下前腸骨棘裂離骨折

股関節、鼠径部の痛みに恥骨疲労骨折や上前腸骨棘裂離骨折などがあります。

このページでご紹介するのは、「下前腸骨棘裂離(かぜんちょうこつきょくれつり)骨折」といって、サッカーのボールを蹴る動作などで痛む疾患です。

以下で、実際の症例をご覧いただきながら詳しくご説明していきたいと思います。

下前腸骨棘裂離骨折はこうして起こる

下前腸骨棘には、以下の図で示すように膝を伸ばす大腿直筋という筋肉が付着しています。

この筋肉は、膝を伸ばす役割をしています。

下前腸骨棘裂離骨折は、大腿直筋の作用で、下に引っ張られる牽引力(収縮)によって、骨が剥がれてしまいます。

サッカーの蹴る動作や、走る動作で足を前にする瞬間に受傷します。

レントゲン画像

下前腸骨棘裂離骨折

上前腸骨棘裂離骨折

どちらも、膝下名は似ていますが、場所が違います。

それぞれ、矢印で示した部分で裂離骨折が生じています。

発症時期の特徴

上前腸骨棘裂離骨折のページでもご説明したのですが、グラフで分かるように、
14~15歳ぐらいの年齢でよく発症することがわかります。

これは、骨が成長して、ちょうど完成しようとする時期に
運動量が増えて一回の強いストレスによって未完成の骨がはがれてしまうことがわかります。

以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。

〜症例1〜

15歳の野球部所属の男性ですが、前日サッカーをしていて、ボールを蹴った瞬間に右の股関節が痛くなって歩けなくなり来院されました。

正面のレントゲンでは、はっきりとどこが悪いのかわかりません。

でも、角度を変えてレントゲンを撮ってみると、どこが悪いのかがわかります。

実際にどこが痛かったのかというと、 こちらの写真の×印が付いている部分です。

上の×印は上前腸骨棘部分を表しています。

今回痛かったのは、下の×印の部分です。

ここは「下前腸骨(きょく)」といって、また別の筋肉がついている部分です。

この部位に腫れと圧痛が強くありました。

別角度でレントゲンを撮ってみると、↑の先に三日月形に骨が薄くはがれていることがわかります。

エコーを撮ってみると、↑の先に示したように、はがれた骨の位置関係がわかりました。

さらに別の角度からエコーで診てみると、患側では、赤↑の先にはがれた骨片があることがわかります。

この骨片は水色↑の方向に筋肉が引っ張ったことが原因ではがれたのだとわかります。

右側の健側の写真と比べてみると、骨がはがれている状態がよくわかります。

〜症例2〜

次はまた別の患者さんの写真です。

サッカーの試合でボールを空蹴りしたとき激痛が走り、歩けなくなり来院されました。

×印の部分に圧痛があり、特に↑の先の部分が痛みました。

左右を比較して股関節のレントゲンを撮ってみると、右の↑の先に骨がはがれているのが写っています。

治療としては、痛みのある間は歩行時は松葉杖をついてもらいますが、10日ぐらいすれば痛みも無くなるので、その時点で松葉杖をとります。

ストレッチなどをしながら、ゆっくり筋肉の柔軟性を高めることも並行して行います。

3週間後にレントゲンを撮ると、骨癒合が見られ、痛みも無かったので、練習を再開しました。

〜症例3〜

次は15歳のサッカー部所属の男性です。

2日前のサッカーの試合中、走ろうとしたときに、左股関節に音がして走れなくなったということで来院されました。

赤い矢印で示したところに圧痛があり、その周囲に腫脹も見られました。

レントゲンを撮って左右を比較すると、左の下前腸骨棘に裂離した骨片が認められました。

左右の股関節を別の角度で撮影してみると、はっきりと裂離した骨片が骨盤から剥がれており、明らかに開きも見受けられます。(赤色矢印の先)

ですので、松葉杖を使って、体重をかけずに歩行していただくことを指導しました。

初診時

レントゲン画像では、左股関節に下前腸骨棘部(赤色矢印部分)に、はっきりと剥がれた骨片が写っています。

2週後

受傷後2週間後のレントゲン画像です。この時点で赤色矢印て示した下前腸骨棘で仮骨形成が確認できました。

1カ月後

1か月後のレントゲンでは
仮骨形成がしっかりできているのが確認できます。この時点で、痛みも無くなっていました。

2カ月後

受傷後2カ月後のレントゲン画像では、完全に骨癒合が見られました。
初診時にあった隙間が埋まっているのが良くわかります。
この時点でスポーツ復帰を許可しました。

成長期に、スポーツをしていて股関節の痛みを訴える場合は、

上記でご紹介したように、骨折をしている場合もあります。

股関節の痛みが長く続いているときは、

早めにお近くの整形外科を受診されることをお勧めいたします。

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