肉離れに対するリハビリテーション

スポーツの現場では、いわゆる“肉離れ”に遭遇する頻度は多く、その程度もさまざまです。

一般的には、肉離れが生じた際には応急処置として『RISE処置』を行いますが、

その後のケアが疎かになると早い段階で肉離れは再発してしまいます。

そこでこのページでは、肉離れの受傷からスポーツ復帰に向けた

リハビリテーションプログラムを段階的にご紹介いたします。

肉離れの分類とスポーツ復帰時期

上の表は、肉離れの損傷部位を示し、それぞれ3つのタイプに分けています。

全て、原則保存療法を行いますが、損傷の程度によってスポーツの復帰時期に差があります。

肉離れが生じてから、スポーツ復帰までに至る過程で以下のような原則があります。

応急処置の考え方

肉離れの治療についての研究では、急性期治療に加え、“その後のケア”も含めた

以下の原則を基に進めていくことが大切であるとされています。

以上のような、考え方が原則として述べられていますが、

実際の処置は現場の状況や損傷の程度によって臨機応変に対応します。

当院で行っている固定処置は以下のようなものになります。

股関節と膝関節を軽度屈曲した肢位で、大腿部と股関節を含めて伸縮性バンテージで固定します。

股関節と骨盤も固定範囲に含めることで大腿二頭筋の伸張時に生じる痛みを軽減することができます。

膝関節を軽度屈曲した肢位で、下腿部を伸縮性バンテージで固定します。また、かかとにヒールパッドを入れることで、下腿三頭筋の伸張時に生じる痛みを軽減することができます。

肉離れに対するリハビリテーションの考え方

応急処置から固定期間中においても、

スポーツ復帰に向けたリハビリテーションを始めていきます。

その際に、基となる考え方が以下のようなものになります。

以上のような、原則がリハビリテーションの考え方になりますが、

実際の段階的なリハビリテーションは以下のようになります。

患部を保護しながら行うリハビリテーション

肉離れの発症から応急処置をしたのち、

1〜2週間は患部を保護することを優先してリハビリを実施します。

基本的には安静が中心ですが、患部へのストレスをかけない範囲で、

他の部位のストレッチングを行います。

この時期では、股関節周囲や体幹を含む部位の柔軟性と

機能性を獲得していくことを目的としていきます。

この写真は、ハムストリングの協働筋である大殿筋のストレッチです。患部の痛みが生じない程度で行います。

この写真は、股関節の安定化に関与する中殿筋のストレッチです。こちらも患部の痛みが生じない程度で伸張していきます。

この写真は、ハムストリングの拮抗筋である大腿四頭筋のストレッチです。側臥位になって身体を安定させることで、患部への負担を少なくします。

この写真は、体幹の安定化を目的に腹斜筋を収縮させるトレーニングです。20〜30秒間、静止して姿勢を保ちます。

身体機能を維持するリハビリテーション

受傷後、2週間程度経過すると患部の痛みも癒えてきます。

この時期からは、患部へのストレスを最小限にしながら

身体機能を維持していくことを目的としたリハビリに移行します。

主に患部外のトレーニングが中心となります。

股関節周囲筋の筋力トレーニングです。

この写真は、ハムストリングを極力、伸張しないようにするため、膝関節屈曲位で大腿部を持ち上げることで、大殿筋のトレーニングになります。

この写真は、中殿筋の収縮を意識したトレーニングです。側臥位で行うことで、体幹を固定できるので、動作がしやすくなります。また、抗重力下で行うので下肢の重量が負荷となり、無理なく運動負荷をかけることができます。

この写真は、ハムストリングにかかる負荷を極力抑えながら、エアロバイクを漕いでいきます。サドルを低めに設定して、股関節屈曲および膝関節屈曲位を維持しながら漕ぐことで、ハムストリングが伸張されるのを回避していきます。

患部に負荷をかけて行うリハビリテーション

患部の回復状態にもよりますが、Ⅰ型では3週以降、Ⅱ型では4週以降になると運動の基本動作を獲得できるぐらいに回復していきます。

そこで、その競技に必要な技術や体力を獲得する前に、

再発を防止しながらリハビリを進めていきます。

この写真は、スクワットエクササイズでハムストリングと大腿四頭筋を同時収縮している場面です。

この姿勢を保持し続ける際に、ハムストリングが伸張される痛みの程度を確認しながら実施します。もし、痛みが強く生じるようであれば、しゃがみ込む角度を浅くします。

この写真は、フロントランジの一場面です。

踏み込んだ足が接地し、膝と股関節が90度近く曲げた際に、痛みが強く出ないことを確認しながら実施します。

さらに、元の姿勢に戻る際は、ハムストリングが遠心性収縮を強いられるので患部により強い負荷がかかるため、痛みの程度を確認しながら実施します。

この写真は、片脚立位から対側の手でつま先を触れる動作です。体幹の軸は真っ直ぐを保ったまま(黄色の点線)、股関節を屈曲し、同時に膝関節を屈曲します。その際に、ハムストリングの痛みの程度を確認しながら実施します。

以上のように、肉離れのリハビリテーションは、初めに損傷の程度を見極めて、段階的に進めていくことで再発防止にもつながります。

決して無理はしないで、リハビリを行って競技復帰を目指していきましょう。

前の記事

橈骨疲労骨折