膝と大腿部の骨脆弱性骨折

膝関節の疾患は、動かし始めが痛かったり、階段を下りるときに痛いなどの症状がでます。

多くの場合、膝の痛みの原因は変形性膝関節症ですが、
骨自体を押さえて強い痛みがあったり、徐々に痛みが強くなって歩くのが辛くなってくる場合には、
このページで御紹介する「膝の骨脆弱性骨折」を疑います。

この二つの疾患は見分けるのがなかなか難しいのですが、
圧痛点の違いを見れば判断できます。

以下の図のように、
変形性関節症が生じている場合、関節の隙間(下の図の青い点の部分)に痛みを感じるのですが、
膝の骨脆弱性骨折の場合には、骨自体(赤い丸の部分)を押さえると痛みを感じます。

治療は膝関節にクッション性を持たせる意味で、ヒアルロン酸注射を行ったり、
膝の安定性を図る目的で、膝の装具を装着したり痛みのある骨の部分に体重がかかりぬくくするため足底板療法などを行います。

また、体重をかけることで、痛みが出るので、体重をかけない状態で膝関節周囲の筋力トレーニングを行います。

きちんと治療を行う事で、痛みは2ヵ月程度で、痛みは改善されていきます。

以下、実際の患者さんについて御覧いただきたいと思います。

68歳の女性です。

右膝の痛みを訴えて、来院されました。

1か月前より、特に誘因なく、右膝が痛くなったそうです。

お話を伺うと、4年前より皮膚科に通院されており、
ステロイドの外用剤を4年間使用しておられるそうです。

左のレントゲンは、初診時のものです。

赤色丸印で示した関節裂隙の少し上の部分の骨(大腿骨内顆部)に
痛みを訴えておられ、圧痛もそこに存在します。

ご年齢や、ステロイド外用剤を4年間使用されているということから、
骨粗鬆症の検査も合わせて行いました。

左の写真は骨密度の検査の結果です。

ピンク色部分の部分は骨粗鬆症を示す範囲であり、
この患者さんの位置づけは※印の部分です。

また、破骨細胞の数を調べるために、合わせて血液検査も行いました。

左の写真のTRACP-5bは破骨細胞の数を表す数値で、
今回の検査結果で基準値を超える結果となりました。

以上のことから、骨粗鬆症が基盤となった右膝の骨脆弱性骨折を疑い、
MRI検査を行いました。

左の写真は、IMR画像です。

赤丸印で示した大腿骨内顆部に輝度変化が認められました。

圧痛点とMRIの結果から、
右膝の大腿骨側の骨脆弱性骨折と診断できました。

治療は、骨粗鬆症に対する投薬治療と、注射を行いました。

リハビリは、膝関節の安定性を保つため、
膝関節装具を装着していただき、
同時に非荷重で膝関節周囲筋の筋力トレーニングを行い、
膝関節にかかる負担を軽減するようにしました。


78歳の女性です。

右膝の痛みを訴えて来院されました。

2ヵ月前より、膝の痛みが出現し、歩行痛もあるという事で、
変形性関節症であることから1か月前よりヒアルロン酸注射を開始しました。

しかし、1か月注射を続けても、効果が見られず、
むしろ右膝の痛みが強くなってきているという事でした。

再度、症状を確認したところ、
右膝の関節裂隙の部分が痛いのではなく、
赤色矢印で示した大腿骨内顆部に痛みを訴えておられ、
圧痛が確認できました。

左のレントゲンは、初診jのものです。

痛みを訴えている部分は、赤色矢印で示した所です。

レントゲンでは、膝関節内側が少し狭くなっていることは確認できますが、
痛い部分と隙間が狭いことは実は関係なく、
赤色矢印で示した部分が、痛みのある所でした。

ヒアルロン酸注射をしているにもかかわらず、
痛みが増強していることや、圧痛点から右膝(大腿骨側)の
骨脆弱性骨折を疑い、MRI撮影を行いました。

左の写真はMRI画像です。

赤丸印で示した大腿骨内顆部に輝度変化が認められました。

また、内側半月板の変性も確認することができます。

圧痛点や、MRI画像、痛みの経過から、
右膝の骨脆弱性骨折(骨の痛み)であるという事がわかりました。

膝の装具と注射で、痛みは約2ヵ月程度で、無くなりました。


左の写真は、膝の内側の痛みを訴えて
来院された患者さんのレントゲン写真です。

膝の関節の状態を見ると、
関節の隙間もはっきりしており、
軟骨がかなり減っているとは言えません。

ですが、歩くのが辛くて、
大変であるという訴えがあり、
変形性関節症の症状とは一致しません。

良くレントゲン写真を見ると、
赤矢印の部分に白い線が見えて、
骨折を起こしていることがわかります。

横から見たレントゲン写真でも、
赤色矢印のところに骨折を示す、
白い線が見えました。

圧痛も、この赤色矢印の部分で見られ、
骨折があることがはっきりとわかりました。

治療としては、骨粗鬆症の治療に加えて、
支柱つきのサポーターを使って、
膝を保護するようにしました。

そうすることで、2~3週間ぐらいで、
痛みは軽減し、
1か月ぐらいで完全に骨が癒合し、
痛みも消失します。


次の方も、レントゲン写真では、
関節の隙間がしっかりと見えます。

ですが、歩行時の強い痛みがあり、
その原因が何であるかを確認するために経過を見ていました。

すると、脛骨の一部分にうっすらと白い帯状の線が見えてきました。
(赤色矢印の部分。)

MRIを撮って確認したところ、
半月板や、関節の軟骨に大きな変化は見当たらず、
脛骨の一部に黒く線が見えました。
(赤色矢印の部分。)

このように、膝関節の痛みの原因を探るためには、MRIが有効で、
半月板損傷や靭帯損傷がなかったとしても、
骨に異常がある可能性がある場合にはMRIを撮ることがあります。


別の患者さんのレントゲン写真です。

右の膝関節の内側の痛みがあり、
レントゲンを撮影してみると、
赤色矢印で示した部分に白い骨折線が見られました。

右ひざだけをレントゲンで撮ると、
より鮮明に白く写っている部分がわかります。

この方は、関節の隙間が狭くなっており、
変形関節症もあります。

このように、体重がかかりやすい内側の関節面では、
骨脆弱性骨折が発生しやすいのです。

骨折によって、関節の土台の部分である骨が、
あたかも地盤沈下するような壊れ方をするケースもあります。

したがって、痛みが膝に出た場合には、
サポーターで膝を支え、
足底板を入れて、内側にかかる荷重を分散させ、
膝にかかる負担を軽減します。

膝や大腿部は荷重が良くかかる部分です。

痛みが強いときには、骨脆弱性骨折である可能性もあるので、
変形性関節症であると思って放置せず、
歩くのが辛いことを我慢しないで、
早い目に病院へ行かれることをお勧めいたします。

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