石灰沈着による膝の痛み(偽痛風)

膝関節では関節内にある組織が石灰化し、急激な腫れと痛みをおこすと考えられます。

疾患名としては「偽痛風」と呼ばれます。

このページでは、半月板の石灰化が誘因で膝関節に生じた急性の関節痛について御紹介していきたいと思います。

左の写真は73歳の女性です。

突然の右膝の腫れと痛みを訴えて来院されました。

赤矢印で示したように、右膝が炎症によって腫れてしまい、
痛みも強く体重をかけるのも辛い状態でした。

膝を正面から見たレントゲンです。

本来は軟骨の成分でできた組織はレントゲンを撮っても写りません。

ところが、赤矢印で示した先にあるように、右膝の外側に白く線状の影がうつっています。

これは外側半月板が石灰化した映像です。

今回、外側半月板が石灰化した理由には、骨粗鬆症が関係していると考えられます。

つまり、本来骨になるべきカルシウムが破骨細胞の働きで骨から取り出されてしまい、血液中に入って、他の組織に沈着してしてしまうことが考えられます。

ですので、大本にある症状を治療する必要があるので、
背骨のレントゲンを撮って、骨粗鬆症の有無を診ました。

レントゲンを撮ってみると、脊椎の骨一つ一つが薄く写り、
骨密度が落ちていることがわかります。 

したがって、膝の痛みをとる為には痛みどめの注射をし、
骨粗鬆症の治療も始めることにしました。

83歳の女性です。

2日前より、急に膝の腫れが生じて歩きにくくなってきたために来院されました。

外から見ると、炎症によって左膝に水腫が生じていました。 

この方は、数年前に人工関節の手術を受けておられました。

腫れのために膝が完全に伸びないという症状があったので、
人工関節に何らかの問題が生じて、今回の痛みにつながったのではないかということも考えられました。

レントゲンを膝の横から撮ってみると、人工関節の緩みは生じていませんでした。

しかしながら、膝が完全に伸びないということがレントゲンからもわかりました。 

正面からレントゲンを撮ってみると、赤矢印で示した先に白い線のような影が見えました。

このことから、今回の急な膝の腫れと痛みの原因は
半月板の石灰化による急性 炎症であるとわかりました。

ですので、痛みどめを飲んでいただき、経過観察することにしました。

4~5ぐらいで痛みは消失し、石灰化の影も消えました。

84歳の女性です。

3日前から左膝が痛くなり、腫れてきたそうです。

受診した当日の朝から足を踏ん張ることができなくなり、来院されました。 

左膝を横から見てみると、膝のお皿の上の方まで腫れていることがわかります。

これだけ炎症をおこすということは関節内に何かしらの原因があるということです。

炎症によって水がたまり、膝関節の内圧が高まって痛みが生じています。

ですので、関節の内圧を下げる目的と、内部がどういう状態であるのかをみるために関節液を注射器でぬきました。

すると、濁った黄色の関節液を確認できたので、「偽痛風」であると診断できました。

レントゲンを撮ってみると、内側と外側の関節の隙間に白い石灰化の影が見えました。(赤矢印の先)

今回は左膝に症状が出ましたが、実はレントゲンを撮ってみると、右膝にも同じような影がありました。

左膝が治ってから半年後、今度は右膝に同様の症状が発生しました。

実は、この方も骨粗鬆症でした…。

上記3例の方に共通することは、骨粗鬆症をもっておられたということです。

膝の石灰化の治療を行うということはもちろんですが、
この疾患を考えるときに大切なのは、
実は骨粗鬆症も合わせてトータルに体全体を治療していくということです。

これからの高齢化社会を考えると、
この疾患はそう珍しいものではなくなると思います。

高齢者が怪我等の外傷もなく、膝が急に痛くなって腫れるということがおこった場合には、
今回の「膝関節の石灰化」を疑ってみてください。

そして、膝の治療だけでなく、
骨粗鬆症の治療も並行して行う必要があるということを念頭においておいてください!