強剛母趾

足の親指の付け根が痛くなる疾患のなかで「外反母趾」はよく耳にします。

しかし、またちがった病気で足の親指の付け根が痛くなるものがあります。

そのうちの一つが、今回このページでとり上げる「強剛拇趾(きょうごうぼし)」です。

足の親指の付け根が痛くて、腫れてしまうほかに、
長くこの疾患になっていると、関節の動きが妨げられて、
足の裏の返りが使えなくなります。

このページでは、この強剛拇趾の発生のメカニズムや、
実際の症例を御紹介させていただきます。

どうしてこのようなことがおこっているのかというと、
下の図のようなことが起こっているからです。

上の図は、足の親指を上方に反りかえらそうとしている時に、
赤矢印の先の部分に骨のトゲができて、
そのトゲが邪魔をして、親指が上がらなくなっています。

どういうメカニズムでこのようになるのかというと・・・。

足の親指が地面から離れる際に、親指の付け根は左の図のような状態になっており、さらに角度が増して蹴り返す力が働きます。 

中足骨と基節骨が図のように約50度の角度を生じているとき、関節の間(赤丸の部分)に最大の圧力がかかるといわれています。

蹴り返しや、つま先立ちのような姿勢が繰り返されると、関節部分には異常なストレスがかかってきます。

さらに、先天的な足の指の形や、中足骨の形状などによっても、このストレスが増大されて、発症するといわれています。

繰り返し関節部分にストレスがかかり続けると、赤丸で囲んだ部分のように、関節の軟骨が破壊され、変性をおこし、増殖して骨の小さなトゲのようなものが生じます。

さらに、そのトゲが増殖を続けると、関節の隙間も減って来て、お互いにぶつかり合って関節の動きが悪くなります。 

特に、蹴り返しなどで下から力が加わるとき、痛みが生じ、関節が動かなくなります。 

最終的には、大きくなったトゲによって動きが妨げられ、関節軟骨がすり減って動かなくなります。 

強剛拇趾の進行度合いの分類は以下の表のようになっています。

Ⅰ型

軽度の骨棘
関節の隙間は保たれている。

Ⅱ型

中等度の骨棘
関節の隙間が狭くなり、関節面もやや白く写る。

Ⅲ型

著明な骨棘
関節の隙間がなくなり、骨が接している。 

では、どうやって強剛拇趾を見つけるのかというと、
下のレントゲンのように左右の足を比較することで、
関節にできている棘を明らかに見つけることができます。

では、以下で具体的にこの疾患について見ていきましょう。

疾患解説

こちらの写真のように、体重をかけて足の親指の付け根の部分に負荷がかかることが多い方には、この疾患がよく起こると考えられます。

外反母趾と違うのは、親指がくの字型に変形していないので、外見上からもすぐに区別がつきやすいのです。

また、左右を比べてみると、関節の腫れを生じていることがわかります。

特に、矢印で示したように、腫れた関節の上の部分にふれると骨の膨隆があり、押さえると痛みが生じることが特徴です。

右の図のように関節に骨の棘が出ていると考えていただくと良いと思います。

この図のように、親指を押し込むように圧をかけて、なおかつ、ねじるようなストレスを与えると痛みが誘発されます。

特に、重症例では、著明にその所見が出ます。

以下で、症例を御紹介していきます。 

〜症例1〜

58歳の女性、左足の親指の付け根が痛くなって来院されました。

居酒屋でのホールスタッフの仕事をされていて、しゃがんで膝をつく姿勢の時に親指が反りかえると、痛みが出ていました。

左足の角度を変えてレントゲンを撮ってみると、矢印で示した先の部分に棘が確認できました。

しかし、関節の隙間は十分に保たれていて、動きもあまり問題は無かったので、足底板を処方して、靴を変えることを指導しました。

〜症例2〜

43歳の女性、右足の親指の付け根の痛みを訴えて来院されました。

1年前から、歩くと痛みが強くなって、仕事中も痛みを我慢しておられました。

ナースシューズを毎日6時間履いておられるということで、その靴からくる強剛拇趾ではないかと考えられました。

レントゲンを別角度で撮ってみると、矢印の先の部分に棘が写っています。

ですので、足の付け根にかかる負担を軽減することと、体重移動をしやすくするような靴を選ぶことを勧めました。 

〜症例3〜

56歳の女性、右足の親指を反したときの痛みを訴えて来院されました。

こちらの写真のように、左右を比べてみると、右足の親指の関節が腫れていました。

レントゲンを撮ってみると、若干右の親指の関節に骨棘の形成があり、関節の隙間もやや狭くなっていました。

こういった関節の変化がすでに生じていたので、極力長歩きを控えたり、爪先立ちのような動作をひかえたり、棘の部分が当たらないような靴に変えることを指導しました。 

〜症例4〜

次は60歳の女性です。

数年前より、右足の親指の付け根の痛みが生じており、いつまでもなかなか痛みが変わらないので来院されました。 

特に、しゃがみ込み動作の時に痛みが強く、徐々にその痛みも強くなっておられました。

負荷をかけるテストをして、左右の差を比べると、上に反らすと、患側の右足は上にあまり反りかえりません。

次に下に向けて動かす方は、左右差があまりまりません。 

レントゲンを撮ってみると、右足親指の関節の赤丸で囲んだ部分にはっきりとした骨棘があり、関節の隙間も消失していることがわかりました。

長い期間痛みも強く、関節の隙間が消失していたこもあったので、手術になりました。

手術は2本のネジを使って、関節を固定する方法を用いて、しばらくギプス固定をしました。 

骨がしっかりとくっついたことを確認して、ネジをぬきました。

関節を固定することで蹴り返しの運動の範囲は狭くなりましたが、動きがなくなることで、痛みが消失しました。 

当院では、足底板による治療(保存療法)を行っております。

足底板による保存療法は次のページでご紹介しておりますので、ご覧ください。

この疾患は発見された時に少しでも症状を和らげることで、今後の変形性関節症へ移行することを緩やかにし、
やがて痛みが消失し、大部分の患者さんの症状は改善します。

また、靴に足底板を入れることや、靴のつま先の幅が広く、踏み返しの時の反り反しが小さくなるような底が硬めのものや、靴底に丸みがあり体重移動がしやすものに変えることで、症状がかなり改善します。

ですので、蹴り返し時に親指の付け根に痛みを感じたら、早い目に整形外科を受診し、
親指の付け根の関節に骨棘ができていないか、

また、関節の隙間が狭くなっていないかを診てもらってください。