第5中足骨基部骨折 (下駄履き骨折)

足部で見られる骨折の中で、足関節以外に多くみられる個所が今回の「第5中足骨基部骨折」です。

受傷機転は足首を内側へ捻るような肢位ですが、やや前足部に体重が乗って捻るような形になるので、
前足部の一番外側にある第5中足骨が折れてしまいます。

昔は、下駄を履いて鼻緒の部分が支点となり、足を捻ると、この部分で骨折が起こったので、
通称「下駄履き骨折」ともいわれています。

上の図は、第5中足骨基部骨折の圧痛点を示したものです。

第5中足骨基部骨折の骨折線の入り方

上の図は、側部を上から見たものです。

第5中足骨の基底部には、短腓骨筋腱が付着しています。

足をひねった際に、体重がのることで第5中足骨基部に捻り応力が加わった上に、
短腓骨筋腱の収縮作用によって骨片が引っ張られ、
上の図のような骨折線が入ることになります。

上の写真は、第5中足骨基部骨折の患者さんのレントゲンです。

赤色矢印の先に写っている部分で骨折が起こっています。

当院の第5中足骨基部骨折に対する治療法

上の写真は第5中足骨基部骨折の患者さんに対してギプス固定を施したものです。

足関節で生じた外傷のときに巻くギプスに比べ、足先の方まで長めに巻くことで、中足骨全体を固定します。

当院では、そのほかにギプスを使用せずに治す方法も行っています。

上の写真は第5中足骨基部骨折の患者さんに対してギプス固定を施したものです。

足関節で生じた外傷のときに巻くギプスに比べ、足先の方まで長めに巻くことで、中足骨全体を固定します。

当院では、そのほかにギプスを使用せずに治す方法も行っています。

上の写真は、足底板を用いた治療法です。

2通りの方法があり、足底板をつけたときの患者さんの除痛効果の大きい方を選んで使用しています。

足底板療法の狙いは、側部を内側荷重に誘導する目的と、短腓骨筋腱の収縮力を弱める目的があります。

ですので、いずれの足底板も足の外側が高くなったものを使用します。

実際使用している足底板は以下のものになります。

外側ウエッジジート

ヒールパット+Rウエッジ

第5中足骨基部骨折の診断が出た後、体重をかけて歩くと痛みが強く歩けない場合は、
ギプス固定を選択し、1~2週間固定し、その後は、足底板に切り替えています。

しかし、最初から体重をかけて歩ける方や、仕事の都合などでどうしてもギプス固定ができない方には最初から足底板療法を行います。

上記のような治療を行う事で、痛みは2~3週間もすればほとんど消失します。

そして、骨癒合に至るまで、だいたい6~8週間ぐらいかかります。

以下で、実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。

〜症例1〜

75歳の女性です。

左足の痛みを訴えて来院されました。

前日、玄関で転倒し、受傷されたそうです。

レントゲンを撮ってみると、こちらの写真のように赤色矢印の先で示す第5中足骨基部に骨折線を認めました。

この方は、2ヵ月前に長期入院をしておられて、在宅復帰されたばかりなので、下肢筋力が低下し、歩行が非常に不安定でした。
ですので、ギプス固定ではかえって危険なので、違う方法で治療を行いました。

治療法としては、外側ウエッジシートのついたサポーターを処方して、除痛を図りました。

こちらの写真は、受傷後、約3か月のレントゲンです。

赤色矢印の先に示した骨折線がほぼ消失し、骨癒合していることが確認できました。

〜症例2〜

73歳の男性です。

右足外側の痛みを訴えて来院されました。

当日朝、布団を干そうとして、段差につまずき、受傷されたそうです。

こちらの写真は、初診時の外観写真です。

赤い丸印と、赤矢印の部分に腫れが見られます。

こちらの写真は初診時のレントゲン写真です。

赤色矢印の先(第5中足骨基部)に骨折が認められました。

痛みが強かったため、ギプス固定を行いました。

こちらのレントゲンは初診から1週間後のものです。

骨折部は安定しており、歩行時痛も軽減していたため、足底板療法に変更しました。

外側ウエッジシートのついたサポーターを処方し、引き続き経過を観察しました。

こちらのレントゲンは初診から約6週間後のものです。

骨折部の離開もなく、骨癒合が認められました。

歩行時の痛みも特になく、無事に治療は終了しました。

第5中足骨基部骨折は足関節捻挫の受傷機転に良く似ているので、ただの捻挫だと思って放置していると、
いつまでたっても足の外側の痛みが取れないということで来院される場合が多く見られます。

しかし、まず圧痛点か足関節捻挫とは違いますので、そこを把握しておけば、わかる骨折であると思います。

手術の必要もなく、骨折部が安定していれば、早い段階で足底板のみで治療を行う事もできるので、
日常生活上の不便さも最小限にして、治療していただけると思います。

足をひねって、痛みが強くておかしいなと思われた時には、
早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします。

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