痛風ってこんな病気です。(痛風)

痛風は、広く一般に馴染みのある病名ですが、お酒の飲み過ぎだけが問題ではありません。

痛風は、急性に発生する関節炎ですが、元は高尿酸血症という病気が基盤にあって、

それがなんらかの原因で発作として発症します。

このページでは、高尿酸血症と痛風の関係をはじめ、なぜ痛風が起こるのか、痛風は治るのか、

痛風の治療はどのように行うのかなど詳しくご説明していきたいと思います。

尿酸は悪者なのか??

尿酸とは、プリン体を原料として体の中で作られる物質で、 新陳代謝によって生じる老廃物、つまりエネルギーの燃えかすです。 プリン体は、体内で細胞の代謝やエネルギーの代謝により80%が作られ、さらに食品から20%の摂取により作られます。 それらが肝臓で代謝され尿酸が作られます。 尿酸は体内で、約1200mgプールされ、それ以外を尿や便で排泄しています。

上の図で示したプールされている尿酸は、体の機能を維持する上で血圧のコントロールや中性脂肪の合成に関与し、

さらに糖を新生する役割に関与していると言われています。

尿酸は、ある一定量は体にとって必要なものです。

 

上のグラフは、尿酸と寿命の関係を示しています。

尿酸値が少ないラットでは、寿命が短く、尿酸値が多い人間では寿命が長い結果となっています。

その差が生じるのは、動物では尿酸を分解する能力が備わっており、人ではそれが備わっていないからです。

人は塩分や脂質、糖質などを十分に摂取しなくても体内の尿酸を利用して生命維持ができる仕組みが備わっていると言えます。

また、尿酸値が高いと抗酸化作用で寿命が長いとされています。

以上のように、尿酸は生きて行く上で欠かせない存在であることがわかります。

高尿酸血症によって現れる症状

その一つには、痛風結節と呼ばれる耳にできるできものがあります。

また、内臓疾患として腎機能に障害が生じ、尿路結石が見受けられます。

もっとも多く見られるのは、体表に出てくる痛風発作です。

痛風発作はこんな感じです

上の図は、痛風発作が関節内でどのように生じているかを示した図です。

痛風発作は、尿酸が過剰になると結晶になって関節にたまり、尿酸が血液中で溶かしきれない状態が続く状態です。

その結晶が何らかのきっかけで剥がれ落ちると体内で異物と認識され体(白血球)が排除しようとするため、炎症がはじまります。

これが痛風発作です。

こんな風にして痛風発作が生じます

痛風発作の仕組みは、以下のようなイメージです。

正常な状態

左の図は、正常な関節の状態をイメージした絵です。

木を関節に例えて、周囲の環境は血液中や全身の状態を表しています。

一般に血液検査を行った際の尿酸値は、6mg/dL以下が望ましいとされています。

 

尿酸が降り始めると・・・

左の図は、尿酸を雪に例え、木(関節)に降り積もる過程をイメージしたものです。

全身の状態に変化が生じて尿酸値が7を超えると、雪(尿酸)がたまり始めます。

尿酸が降り積もっていくと・・・

左の図は、雪(尿酸)が降り積もっていく過程をイメージしたものです。

尿酸値が高い状態が続くと、木(関節)に雪(尿酸)が溜まっていきます。

積もった雪は、木に残っていますが、発作を起こすまでには至っていません。

積もった尿酸が木から崩れ落ちると・・・

左の図のように、木に降り積もった雪(尿酸結晶)が崩れ落ちると痛風発作が生じます。

この時期に発作を抑えるために痛み止めの処置を行うと一時的に痛みが消失します。

同時に、尿酸値を下げる治療薬や生活習慣を改善していくことで、雪(尿酸結晶)がゆっくり溶けていきます。

長期間尿酸が降り積もると・・・

左の図は、さらに雪(尿酸)が長期間降り続き、木(関節)に収まりきれないぐらい雪(尿酸結晶)が積もった状態を表しています。

この状態になると、発作の頻度が増えます。

上の図の時点で、なんらかの治療を施していればここまで雪(尿酸結晶)が降り積もることはありません。

ここまで放置した場合は、痛み止め処置で一時的には痛みが軽快しますが、全身状態をみると腎障害が生じたり、尿路結石などが生じるリスクが高くなります。

天気が回復してくれば・・・

左の図は、天気(全身状態)が回復してくると雪(尿酸結晶)は少しずつに溶けていきます。

少しずつ溶けていく場合は、関節内で発作は生じずに、尿酸結晶が減少し、症状が回復していきます。

急に天気が回復すると・・・

左の図は、急に晴れたことによって、降り積もった雪(尿酸結晶)が急に溶け始めたことを表しています。

これは、投薬などによって急に血液中の尿酸値濃度を下げている状態と同じです。

そうすると、薬を飲んでいるにも関わらず痛風発作が生じてしまう場合があり、あたかも薬が効いていないと思ってしまいます。

こういった場合を回避するためには、投薬の量や飲む頻度など適切に進めていけば、痛風発作を起こすことはありません。

 

以上のように、痛風発作は尿酸結晶が溶けるタイミングで生じます。

尿酸は、降り積もり続けると痛風発作が生じます。

また治療によって急激に尿酸結晶を溶かしてしまっても痛風発作は生じてしまいます。

痛風の発生要因

治療は生活習慣の指導と投薬治療が中心となります。

一般には、痛風に対する生活習慣の改善と聞いてまず「禁酒」を想像される方が多いと思います。

下のグラフは、アルコールと痛風の因果関係を示しています。

アルコールの摂取量が多いほど、痛風発作のリスクが上昇していることがわかります。

アルコール摂取が促進されることによって、脱水傾向になります。

さらに、アルコールによって尿酸が過剰生産される上に、尿酸の排泄が低下することで尿酸値が上がります。

では、飲酒の頻度やお酒の種類、飲酒の量によって発症の違いはあるのでしょうか?

飲酒の頻度について示したのが下のグラフです。

ビールは、プリン体含有量が多いというのはよく知られていると思います。

ビールは、飲む頻度が多くなれば痛風を発症するリスクが高くなることが見て取れます。

一方ワインは、飲む頻度が多くなっても、痛風を発症するリスクへの関与が比較的少ないことがわかります。

飲酒の量は、エタノール計算で、1日25g程度の飲酒までに控えておくように推奨されています。

下の図は、お酒の種類別に見る具体例です。

下の図は、尿酸値が上がる生活習慣の例を表したものです。

痛風の発症する原因は、アルコールだけが悪いということではなく、他の要因もあります。

尿酸値は、日々生活の影響を変動しています。

暴飲暴食、激しい運動、それによる脱水などが尿酸値をあげる要因となっています。

また、心因的なストレスが尿酸値をあげる要素にもなっています。

上のグラフで示したように、断酒しているのにも関わらず尿酸値が上昇していることは、

飲酒だけが尿酸値をあげる原因ではないということがわかります。

薬による治療

下の図は、痛風の元となる高尿酸血症に対する治療薬の作用を示したものです。

尿酸を下げる薬には、2つのタイプがあります。

従来、尿酸過剰型には尿酸生成抑制薬、尿酸排泄型には、尿酸排泄促進薬と使われていました。

しかし、最近の研究では、いずれのタイプにでも尿酸降下作用が認められていることから、

尿酸生成抑制薬が第一選択とされいます。

以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。

51歳の男性です。

右足背の痛みと腫れ、発赤を訴えて来院されました。4年前に当院で高尿酸血症を指摘されたのですが、放置していました。

来院時は、突然に痛みが出現したそうで、歩行が困難となっていました。

左の外観写真は初診時のもおです。

赤色矢印で示した部分に発赤と腫脹が認められました。

左の外観写真は、別の角度から見たものです。

右足背部の赤色矢印で示した部分にも発赤、腫脹が認められました。

血液検査を行ったところ、尿酸値は10.0と基準値を大幅に超えていることがわかりました。

63歳の男性です。

右母趾の痛みを訴えて来院されました。

左の外観写真は初診時のものです。

赤マル印で示した右母趾は、全体的に腫脹が見られ、右母趾MTP関節部分に発赤

が見られました。

左の外観写真は、側面から見たものです。

左母趾と比べて、右母趾は全体的に腫脹が見られ、発赤も見られます。

左のレントゲン画像は初診時のものです。

赤色矢印で示した右母趾IP関節の基節骨側に骨透亮像が見られました。

左のレントゲン画像は、斜めから撮影したものです。

赤色矢印で示した母趾IP関節の基節骨側に骨融解像が見られました。

この所見は、長きにわたり尿酸結晶が蓄積したことにより、軟骨下骨が徐々に破壊されていった結果であると思われます。

75歳の男性です。

突然肘の腫れと痛みが出現したそうです。

今まで何回も痛風発作を繰り返しているそうです。

左の外観写真は初診時のものです。

赤色○印で示した部分に腫脹と発赤が認められました。

左のレントゲン画像は初診時のものです。

健側とと比べて、患測では赤色矢印で示した部分に骨融解像が認められました。

血液検査の結果では、尿酸値は10.5と高値を示しており、痛風による肘の痛みということがわかりました。

以上のように、本来は体に必要とされる尿酸ですが、血液中で高値を示すと痛風発作だけではなく、

腎障害などの全身への影響ももたらすので、適切な治療が必要です。

痛風は、お酒を飲んではいけないというイメージがあるかと思いますが、

頻度や量をコントロールさえすれば、禁酒することはありません。

痛風でお困りの方は、一度医療機関でご相談されることをお勧めいたします。

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