腓腹神経麻痺(ひふくしんけいまひ)

足の外くるぶしの外側あたりから、足の小趾側がしびれる場合、
坐骨神経痛などを疑う場合も多いのですが、
実は今回取り上げる「腓腹神経麻痺」である可能性もあります。

このページでは、あまり聞きなれないこの神経障害について取り上げさせていただきたいと思います。

上の図にあるように、腓腹神経が支配している箇所は、足の小趾からくるぶしの外側、ふくらはぎの外側です。

上の図の水色で示した部分がしびれる、もしくは触った感覚が違うなどの症状がある場合は「腓腹神経麻痺」を疑います。

腓腹神経の走行

上の図は、腓腹神経の通り道を表しています。

膝の裏から通ってきた内側腓腹皮神経と、外側腓腹皮神経がふくらはぎのところで合流し、
腓腹神経となり、ふくらはぎの外側を通って足の外側の方まで下りていき、一部は踵の外側を通ります。

上の図は、神経の走行の一般的な例を図示したもので、
神経走行には他にも型があります。

腓腹神経は知覚神経なので、筋肉の動きを担当していません。

ですので、腓腹神経麻痺は指が動かしにくいとか、足が動かしにくいなどといった症状はありません。

腓腹神経はふくらはぎの外側で皮膚に近いところに出てくるので、
圧迫を受けやすい状況下にあります。

上の図にあるように腓腹神経はふくらはぎの下3分の1ぐらいの位置で皮膚に最も近くなり、
この位置で圧迫などの外からの影響を受けやすくなります。

また、靴により、くるぶしの下あたりで圧迫を受けることもあります。

しかし、腓腹神経麻痺の患者さんは、この神経が圧迫されているという自覚がありません。

なので、足がしびれるのは坐骨神経痛のせいなのかなと思って来院される方が多くいらっしゃいます。

そこで、以下で当院へ来られた患者さんの実際の例を御覧いただきたいと思います。

〜症例1〜

36歳の女性です。

左足外側の痺れを訴えて来院されました。

2週間前より、左足の外側に痺れを感じたそうです。

お仕事は、パンの製造と販売をご自身でされており、15時間の立ち仕事をされているそうです。

こちらの写真は初診時のものです。

足の外側の斜線部分で示した所に痺れと知覚異常が認められます。

足がしびれるという事で、腰の腰痛などないか伺いましたが、特にそういう症状はありませんでした。

こちらの写真で示した赤色部分を叩いたり強く圧迫すると、脚の外側に痺れが強くなるそうです。 

こちらの写真は、初診時のレントゲン画像です。

叩いたり、圧迫したりするとしびれると言っていた場所には異常はありませんでした。

よくお話を聞くと、静脈瘤をお持ちで、長時間の立ち仕事のため、脚がむくんでくるという事で、3か月前より、静脈瘤用のソックスをはき始めたそうです。

こちらの写真は静脈瘤用のソックスを履いているところです。

かなり強く締め付けられていることがわかります。

また、ソックスの最上部のゴムでさらにきつく締められている所と、赤色矢印で示した痺れが増強するポイントとが一致することから、ソックスの圧迫による腓腹神経麻痺であるとわかりました。

原因がわかったため、生活指導のみを行い、様子を見ていただくことにしました。 

〜症例2〜

50代の女性です。

左の足の小趾の周辺がしびれるということで来院されました。

2ヶ月前から、思い当たる外傷がなくて、痛みが生じたそうで、3週間前からは、歩くと痛みとしびれ感が強くなっていたそうです。

両足を比較してみると、目立った腫れもなく、斜線部分に痛みとしびれ感がありました。

詳しく見てみると、足関節の外側の×印を付けた部分をたたくと、しびれ感を訴えておられる斜線部分のところがよりひびくと言っておられました。

このことから、外くるぶしの下を走る腓腹神経が何らかの原因で圧迫を受けて小趾部分に痛みやしびれ感が生じているのではないかと考えました。 

念のため、レントゲンを撮って足関節周辺の骨の異常がないかを確かめてみましたが、骨には異常がありませんでした。 

足関節の×印を付けた部分の周辺をエコーで確認したところ、肥厚した腓腹神経が見えました。 

外くるぶしの周辺で、何が原因で腓腹神経が圧迫を受けているのか原因を考えるために、靴を履いていただきました。

すると、靴の履き口の部分が×印を付けた部分に当たっていることがわかりました。 

角度を変えて、つま先立ちになり、蹴りだした状態の足の肢位にしていただくと、×印のところが靴の履き口に乗ってしまうことがわかりました。

対処法として、靴を変えていただき、×印のところに圧がかからないようにパッドを当てて除圧しました。

こうすることで、痛みとしびれ感が緩和されました。 

〜症例3〜

40歳代の女性です。

右足外側のしびれ感を訴えて来院されました。

1年前に腰椎椎間板ヘルニアという診断を他院で受けておられました。

当時の痛みとしびれは、かなり軽減したのですが、写真の斜線部分のしびれ感が残っていたので、他の整形外科を4件回られて、異常なしと言われたそうですが、心配になって当院を受診されました。

レントゲンを撮って、骨の状態を確認してみましたが、今回のしびれ感の原因となるような骨の異常はありませんでした。 

しびれる原因をもう少し探ってみると、外くるぶしの後ろあたり(矢印の先に示した×印部分)をたたくと、斜線部分にひびく ことがわかりました。

ということで、腓腹神経が圧迫されて、今回の症状が出ておられたのだとわかりました。

詳しくお話をうかがってみると、足の甲が靴に当たって痛いので、それを逃がすために外側に体重をかけるような姿勢になって靴の履き口が×印部分に当たっていたのだとわかりました。

処方としては、足底板と除圧パッドで様子を見ることにしました。

〜症例4〜

23歳の女性です。

ふくらはぎの外側から、足の外側にかけての痺れ感と痛みを訴えて来院されました。

こちらの写真で斜線を入れた部分、くるぶしの後ろ側から、踵の外側にかけて知覚の低下が見られました。

×印で示した部分を叩くと、強い痛みがありました。 

ですので、腓腹神経麻痺と判断しましたが、はっきりした原因がわかりませんでしたが、病名がはっきりしたので、納得されました。

投薬して、経過観察していただくことにしました。

〜症例5〜

48歳の男性です。

足の外側と、踵の外側の痺れ感と、歩く時の痛みを訴えて来院されました。

特に思い当たる原因がなく、痺れ感に気がついたそうです。

別の病院では、坐骨神経痛と診断されました。

しびれる範囲が左の写真で斜線を入れているところで、×印がついているところに圧痛がありました。

足首が上げにくいとか、足指が動かしにくいなどの症状はありませんでした。 

ふくらはぎの×印を付けた部分を叩くと、強くひびくとのことでした。

そこで、腓腹神経麻痺であると考えました。

そこで、×印がついている部分を圧迫しないように指導し、投薬して神経症状の改善を図り、経過観察しました。

経過観察をしていくうちに、症状は改善し、治療を終了しました。 

〜症例6〜

45歳の女性です。

左の足の外側が痛むということで来院されました。

2か月前から、痛みが強くなり、近所の接骨院や整形外科を受診されましたが、良くならなかったので、当院のホームページをご覧になって、原因をつきとめようと思われて、来院されました。 

症状としては、×印の付いたところに圧痛があり、その周囲の知覚低下がありました。

別の角度から見て見ると、一番強く叩いてひびくのは、×印でしめしたふくらはぎの外側にあり、痺れ感も、そこから外側の領域にありました。

原因は何かと探っていくと・・・。

この方は太極拳をしておられて、足関節にテーピングをする機会が多かったようです。

時には、バンテージのようなものを巻いてお休みになることもあったようです。

当院にあるバンドで、その状態を再現してみたところ、締め付けられる個所や、感覚障害がおこる箇所が再現できたので、これが原因となる腓腹神経麻痺だと判断しました。 

そこで、指導としては、きつくテーピングを巻かないこと、長時間固定しないことなどを指導しました。

この方も、原因がわかり、解決方法も判ったので、納得してお帰りになりました。 

腓腹神経麻痺の患者さんは、ご自身で原因となるものの自覚が少ないようです。

しかし、その原因は日常生活の中に潜んでいる場合が多いものです。

小趾部分が痛んだり、しびれ感があるがなかなか回復しないという方は、早い目に御相談ください!