実際のアキレス腱断裂に対する治療とリハビリ
このページでは、当院で実際に行っているアキレス腱断裂に対する治療とリハビリについて詳しくご紹介していきたいと思います。
どのくらいの時期に、どのくらいの運動を実際に行えているのか、またどのようなリハビリを行っているのか、
リハビリの流れなどもご参考にしていただけるかと思います。
以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。
〜症例1〜
38歳の女性です。
左足の痛みと歩行困難を訴えて来院されました。
3日前に、バレーボールをしていて、ボールをとろうとして、前へ踏み出したときに、左下肢関節広報部に激痛を覚えたそうです。
その後より、痛みと歩行困難があり、近隣の整形外科で手術と入院を勧められたそうです。
しかし、お仕事の兼ね合いものあり、入院せずに治療を希望されたため、当院を受診されました。
こちらの外観写真は、初診時のものです。
黒いマジックで書いたように、アキレス腱のレリーフは赤矢印の部分でなくなっており、同部位に陥凹が認められました。
こちらのレントゲン画像は初診時のものです。
レントゲン画像で確認したところ、骨には特に異常はなかったのですが、矢印の示すアキレス腱の軟部陰影に左右の違いが認められました。
健側の青色矢印で示したアキレス腱の輪郭は明瞭であるのに対し、患側の赤色矢印で示したアキレス腱の軟部陰影は膨化しており、輪郭は不明瞭でした。
この動画は、足関節を底・背屈させながら、エコーによる動態撮影を行いアキレス腱を観察したものです。
アキレス腱の断端が足関節を底・背屈させることで、断端部が接触している状態なのか、離れているのかがわかります。
こちらのエコー画像は初診時のものです。
静止画像で見ると、左のように足関節を背屈することで、断端どうしは接触しておらず、赤色矢印で示したように、間隙が認められました。
当院で行っているアキレス腱皮下縫合術で、アキレス腱を引っ張り上げ、再断裂しないように、
初めはこちらの写真で示すように、最大底屈位によるギプス固定を行いました。
こちらのエコー画像はギプス固定後1ヶ月のものです。
赤色矢印で示したように、アキレス腱断端部は、くっついており、徐々にアキレス腱実質部は修復されてきていることがわかります。
断裂部が安定していたため、ギプスから装具へ変更しました。
こちらの写真が、装具着用時のものです。
基本的には、お風呂の時以外は、装着していただくようにしました。
しかし、最初はお風呂での転倒などリスクがあるため、装着したままでお風呂に入っていただきました。
こちらのエコーは、初診から2ヶ月半のものです。
アキレス腱は徐々に修復されていたため、装具を除去しました。
半年後にスポーツ復帰ができるようにリハビリを継続していただきました。
〜症例2〜
51歳の男性です。
左アキレス腱の痛みを訴えて来院されました。
5日前、マラソンをしていて左アキレス腱が痛くなったそうです。
そのまま最後まで完走されたそうですが、翌日アキレス腱の痛みと腫れを感じたそうです。
マラソンで痛くなってから3日後、お酒を飲んでいて、トイレでつまづき、アキレス腱の痛みが強くなったそうです。
こちらの写真は初診時の外観です。
右の健側ではアキレス腱のレリーフ(青色→)が見えていますが、左の患側ではアキレス腱のレリーフが確認できません。
(赤色→で示した部分)
アキレス腱断裂を疑い、トンプソンテストを行いました。
こちらの動画は、患側と比較するために、健側で行ったトンプソンテストです。
足関節の底屈が認められ、異常がないことがわかります。
こちらの動画は患側でトンプソンテストを行っているものです。
足関節は、全く動かず、トンプソンテスト陽性であることがわかります。
こちらの写真は、初診時のエコー画像(短軸)です。
健側に比べて、患側のアキレス腱は断裂している部分では、低エコー像が確認できます。
こちらのエコー画像は、初診時のエコー画像(長軸)です。
健側に比べて、患側では赤色矢印で示した、低エコー領域で、アキレス腱の断裂が生じていることがわかります。
こちらのエコー画像は場所を移動して撮影したアキレス腱の長軸画像です。
赤色矢印で示した部分は、アキレス腱の断裂により生じた陥凹部分で、低エコー像が確認できます。
当日、アキレス腱皮下縫合術による日帰り手術を行いました。
手術後は足関節を最大底屈位にした状態で、ギプス固定を行いました。
こちらの写真がギプス固定を行った時のものです。
ギプス固定は5週間行いました。
ギプス固定除去後は、装具に変更しました。
こちらの写真は足の形に合わせて採型した装具です。
ヒールの高さを少しずつ減らしていきながら、徐々に体重をかけていく練習も行います。
このプロトコルは、術後6週目以降のものです。
実際にリハビリの進め方について示したものです。
この方は、装具に変更した術後6週後より、3分の1荷重をはじめ、装具は12週で除去しました。
このように徐々に足の機能を高め、ジョギングやスポーツ活動を再開するために、一生懸命リハビリに取り組まれていました。
〜症例3〜
40歳の男性です。
左アキレス腱の痛みと、歩行困難を訴えて来院されました。
昨日、ソフトボールの練習で、捕球しようとして、走って止まったとき 、アキレス腱の部分に音がし、その場に倒れ込んだそうです。
こちらの写真は初診時のものです。
赤色矢印で示した部分にアキレス腱の陥凹が認められます。
こちらのレントゲン画像は初診時のものです。
健側の青色矢印の部分ではアキレス腱の輪郭がはっきりわかりますが、患側の赤色矢印の部分では、アキレス腱の輪郭は不明瞭でした。
こちらの動画は、アキレス腱断裂を確認するために、トンプソンテストを行っているものです。
足関節は、全く動かないので、アキレス腱断裂であるとわかりました。
こちらのエコーは初診時のものです。
断裂部に間隙が認められたため、アキレス腱皮下縫合術を行い、アキレス腱を引っ張り上げ、ギプス固定を行いました。
こちらのエコー画像は1ヶ月後のものです。
赤色矢印で示した断端部は、修復されてきているのがわかります。
この時点で、ギプスから装具へ変更となりました。
こちらのエコー画像は、初診時から2ヶ月後のものです。
赤色矢印で示したアキレス腱断端部同士は、しっかり修復されていることがわかりました。
〜症例4〜
51歳の男性です。
右アキレス腱の痛みと歩行困難を訴えて来院されました。
昨日アメフトの練習で、走ろうとしたときに、激痛を覚えたそうです。
人に蹴られたような感覚がしたとおっしゃっていました。
こちらの写真は初診時のものです。
患側である右足の赤色矢印で示した部分は外観でもわかるような陥凹が認められました。
こちらのレントゲンは初診時のものです。
健側の青矢印に比べ、患側の赤色矢印の部分では、陥凹が見られ、アキレス腱の輪郭は不明瞭でした。
アキレス腱断裂を疑い、健側と患側のトンプソンテストを行いました。
そのときの動画がこちらです。
患側の右足では、足関節は全く動きませんでした。
こちらのエコー画像は初診時のものです。
赤色矢印の部分は、アキレス腱の断裂した部分です。
間隙が認められます。
断裂部分に間隙があるため、アキレス腱同士を引き寄せるため、アキレス腱皮下縫合術を行い、最大底屈位によるギプス固定を行いました。
こちらのエコー画像は、2ヶ月半後のものです。
アキレス腱はかなり修復されていることがわかります。
赤色矢印で示していたアキレス腱の断裂部分はかなり修復されています。
〜症例5〜
49歳の女性です。
左アキレス腱の痛みと、歩行困難を訴えて来院されました。
3日前、バスケットボールをしていて、ボールを投げたときに左アキレス腱部分に音がし、歩けなくなったそうです。
近隣の整形外科では、入院しての手術を勧められましたが、ご家庭の事情で、入院は難しいため、日帰りで手術を行える当院へ来院されました。
こちらの写真は初診時のものです。
赤色矢印で示したアキレス腱部に、陥凹が認められ、アキレス腱のレリーフは消失していました。
こちらのレントゲンは初診時のものです。
健側の青色矢印で示したアキレス腱の軟部陰影は輪郭が明瞭であるのに対し、患側では、赤色矢印で示したように不明瞭な状態でした。
こちらの動画は、アキレス腱部の初診時のものです。
足関節を底・背屈させ、アキレス腱同士が接触しているかどうかを確認しました。
アキレス腱を背屈すると、断端部と断端部の間隙がはっきりと確認できます。
底屈しても、アキレス腱は最後まで寄り切らず、当院で行っているアキレス腱皮下縫合術を行い、強固な固定を行うことにしました。
こちらのエコー画像は、初診時のものです。
断端部と断端部の間隙がはっきり見てわかります。
外観では、この間隙の部分と同部位に陥凹が見られていることがわかります。
こちらのエコー画像は、約3ヶ月のものです。
アキレス腱の断端同士がくっついており、修復している像が確認することがせきました。
この時点では、運動として両足でのカーフレイズや、ベッドに手をついた状態で行う片足カーフレイズなどの運動療法を行うことができています。
こちらのプロトコルが、実際に運動療法を行っていく過程です。
約半年後にスポーツ復帰できることを目標に、リハビリを続けています。
アキレス腱断裂は適切な治療と、リハビリを行わないと再断裂することもあります。
そのため、当院ではアキレス腱皮下縫合術を行い、ギプスや装具の固定と併せて、強固な固定を行っています。
従って、再断裂のリスクはほぼ心配なく、治療していただけます。
また、ご紹介した症例のように、アキレス腱断裂の患者さんお一人お一人の患部の状態が違いますので、
その方に合ったリハビリが必要になってきます。
当院では、個々の患者さんの状態に合ったリハビリプログラムを作成し、
患者さんの快復具合も加味しながら、
その都度プログラムを変更しつつ、リハビリを続けていただくようにしております。
上に出てきた患者さんの場合のように、様々なリハビリの進行具合をご参考にしていただければと思います。