成長期にスポーツをしていて、股関節が痛いという場合、以前ご紹介した「上前腸骨棘裂離骨折」や「下前腸骨棘裂離骨折」が多く見られますが、脚の付け根であるお尻の部分の痛みを訴える、「坐骨結節裂離骨折」といった怪我もあります。
前者の2つと大きく違うのが、痛い部位が股関節の前ではなく、後ろということです。
以下で、実際の症例をご覧いただきながらご説明していきたいと思います。
坐骨結節裂離骨折の原因
坐骨とは、椅子に座った時に当たる骨の部分です。
以下の図のように、坐骨には太ももの後ろにある筋肉が多数付着しています。
この部分は大腿二頭筋をはじめ、
腿を後ろへ引く作用のある筋肉がこの坐骨結節についています。
それらの引っ張る力によって、骨がはがれてしまいます。
どんな時に、どんな動作で痛みを感じるのか?
痛みは、走ったりジャンプをしたり、スタートダッシュをする動作などの求心性収縮力によって受傷します。
また、キック動作やハードルの跳躍、スライディングなどの遠心性収縮力がかかっても受傷しますが、前者の方が頻度は高いです。
以下で実際の症例をご覧いただきたいと思います。
〜症例1〜
クラブでサッカーの練習中にお尻のあたりの付け根が徐々に痛くなり、我慢できないぐらい痛くなって来院されました。
骨盤右下の↑部分の先に骨が少し薄くなっている部分があります。
別の角度で撮ってみると、はっきりと骨がはがれているのではないのですが、筋肉の付いている部分で骨の形状が変形しています。
この症例は裂離骨折ではないのですが、繰り返す坐骨部分での筋肉の牽引により、骨の炎症を起こしたものだと考えられます。
1カ月ぐらいの練習の休止によって症状が改善されたので、痛みが消失した時点で練習復帰されました。
脚の付け根の痛みを長期に訴えている場合や、肉離れなのになかなか痛みが取れないといった場合は、
裂離骨折の可能性があります。
痛みが出たらできるだけ早い目にお近くの整形外科の受診をお勧めいたします。