前十字靱帯損傷④(前十字靭帯損傷のリハビリ)

このページでは、前十字靭帯損傷後のリハビリについてご覧いただきたいと思います。

また、ここでご紹介する運動の数々はそれぞれに目的があります。

またその実施時期についても違いがあります。

以下で、それぞれのリハビリ運動について詳しくご覧いただきたいと思います。

前十字靭帯損傷のリハビリのポイント

前十字靭帯再建術のリハビリテーションには大切なポイントが大きく分けて3つあります。

最も重要視するのは、移植した腱の固定性が得られるまでの期間に余計な力学的負荷を与えないようにしながら、膝の機能を回復することです。

さらに、関節可動域や関節周囲筋力の低下を極力きたさないように保ち続けることです。

最後に、アスリートととしての運動能力を落とさないことです。

それには、復帰までの段階的なリハビリテーションの進め方があります。

基本的なリハビリの計画は、以下のようになります。

以上のように、施設によってリハビリテーションの内容は多少違いますが、
大筋の予定は上記のようなものになります。

スポーツ復帰には、半年から1年を要するのが一般的です。

移植腱に負担をかけないリハビリテーションの考え方

前十字靭帯の再建術後に関するリハビリテーションの研究はさまざまな施設で行われています。

それぞれ、多少やり方は違っても、基本的な考え方は同じです。

それは、移植腱に剪断力をできるだけかけないで、運動を行うという事です。

下の図は、剪断力がかからないように運動するためにはどうしたらいいのかという1例です。

左の図は、膝下に支点になるものを置き、うつぶせになった状態の膝関節の解剖図です。

①は大腿四頭筋の張力を示しています。
通常は膝を伸ばした状態で大腿四頭筋を収縮させる運動は移植腱に剪断力がかかるため行えません。

しかし、支点を脛骨の下に置くことで、大腿骨の重量と重力(②の矢印)を利用して、脛骨が前に出ていかないようにします。

そうすることで、移植腱に負担がかからない後方(③矢印の方向)へ脛骨を移動させ、

安全に大腿四頭筋を収縮させることができます。

以下のリハビリ運動jは以上の理論に基づいて行われています。

リハビリテーションの実際

保護期の運動

この時期では、膝の可動域の獲得と柔軟性の改善を優先します。

筋力トレーニングは、制限をかけて行います。

左の写真はゴムチューブを使ったトレーニングです。

脛骨部分を制動するため、膝下にチューブを巻きます。

足首に巻くチューブは、きつめのものにして、膝が完全伸展しないように制動しておきます。

こののトレーニングで、伸展角度は回復時期に伴い、徐々に伸展していきます。 

ベットに寝て、壁にボールを当て、上下にボールを転がします。

この運動は、ハムストリングを収縮させて、
なおかつ重力の作用で脛骨の前方移動を防ぎながら関節角度を広げていく運動です。

さらに、関節の固有位置覚を獲得するための練習でもあります。 

移植腱に剪断力がかからないように、脛骨前面を支点とし、体幹を後ろに傾けて、
大腿四頭筋の強化を行う運動です。

この運動は、移植腱に負担がかからないため、術後早期から大腿四頭筋の筋トレとして
安全に行う事が出来る運動です。

さらに、レベルアップした大腿四頭筋の運動です。

先に示した剪断力が移植腱にかからない大腿四頭筋へのトレーニングと、体幹トレーニングも組み合わせて行っています。 

体幹トレーニングと臀部の筋力トレーニングを合わせて行う運動です。

膝関節は動かさなくても、股関節周囲筋群や健側の下肢筋力など複合的なトレーニングを行える運動です。

このように、患側の膝にさえ負担をかけなければ、その他の部分のトレーニングを早期から始めることができます。 

トレーニング期の運動

この時期では、手術した側の下肢の運動性と、支持性、バランス能力の獲得を目指します。

最終的には、健側の70~80%ぐらいの膝筋力の獲得を目指します。

左の写真は、台につま先をのせてスクワットしているものです。
右の写真は、台に踵をのせてスクワットしているものです。

それぞれのスクワット時における重心は赤ラインで示されています。

つま先を台にのせると、重心が前方へ移動し、大腿四頭筋に負荷が強く加わるため移植腱に剪断力が増大します。

踵を台にのせると重心が後方へ移動し、
移植腱への剪断力は軽減されます。

このように、重心の位置が違うと、同じ運動でも力の入る場所が違ってきます。ですので、フォームをチェックしながら運動を行う事が大切です。

この運動はフォワードランジといい、立位から脚を1歩前に踏み出して行う運動です。

注意点は、つま先と膝の向きを合わせ、骨盤が地面と平行になるようにすることです。

膝がつま先よりも前へ出ないようにすることも大切です。

この運動の前脚がついたときに、膝関節に後方剪断力が作用するため、術後安全なトレーニングであると考えられています。 

この運動はサイドランジと言います。

片脚荷重になった際に、しっかりと股関節を意識し、体重をのせることが大切です。

また、膝の向きや位置が重要になってくるので、
鏡を見ながらトレーニングを行う事をお勧めします。 

この運動はスクワット運動の応用編です。

ただスクワットするのではなく、バランスディスクを使用し、
関節の固有位置覚も合わせて獲得することを目指します。

まず両脚でスクワットを行い、可能になれば、
バランスをとりながら、片脚でスクワットを行います。

この運動はノルディックハムストリングと言います。

膝を屈曲する筋肉の遠心性収縮を促していくトレーニングです。

同時に、大腿四頭筋の収縮も感じますが、下腿を保持しているので、脛骨の前方移動は無く、移植腱には負担がかからずトレーニングが行えます。

この運動はチェアーウオークと言います。

椅子に座った状態で、前へ進んでいきます。

注意点は、つま先と膝の方向を意識し、ハムストリングの収縮を効かせながら、前進して行くことです。

実際のトレーニングの映像を以下でご覧いただきたいと思います。 

チェアーウオーキングの動画です。

復帰期の運動

いよいよ競技復帰となる前に、その競技の特性を踏まえたトレーニングを行います。

この運動はシザーズジャンプと言います。

その場で、ジャンプをして、膝の屈曲と股関節の屈曲を意識して着地します。

始める当初はショック吸収のため、マットの上で行うなど、
膝への負担を軽減させながら行います。

さらに慣れてくると、ホッピングという運動に変えて、レベルを上げていきます。

この際も、膝関節と股関節、そして脚関節を十分に屈曲し、
ショック吸収をしつつ、着地します。 

さらに応用編として、バランスディスクにのったままキャッチボールを行うなど、
より実践的な運動が加わってきます。

実際の動画を以下でご覧ください。

前十字靭帯再建術後のリハビリテーションは他にも色々な運動があります。

今回ここに載せたものはほんの一部です。

競技内容や、競技特性に応じてバリエーションが色々あります。

まずは、安全かつ効果的に行うためにも、あせらず段階を踏んで進めていくことをお勧めいたします。

リハビリのことで、お悩みがありましたら、お気軽にご相談ください!