脛骨疲労骨折とシンスプリント(下腿内側の痛み)

今回はランニングしている方に多く見られる疾患について述べていきます。

走った後、下の写真の矢印で示した部分が痛くなったことはありませんか?

この部分が痛くなる疾患には「シンスプリント」という疲労からくる骨膜周辺の痛みと、
骨そのものが「疲労骨折」となっている疾患の2つが考えられます。

いずれも、オーバーユーズで生じるものですが、
場合によっては完全に長期に運動を休止しないといけない事態になります。

そうなる前に、うまくケアーしてあげることで、
悪化を防ぎ、運動を休まずに故障と上手に付き合いながら
完治を目指していくことが理想です!

このページでは、両方の疾患について、
対処方法や、リハビリについて述べていきたいと思います。

シンスプリント

下腿内側の痛みというのは、脛骨(向こうずねの骨)にそって痛みが多く出ます。

特に、脛骨の下3分の1ぐらいのところによくみられます。

この部位は、筋肉の付着部でもある部分で、この部分で炎症を起こす場合があり、これを「シンスプリント」といいます。

場所がほぼ同じで、ある一点に集中するような痛みがある場合、その部分での疲労骨折を疑います。

同じ部分で痛みが生じるので、最初はどちらかわかりづらいというのが実情です。

シンスプリントの原因となる筋肉としては、この図にあるような足首や足の指を使うための筋肉があげられます。

それらの筋肉は下腿から始まっており、この部分の筋肉を集中して使うことになると、疲労が集中してたまることになります。

また、身体的な原因も重なって、シンスプリントは生じます。

この図のように、ある程度正常な土踏まずがある場合には、ショック吸収をアーチでできるのですが、アーチがないとショック吸収ができないので、ショックが直接足にかかることになります。 

また、こちらの写真のように、足の形状が内側へ湾曲する傾向にある場合、足の内側の筋肉が伸張され、ストレスが過度にかかるので、シンスプリントや疲労骨折が発生し易いといわれています。

この図は疲労骨折が生じた骨を表したグラフです。

この資料によると、圧倒的に足に多く発生していることがわかります。

特に突出して脛骨(向こうずねの骨)に多く生じているのがわかります。 

このことから、練習量が増えて足にかかる負担が多くなるほど、下腿の内側の骨である脛骨に何かしらのストレスがかかっていることがわかります。

疲労骨折が発生する年代はというと、このグラフのように高校生、年齢でいえば15~19歳が多いことがわかります。

この年代は、運動量も多くなり、トップレベルの運動を行う時期にあたります。

そういった年代の人に疲労骨折は多く発生します。 

この絵は骨にかかるストレスの方向を表したものです。

中でも左から3番目のたわみでは、一極にストレスが集中し、疲労骨折はその部分でよく生じます。

その経過を表したものがこちらの写真です。

初診時には赤丸の部分に骨の変化は見当たりませんが、2週間後、2カ月後と時間が経つに従って、赤丸の部分に骨の変化が生じ、最終的には仮骨といって骨折した後に骨が癒合する過程が見受けられました。

疲労骨折をおこしている場合には、最初レントゲン上は何も起こっていないように見えます。

しかし、時間を経るに従って、仮骨が形成されてくるので、実は骨折していたのだとわかるのです。

この図でピンク色で示した部分が疲労骨折の好発部位です。

太い骨が脛骨です。

脛骨には上端部・中央部・下端部・内果部に疲労骨折がよく生じることがわかります。

一方、細い方の腓骨には上端部と下端部に疲労骨折がよくおこるとわかります。 

疲労骨折が脛骨と腓骨によくおこる理由は、骨の形状にもあります。

左側の写真は足を前から見たものです。脛骨が内側にカーブしていることがわかります。

右側の写真は足を横から見たものです。
脛骨が前後にカーブしていることがわかります。

こういう形状をしているので、源運動によるストレスが脛骨に生じやすいことがよくわかります。

したがって、疲労骨折も起こりやすくなります。 

脛骨疲労骨折
〜症例1〜

実際の患者さんの症例を見ていきましょう。

35歳男性、宅配の仕事で荷物を持って走ることが多くなったため、2週間前より足に痛みを覚え、仕事が続けられないほどになったので来院されました。 

赤い矢印で示した部分に痛みがありました。

横から見ると、赤い矢印で示した部分に少し腫れがありました。

矢印部分を押さえると、強い痛みもありました。

レントゲンを撮ってみると、痛みのあった場所に一致して骨の変化が生じており、薄く仮骨も見えました。

ですので、疲労骨折であると診断されました。

約1か月後にレントゲンを撮ると、完全に痛みは消失し、仮骨の形成も旺盛となって骨癒合ができていることがわかりました。

ここまで仮骨ができていれば、骨折は治っているとわかります。

横から見たレントゲンでは、骨に帯状の白い線が見えます。

この様に白い帯状の線が見える場合には、その部分での骨折が完治していることがわかります。

〜症例2〜

次は12歳の野球部所属の男の子です。

約1か月前より練習中に痛みを覚えるようになり、走れなくなってきたので来院されました。

初診時には左の下腿の下3分の1ぐらいのところで、腫れと痛みがありました。

レントゲンを撮ってみると、痛みのあった部位(赤矢印の先)に骨膜反応像といわれる骨折時に生じる骨の修復過程が見られました。

ですので、疲労骨折であったと診断されました。

1か月後に再びレントゲンを撮ってみると、仮骨も形成されていて、痛みも消失されていました。

このように脛骨の疲労骨折は1カ月ぐらい練習を休止することで、痛みも消失します。

ここまで治ってくると、練習も再開できます。

15歳の野球部所属の男の子です。

自主練習中のランニング時に膝が痛くなり、来院されました。

レントゲンを撮ってみても、はっきりした所見はありません。

横から撮ったレントゲンでも、はっきりとした所見は無かったのですが、外傷などの誘因がなくて、徐々に痛みが強くなって膝の内側に限局した圧痛があったので、疲労骨折を疑ってMRI を撮ることにしました。

MRIを撮ってみると、脛骨の内側に輝度変化があり、骨折していることがわかりました。

赤丸部分で、左側の写真では白く写っていて、右側の写真では黒く写っています。

このように色調の変化がみられる場合には、骨折していることがわかるのです。

〜症例3〜

16歳の男性です。

右膝の内側の痛みを訴えて来院されました。

約1週間前から、陸上競技の練習中から右膝が痛くなり、我慢しておられましたが、いよいよ痛みが強くなり、歩くだけでも痛みが出てきたので、来院されたそうです。

右膝の内側に圧痛が数か所、線状に並んで見受けられました。

腫脹が圧痛部位の周辺に見られました。 

レントゲンを撮ってみると、右膝の圧痛点の周辺には骨の変化は認められませんでした。

左膝には以前に疲労骨折をしたと思われる骨硬化像を認めました。

ですので、今回の右膝の痛みも圧痛点や症状の発症の仕方から、疲労骨折を疑って経過を見ました。

初診から2週間後に、再び来院していただいて症状を確認したところ、以前あった腫脹はかなり軽減していて、圧痛の範囲も小さくなっていました。

この時点で、歩行時の痛みは無くなりました。

レントゲン写真を撮ってみると、脛骨内顆に骨硬化像を認めました。

よって、疲労骨折であると確定しました。

練習量を押さえながら、徐々にランニングすることを許可して、筋力トレーニングも合わせて行っていただくように指示しました。

足のオーバーユーズによる障害は、上のように下腿の内側に痛みが生じてくる場合が多く、
シンスプリントと思って経過を見ていると、疲労骨折であるとわかる場合も見られます。

ですが、初診時に限局した圧痛があり、腫脹も見られれば、
疲労骨折であるということを念頭に思い描きながら、治療することもできます。

痛いのを無理して運動を続けていると、難治性になり、復帰までに時間がかかってしまうので、
痛くなったり、おかしいと思った時点で、早い目に整形外科を受診することをお勧めします。

早い時点でリハビリ運動をしたり、テーピングすることで症状を軽減させたり、運動休止も短くて済みます!

ですので、下腿の内側に痛みが出た場合には、なるべく早く整形外科を受診されることを勧めします!