上半身をねじったり、前屈すると骨盤が痛い!(腸骨稜骨端症)

成長期のスポーツ障害には、膝の痛みを訴えるオスグッド病、踵の痛みを訴えるシーバー病、

足の外側が痛くなるイセリン病などがあります。

スポーツ障害である骨端症の中に、骨盤部が痛くなる「腸骨稜骨端症」があります。

身体をねじることで、痛みが出ることが多いことから、野球やバレーボールをやっている選手に多く見られます。

このページでは、腸骨稜骨端症の分類や、診断、症状など実際の症例をご覧いただき、詳しくご説明していきたいと思います。

腸骨とは?

腸骨とは、骨盤を構成する骨の一部で、以下の写真の図の部分です。

骨盤は、腸骨・恥骨・坐骨で構成される寛骨と仙骨で構成されています。

その中で、腸骨稜という部分は、上の図で示した赤色部分の腸骨上縁を指します。

腸骨稜は以下の図のように成長していき、大人の骨に変わるのはだいたい21~25歳ごろです。

腸骨稜骨端症として、痛みが出る時期は、上の図のⅤの時期以降といわれており、
女性であれば14歳前後、男性では16歳前後に発症することが多いといわれています。

腸骨稜骨端症とは?

腸骨稜には腹筋・背筋・殿筋などいろんな筋肉が付着しており、
これらの筋肉の牽引力が繰り返し作用することによって、骨盤部の痛みが生じます。

腸骨稜骨端症には、大きく分けて2つのタイプがります。

1つ目は、腸骨稜の前方部分に痛みがでるタイプです。

腸骨稜前方部には、以下の図のように内・外腹斜筋、中殿筋、大腿筋膜張筋が付着し、
これらの筋の牽引作用が原因で痛みが出ると考えられています。

その中でも、主因となる筋肉は内・外腹斜筋といわれています。

2つ目は、腸骨稜の後方部分に痛みがでるタイプです。

腸骨稜後方部には、以下の図のように広背筋、大殿筋が付着し、
これらの筋の牽引作用が原因で痛みが出ると考えられています。

その中でも、主因となる筋肉は広背筋といわれています。

腸骨稜骨端症の診断と症状

腸骨稜骨端症では前方タイプと、後方タイプで原因となる筋肉が違うため、
痛みを訴える部位が以下の図のように異なります。

前方タイプでは、上半身をひねると痛みが生じ、上半身の患側への捻りの制限が見られます。

後方タイプでは、上半身を前屈すると痛みが生じ、後屈すると圧痛の軽減が見られます。

また、前屈制限が見られることもあり、腰痛との鑑別が必要です。

腸骨稜骨端症はどうやって治るの?

腸骨稜骨端症は繰り返しのスポーツでの動作が傷みの原因となっているため、
スポーツ中止を行う事が大切です。

スポーツ中止を行う事で、3~4週間で疼痛が消失します。

また、痛みが引いてきた時点で、原因となっている筋肉の柔軟性を獲得するためストレッチを行う事が大切です。

我慢できずに、早期にスポーツを再開すると、再発し、傷みが長引く場合があるため、注意が必要です。

以下で実際の患者さんの症例をご紹介していきたいと思います。

〜症例1〜

14歳の女性です。

右骨盤部の痛みを訴えて来院されました。

この方は中学2年生で、バスケットボール部に所属されています。 

昨日、走っているときに痛みが出たそうです。

その日のうちに痛みは軽減したため、今日も体育で走ったら、再び痛くなったそうです。

こちらの写真は、初診時の外観です。

赤色矢印で示した部分を押さえると、強く痛みを訴えています。

身体をねじる動作で痛みが増強するそうです。

こちらの写真は初診時のレントゲン画像です。

赤色矢印の部分が痛みを訴えている部位です。

一見、何もなっていないように見えますが、拡大して見たのが下の写真です。 

こちらのレントゲン画像で、赤色矢印で示した部分の腸骨稜骨端核は分節しており、圧痛点と一致していました。

以上のことから、腸骨稜骨端症の前方タイプとわかり、3週間のスポーツ中止を行いました。

3週間後には痛みは消失しており、スポーツを再開されました。 

〜症例2〜

15歳の男性です。

右の骨盤部分の痛みを訴えて来院されました。

この方は中学3年生で、卒業されており、高校でも野球をすることが決まっているとのことでした。

そのため、自主トレーニングとして毎日素振りを何百回もしていて、痛みが出たそうです。

こちらの写真は初診時のものです。

赤色矢印で示した部分を押さえると強く痛みを訴えておられました。

こちらのレントゲンは初診時のものです。

赤色矢印で示した腸骨稜骨端核の分節と骨端線の離開が認められました。

圧痛点と一致していることから、腸骨稜骨端症の前方タイプであるとわかりました。 

身体をねじると痛みがあると訴えていたので、素振りを中止してもらい、3週間後にレントゲン撮影をしたものがこちらの写真です。

赤色矢印で示した腸骨稜骨端核の分節と離開、圧痛は消失していました。

素振りの動作でも痛みがなかったので、運動を許可しました。

成長期の骨端症の障害で、骨盤部分に障害が生じることは比較的少ないといわれています。

しかし、ねじる動作などが多いスポーツ競技や、繰り返しねじる動作ばかりしていると骨盤の痛みが生じることがあります。

骨盤の痛みや、腰周辺の痛みを訴える場合には、こういった疾患があるので、
痛みが長引く場合には、お近くの整形外科を受診されることをお勧めいたします。