります。

では、以下で実際の症例を見てみましょう。 

〜47歳 男性の場合〜

47歳の男性です。
肩をぶつけたとか、はっきりした原因がないにもかかわらず、左肩が全く上がらない、痛みが強いということで来院されました。 

左肩の上に小さな白いものが見えますが、これは痛み止めの注射の後に貼った絆創膏です。

前から見ると、左肩の周りが腫れて、少し赤くなっているのがわかります。

レントゲンを撮ると、赤矢印の先にぼんやりと石灰の影が写っていました。

これが今回の炎症の原因であると判断しました。

注射の効果があって、数日後には痛みは完全に消失しました。 

〜62歳 女性の場合〜

では、今度は石灰化が修復していく過程を見てみましょう。

左のレントゲンは62歳の女性の初診時のものです。

赤丸で示した部分に石灰化の影が見えます。

左肩の急激な痛みを訴えて来院され、痛み止めの注射を打ちました。

その後2~3日で痛みは無くなりました。

3週間後、再び痛むということで来院されましたが、
初診時のような酷い痛みではありませんでした。

レントゲンを撮ってみると、青丸の中に石灰化の影が見えますが、前回に比べて、石灰の影が薄くなっていることがわかります。

このように、徐々に体の中で、石灰は吸収されていくのだということがわかります。

〜44歳 女性の場合〜

今度は、44歳の女性です。

やはり急激な痛みが肩に起こり、来院されました。

肩関節の中に石灰陰影が発見され(赤色矢印の先)、痛み止め注射をされました。

初診時のような痛みは無くなりましたが、1か月半経っても完全に痛みが無くならなかったので、もう一度レントゲンを撮りました。

すると、まだ石灰化の影が残っていました。
(赤色矢印の先)

では、いつになったらこの影が見えなくなるのか、心配になりますが・・・。

初診から3カ月後には、左の写真のように石灰化の影は無くなり、痛みも消失しました。

このように、さまざまなケースがありますが、石灰化の消失には早い方で2~3週間、長くかかる方で2~3カ月ぐらいかかることもあります。

〜61歳 女性の場合〜

今度は手術に至った例を御紹介します。

61歳の女性ですが、特別な誘因がなく肩が痛くなり、レントゲンを撮ってみると、石灰化の影が見えました。

注射も行って痛みを一時的に抑えることはできましたが、仕事柄手を使うことが多く、重い物を持ったりすることもあり、肩の痛みを完全に抑えることはできませんでした。

4ヶ月間リハビリをしたりしながら、経過を見ましたが、石灰化状態の変化も見られず、痛みも強いことから、手術に踏み切りました。 

手術後の写真です。

肩関節から完全に石灰化の影が消失しています。

リハビリなどをしながら術後2カ月ぐらいで痛みも取れ、仕事にも完全に復帰されました。

このように手術になる場合はあまりありません。

石灰化した部分があったとしても、痛みが生じない範囲ならば、自然消失を待つことで十分です。

〜56歳 女性の場合〜

今度は肩鎖関節けんさかんせつでの石灰化です。

56歳女性です。

二日前から急に腫れて痛みがあり、腕が上がらないということで来院されました。

肩鎖関節けんさかんせつの周囲で腫れと発赤が著明でした。

レントゲンを撮ってみると、赤色矢印の先の部分に石灰化の影がありました。

この部位に痛み止めの注射をすると、痛みはなくなりました。

1週間後のレントゲンです。

石灰化の影が無くなり、痛みもありません。

完全に治ったことがわかります。

〜肩の前方部分の痛みを訴えている方の場合〜

今度は、肩の前方部分が激しく痛み来院されたケースです。

ぶつけたわけでもないのに、赤色矢印の先×の部分に痛みがありました。 

こういった発症の仕方なので、石灰沈着性腱炎を疑いました。

ところが、レントゲンを撮ってみると、肩関節の石灰陰影が写っていません。

しかし、エコーを撮ってみると、赤矢印の先に白く石灰の陰影が写っています。

今回は、上腕二頭筋長頭腱で石灰化が起こっていました。 

別の角度からエコーを見てみると、はっきりと腱のそばに石灰陰影が認められました。

このようにレントゲンでは骨と重なってわかりにくい石灰化も、エコーをかけることではっきりと見えます。

石灰沈着性腱炎は痛みが強く、発生の仕方も急激なのですぐにわかります。

肩を強く打つとか、思い当たるケースも無く、
急に肩が痛くなった場合には、
まず、この疾患を疑ってみてください。

痛み止め注射を打つことで、
ほとんどの場合は痛みが治まります。

そして、治療とリハビリを続けながら、
自然に石灰化の消失を待つことで、
ほとんどの場合は治ります。

ですので、原因も無く急に肩が痛くなった場合には、
早い目に整形外科を受診されることをお勧めします!