足の捻挫をした場合、足首の外側が痛くなることが多いかと思います。
しかし、捻挫をして、足首の前面、もしくは足の甲に痛みを感じることもあります。
今回、このページでは足首の捻挫が原因で足首の前面に骨折が生じる
「舟状骨背側裂離骨折」について、
実際の症例をご覧いただきながら、説明をしていきたいと思います。
足舟状骨背側裂離骨折とは?
足舟状骨背側裂離骨折は、舟状骨骨折というものの中に含まれています。
以下の図が、舟状骨骨折の分類を表しています。
舟状骨骨折とは、
結節部骨折、背側裂離骨折、体部骨折があります。
結節部骨折は、足関節が外反しを矯正された時、
結節部が後脛骨筋に牽引され、裂離骨折を生じます。
体部骨折は、直達外力や、前足部が外側にねじることを矯正されたり、
足関節が過度に底屈を矯正されたときに生じます。
背側裂離骨折は、以下の図で示すように生じます。
背側裂離骨折は、足関節の内反しを矯正されることにより、
前及び中足部が後足部に対して屈曲し、
背側距舟靭帯が舟状骨背側の近位関節縁をけん引して生じます。
舟状骨背側裂離骨折のレントゲン画像
舟状骨背側裂離骨折はレントゲンでは以下の写真のように写ります。
距骨と舟状骨の近位関節縁に付着している背側距舟靭帯の牽引により、
赤矢印で示した部分に剥離骨折が認められます。
特徴は、骨片が比較的小さい場合が多く、ギプス固定や足底板などによる保存療法で治るといわれています。
距舟関節面の4分の1(25%)を超える大きな骨片の場合は、
変形性関節症に移行する可能性があるため、観血療法を選択する場合もあります。
通常、捻挫をしてよく痛みを覚えるところは、外くるぶしの周辺ですが、
この骨折では、痛みを覚える場所は足関節前面(足の甲)です。
治療は、ギプス固定や足底板療法を行います。
ギプス固定は、およそ4~6週間の固定で、骨癒合するといわれています。
足底板療法は、具体的に以下のような足底板を使用します。
左上の縦アーチパットを土踏まずの所に入れて、足裏の縦アーチを保持してあげると、痛みが和らぎます。
このように、強固な固定を行わなくても、痛みをとることができるので、
お仕事をされていて、ギプス固定ができないという方でも、
楽に治療しながら生活していただくことができます。
以下で実際の症例をご覧いただきたいと思います。
41歳の女性です。
左足関節の痛みを訴えて来院されました。
昨日のお昼に会社の階段を下りていて、段を踏み外し、
転倒して、受傷されたそうです。
その後、左足の腫れが強く、皮下出血も見られるとのことでした。
上の写真は初診時の外観です。
赤色矢印で示した×印の部分に圧痛が認められました。
レントゲンは初診時のものです。
赤色矢印で示した舟状骨の背側に裂離骨折と思われる骨片が認められました。
足関節の外側靭帯損傷も合併しており、歩行困難であったため、
ギプス固定を行いました。
上のレントゲンは、受傷約3週後のものです。
骨片は認められますが、痛みが消失してきていたため、
ギプス固定から、ギプスシャーレ固定へ移行となりました。
上のレントゲンは、受傷6週後のものです。
骨片は認められますが、圧痛は消失していました。
足のむくみは少し認められるものの、日常生活では痛みはなく、
快適に過ごすことができているという事でした。
54歳の男性です。
右足関節の痛みを訴えて来院されました。
3週間前に、歩行中段差につまずき、受傷されたそうです。
当初は、歩けないような痛みではなかったため、ご自身の判断で、様子を見ていたそうですが、
一向に痛みが引かないという事で、当院を受診されました。
上のレントゲンは、初診時のものです。
赤色矢印で示した部分に骨片が認められ、舟状骨の背側裂離骨折と判断しました。
上の画像は、CT画像です。
受傷から少し日が経っていたため、
骨癒合の見込みがあるのかどうか、確認するために、検査を行いました。
赤色矢印で示した部分に、舟状骨の背側裂離骨折が認められました。
骨癒合の見込みは、難しいと考え、痛みをとる治療のみを行いました。
このように捻挫をして歩くことができても、痛みや腫れが1週間以上続くのであれば、
骨折も念頭に置いて早めのに病院を受診されることをお勧めいたします。
背側裂離骨折は、舟状骨骨折の中では最も多いといわれています。
治療は、骨片の大きさによるといわれていますが、
ほとんどの場合、保存療法で治療することが可能です。
また、治療方法はギプス固定のみだけでなく、足底板療法でも治療可能です。
捻挫をして、足関節前面が痛いなどといったことがあれば、
お近くの整形外科を受診されることをお勧めいたします。