仙骨疲労骨折

スポーツ選手の腰の痛みの中には、
腰椎や腰のまわりの筋肉などが原因ではなく、
仙骨が疲労骨折を起こしていることが原因で、腰に痛みが発生している場合があります。

このページでは、仙骨疲労骨折についてご紹介し、
実際にどんな患者さんがいらっしゃったのかということについて御紹介したいと思います。

では、仙骨とはどこの骨のことなのでしょうか?

上の図は股関節、骨盤周辺を表した図です。

脊椎の骨を支え、骨盤の腸骨と連絡しているのが仙骨です。

ちょうど、おしりの真ん中あたりにある骨です。

仙骨とは下の図のような形をしています。

仙骨を正面から見た図
仙骨を側面から見た図

仙骨の役割は、腰椎にかかる体重をそれぞれの足に分散し(赤色矢印)、均衡を保つ働きをしています。

また、歩行や走行によって生じた床反力を股関節を介して骨盤へ均一に伝える(青色矢印)とき、その要となります。

腸骨と仙骨の間では、仙腸関節と呼ばれる関節がありますが、
肩関節や、膝関節のように大きく動く関節ではありません。

ですが、股関節の動きや、腰の前後屈の際には微妙に動いて、体幹を支えています。

仙骨疲労骨折の発生メカニズム

仙骨疲労骨折は長距離走を行う選手に良く発生する疾患だといわれています。

それは、着地のときには体重の約4倍が仙骨にかかるといわれ、
さらに、走行時では体重の約10倍がかかるといわれています。

下の図で示したように、負担のかかる場所は仙骨に限らず、腰椎や下腿の骨などにも生じるので、
疲労骨折は腰椎や、下腿の骨に多くみられます。

しかし、股関節の周囲にある筋肉や、ランニング時の姿勢などのバランスが崩れた場合、
普段はストレスのかからないはずの仙骨に過大な負荷が繰り返しかかることによって、仙骨疲労骨折が生じます。

下の図で示したように、腰椎を介して伝わった体重は仙骨を通じて左右に分かれます(赤色矢印)。

床反力は左右それぞれの方向から仙骨に向かって伝わってきます(青色矢印)。

それらの圧力が繰り返すことにより、仙骨には上下から挟まれる形で圧がかかります。

ですので、圧迫型の疲労骨折が起こるといわれています(ピンク色丸印の部分)。

仙骨疲労骨折の起こる場所

仙骨疲労骨折は仙骨翼と呼ばれる下図の①の領域に多く見られます。

仙骨疲労骨折はレントゲンでははっきりとわからないことが多いのです。

MRI やCTを撮ることで確定診断ができます。

時間の経過とともに、骨折線がうっすらと浮かび上がってくるように見えてきます。

骨折線が見えるのは、下の図のような場所です。

腰痛を訴えて来院された患者さんの腰周辺の病変をレントゲンなどで調べても見つからず、
MRIを撮ってみると、仙骨部に変化が見られ、発見されることがよくあります。

仙骨に原因があるにもかかわらず腰痛が出るのは神経の分布に由来するといわれています。

腰椎から出た神経は大腿部や臀部周辺を担当するため、
下の左図のように束になって本幹を作り、足の方に向かいます。

その一方で、枝分かれした細い神経は緻密に仙骨周辺や第5腰椎に分布して、
その周辺の感覚を担当しています(下の右図)。

腰椎と仙骨周辺の神経の走行

ですので、仙骨で異常を感知した信号は腰の周辺の神経をも刺激して、
あたかも腰が原因であるかのような痛みが発生するのです。

では、以下で実際の患者さんについてご紹介します。

〜症例1〜

15歳のサッカー部に所属している女性です。

来院される1週間前から特に誘因がなく、腰から左足のしびれ感があり、徐々に症状が増強してきたので、トレーナーで帯同している接骨院の先生のご紹介で来院されました。

レントゲンを撮っても、腰椎分離症を疑わせるようなはっきりとした所見はありませんでしたが、理学所見から、亀裂の入っていない早期の腰椎分離症ではないかと考え、MRI を撮影しました。 

MRIの画像には、腰椎部に色調の変化は見られず、仙骨の左側に変化が見られました(赤丸で囲んだ部分)。 

同じ部分を違う条件で撮影したMRI画像を見ると、先ほどとは逆に黒く色調が変化している部分が、上の画像と同じ部分に見られました。

この2つの画像から考えられるのは、赤い丸の周辺で、疲労骨折が生じていたということです。

ですのでレントゲンではわからなかったのですが、仙骨の疲労骨折だとと判断しました。 

そこで、骨折部分を詳しく確認するためにCTを撮影しました。

すると、左の仙骨翼に亀裂が確認できました(赤丸の部分)。 

別の角度から画像を撮ってみると、明らかに左の仙骨部分には亀裂が入って、段差が生じていることがわかりました。 

その後は、クラブ活動を休止して、様子をみることにしました。

〜症例2〜

次は16歳の陸上部に所属している男性です。

左腰の痛みを訴えて来院されました。

以前から腰痛があったので、クラブ活動も、加減しながらしておられたのですが 、なかなか痛みが取れないので、当院を受診されました。

レントゲンでは、亀裂がはっきりとした腰椎分離症ではありませんでした。

しかし、早期の腰椎分離症を疑い、MRI撮影となりました。

すると、腰椎部に色調の変化が見らず、仙骨の左側に変化が見られました(赤丸で囲んだ部分)。 

別の角度でMRI を撮ってみると、やはり左の仙骨に輝度変化が見られました。

CTを撮って、確認してみると、左の仙骨には右にはない白く硬化している画像が見られました。

はっきりと骨折線が入っているわけではありませんが、疲労骨折による骨の変化であるとわかりました。

ですので、クラブを約2か月休止して様子を見ることになりました。 

腰が痛いという訴えで来院されたスポーツ選手のなかには、
腰椎が原因ではなくて、仙骨での疲労骨折が原因で痛みが生じている場合もあります。

治療は2カ月ぐらいのスポーツ休止を行い、
その間、股関節周囲のストレッチや、筋力トレーニング、体幹の強化などのリハビリを並行して行い、
スポーツ復帰を目指します。

確定診断に至るにはMRIやCTなどの画像検査が必要になりますが、
レントゲンで異常がないにもかかわらず、
痛みが続いている場合には仙骨疲労骨折も疑ってみてください。

また、こういった症状でお困りの方は、早い目に病院へ御相談ください。