恥骨疲労骨折・恥骨結合炎

「スポーツをしていて、股関節が痛い!」、「ボールを強く蹴ると鼠径部が痛い!」、

「ターンや切り返し動作で股関節に痛みが走る!」など、サッカーや陸上競技をされている方に

多く見られる疾患に、「恥骨疲労骨折・恥骨結合炎」があります。

以下で、詳しくご説明していきたいと思います。

恥骨疲労骨折について

下の図が「恥骨結合」の部分を正面から見たものです。

赤色で示した部分は恥骨結合部のそばにある骨が炎症を起こした場合に変化が生じる場所を示しています。

レントゲンを撮って、変化がわかる場合もありますが、MRIでの診断の方がより正確に診断できます。

どうして恥骨部にこのようなストレス(力)がかかるかというと、

恥骨部には、以下の図のような筋肉が付着しています。

左の図のように、腹直筋の引っ張り上げる作用と、
内転筋といわれる大腿を内側に寄せる力が同じ部分にかかってきます。

ダッシュ時に屈んで前に走りだしたり、屈んで強くボールを蹴るなどの動作をすると、
恥骨の同じ部分に強いストレスがかかります。

こういったストレスが繰り返されることにより、疲労骨折が起こります。

恥骨疲労骨折の画像診断

恥骨疲労骨折は、レントゲンではわからないことが多く、MRI撮影を行うことで診断することができます。

稀に痛みを我慢し続けていれば、レントゲンでわかることもあります。

恥骨疲労骨折のレントゲン画像

上の写真のように、レントゲン画像では骨折線などが確認できないことが良くあります。しかし、レントゲンで異常が見られないからと言って異常がないとは限りません。臨床症状で、恥骨疲労骨折が疑わしい場合は、MRI撮影を行うことで診断が可能です。

恥骨疲労骨折のMRI画像

MRi撮影によって、レントゲンではわからない疲労骨折の診断をすることができます。恥骨疲労骨折が認められる場合は、上の写真の赤矢印で示した部分(恥骨部)に、輝度変化が見られ、臨床症状と照らし合わせて診断します。

以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。

〜症例1〜

17歳サッカー部所属の男性です。

1か月前からボールをける瞬間に左鼠径部に痛みがあったのですが、練習はできていたので様子を見ていました。

しかし、10日前の試合中に激しい痛みを感じたので来院されました。 

MRI を撮ってみると、左の恥骨に骨の輝度変化がありました。

上のMRI画像でのイメージです。

MRI が導入されるまでは、「恥骨結合部分での炎症」と思われていましたが、実際には、恥骨自体の骨の中に微細な骨折が生じて炎症反応がおこり、痛みとして感じられることがわかってきました。

こちらのMRI画像は別の角度からみたものです。左側の赤色印で示した恥骨部に輝度変化が見られ、疲労骨折と診断し、練習はボールをけることとランニングの量を控えて、様子を見ることにしました。

練習量を減らして、1か月後に痛みが消失したので、その時点で練習に完全復帰しました。 

〜症例2〜

17歳の男性です。

サッカー部に所属しています。

1ヶ月前より走ると、鼠径部の痛みがあるとのことで来院されました。

1ヶ月間痛みを我慢しながらサッカーをしていたとのことです。

左のレントゲン画像は初診時のものです。

赤色矢印の部分が痛いと訴えています。骨透亮像が認められますが、骨折線は認められませんでした。臨床症状からも、恥骨疲労骨折を疑い、MRI検査を行いました。

こちらの写真はMRI画像です。

赤色矢印で示した部分に輝度変化が認められ、左の恥骨疲労骨折と診断し、スポーツ中止を指示しました。

こちらのレントゲン画像は1ヶ月後のものです。痛みはほぼ消失していました。

しかし、レントゲン画像で、赤色矢印で示した部分(左恥骨部)に、骨折線が認められました。スポーツの中止を継続し、1ヶ月後に再度レントゲン撮影を行いました。

こちらのレントゲン画像は、初診より2ヶ月後のものです。

赤色矢印の部分で見られた骨折線は焼失しており、骨癒合が確認できたため、スポーツの完全復帰を許可しました。

〜症例3〜

16歳の男性です。

左恥骨部の痛みを訴えて来院されました。

陸上部に所属しており、2週間前より走ると痛いとのことです。レントゲンで以上は見られませんでしたが、恥骨疲労骨折を疑いMRI撮影しました。

こちらのMRI画像はT2強調画像です。赤色矢印の左恥骨部に輝度変化が認められました。

こちらのMRI画像はT1強調画像です。

赤色矢印の左恥骨部に輝度変化が認められ、スポーツ中止を指示しました。

こちらのレントゲン画像は1ヶ月後のものです。骨折線も認められず、痛みも消失してきており、ジョギンングレベルから少しずつ運動を開始しました。

こちらのレントゲン画像は、初診より2ヶ月後のものです。

痛みは完全に消失しており、レントゲンでの悪化も認められないため、スポーツの完全復帰を許可しました。

鼠径部の痛みが長く続いている場合は、疲労骨折している可能性があります。

我慢してスポーツ活動を継続していると、痛みは悪化していきパフォーマンスも上がりません。

鼠径部の痛みが続いている場合は、できるだけ早い目にお近くの整形外科の受診をお勧めします。