中手骨骨端線損傷 (ちゅうしゅこつこつたんせんそんしょう)

中手骨骨端線損傷は、けんかをしてこぶしで相手を殴ったり、ボールが手に当たって生じることが多く見られます。

ほとんどの場合、手術をせずに固定を行う事で治ります。

このページでは、中手骨に生じた骨端線損傷の例をご紹介したいと思います。

中手骨の骨端線

上の図は中手骨の骨端線の位置を示したものです。

第1中手骨の骨端線は近位部(手首に近い方)に存在し、第2~第5中手骨の骨端線は遠位部(指先に近い方)に存在します。

           中手骨の骨端線損傷は、受傷機転がこぶしで殴るような動作、すなわち第2~第5中手骨に軸圧がかかるような力が働いたときに生じることが多いのです。

成人の場合では、上記のような受傷機転では、中手骨頚部骨折が生じますが、
小児の場合、骨端線部は成人に比べて脆弱な部分なので、骨端線を含んだ怪我になります。

では、以下で実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。

14歳の男性です。

左手背部の痛みを訴えて来院されました。

けんかで友達を殴ってから、赤色矢印で示した部分に腫れと痛みが出現したそうです。

正面の外観写真ではわかりにくかったのですが、
横から見てみると、 赤色矢印の部分が著明に腫れていることがわかります。

レントゲンを撮ってみると、
左中手骨での、骨端線損傷(赤色矢印で示した部分)であるとわかりました。

約3週間の固定療法を行い、1ヶ月後には普通に生活ができるようになりました。


7歳の男の子です。

右手背部の痛みを訴えて来院されました。

右手背部にボールをぶつけて受傷されたそうです。

左のレントゲンは初診時のものです。

赤丸印の部分に、痛みを訴えておられました。 

左のレントゲンは側面から撮ったものです。

赤色矢印で示した第3中手骨に骨端損傷が認められました。

アルミ副子による固定を行いました。

受傷後3週間のレントゲンです。

赤丸で囲んだ部分の腫脹や圧痛は消失していたので、固定を除去しました。

受傷後3週間の斜めから撮ったレントゲンです。

骨端線は閉鎖しておらず、症状も全く無くなったので、治療を終了しました。


14歳の男性です。

右手背部の腫れと痛みを訴えて来院されました。

友達とけんかをし、右こぶしで相手を殴った後、右手背部が痛くなったそうです。 

左のレントゲンは初診時のものです。

赤色矢印で示した部分の右第3中手骨で、骨端線損傷が認められました。

この方は、4指を曲げることを可能にし、伸ばせないような固定を行いました。

左のレントゲンは、固定を行った状態で撮影したものです。

赤色矢印で示した部分が骨端線損傷の部位です。

左は側面から撮影したレントゲン写真です。 

赤色矢印で示した骨端線損傷の部分は安定していたので、
固定を3週間継続しました。

3週間後、指を曲げることができる固定を行っていたので、
固定を除去した後は、拘縮などもなく、すぐに日常生活に戻ることができました。

中手骨骨端線損傷は、成人の中手骨頚部骨折に比べて、大きく変形してしまう事はほとんどありません。

ですので、整復操作をすることもほとんどなく、ましてや手術をすることなど考えられません。

手に変形などが明らかに見られない場合が多いので、なかなか気がつかないこともよくあるのですが、
ちゃんと調べてみると、実は骨端線損傷が起こっていたという事がしばしばあります。

お子さんが、手背部の痛みを訴えられていた場合には、早めに整形外科を受診されることをお勧めいたします。

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