足部の骨端線損傷は、つま先立ちになるような姿勢で足を強くついてしまった時などに生じる疾患です。
特に中足骨は、近位部と遠位部の二つの骨端線を有しているため、受傷時にどちらかの骨端線を傷つけることがあります。
このページでは、中足骨骨端線損傷がどのような疾患であるのかをご説明し、
実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。
中足骨の骨端線
上の図は中足骨の骨端線の位置を示したものです。
第1中足骨の骨端線は近位部(足首に近い方)に存在し、第2~5中足骨の骨端線は遠位(足先に近い方)に存在します。
中足骨骨骨端線損傷の発生メカニズム
左の図は体重が第1中足骨の骨端線に負荷がかかった場合を示しています。
子供さんの場合では、負荷がかかった場合、第1中足骨の基部の骨端線が外力に弱いので、損傷する恐れがあります。
(水色矢印の部分)
右の図は第2~5中足骨の骨端線に負荷がかかった場合を示しています。
子供さんの場合では、中足骨頸部付近の骨端線が外力に弱く損傷する可能性があります。(水色矢印の部分)
一方で、同じような受傷肢位であっても、成人の場合では、靭帯損傷や違う部位での骨折が生じます。
では、以下で実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。
5歳の男の子です。
左足の痛みを訴えて来院されました。
高所より尖足位で転落し、受傷されたそうです。
左の写真は初診時の外観写真です。
赤色矢印で示したリスフラン関節部に腫脹と圧痛が認められました。
左のレントゲンは足を上から撮影したものです。
このレントゲンでは骨端線損傷の有無は判断しにくかったのですが・・・。
斜めから撮影したレントゲンの赤色矢印で示した部分に
第1中足骨骨骨端線損傷(Salter-HarrisⅡ型)が認められました。
アルミ副子による固定を3週間ほど行いました。
患部の圧痛や歩行痛が消失していたため、
治癒したと判断し、治療を終了しました。
14歳の女の子です。
右第2趾の痛みを訴えて来院されました。
2年前より、クラシックバレエのポワント肢位で痛みを訴えておられました。
3週間前より、右第2趾のゆびの付け根に痛みと腫れが出てきたそうです。
左のレントゲンは初診時のものです。
左のレントゲンは足を上から撮影したもので、
赤色矢印で示した部分の第2中足骨骨端線の部分に離開が見られました。
左の写真はレントゲンを斜めから撮影したものです。
赤色矢印で示した部分に圧痛があり、骨端線の離開も見られたため、
第2中足骨骨端線損傷(Salter-HarrisⅠ型)であると考え、
レッスンの中止を指示しました。
左のレントゲンは約1ヶ月後のものです。
初診時の足の上から撮影したレントゲンと比較してみると、
赤色矢印で示した骨端線部分の離開はしていませんでした。
左の写真は約1ヶ月後に斜めから撮影したものです。
斜めの方向から見たレントゲン写真でも、
赤色矢印で示した部分では、
骨端線の離開も見られませんでした。
また、圧痛も消失しており、レントゲン画像と症状を合わせて考え、
治癒したと判断し、レッスンに復帰してもらいました。
中足骨骨端線損傷は、他の骨端線損傷に比べてさほど多くはありませんが、
子供さんの足の怪我で明らかな骨折の所見がなくても、
患部の腫れが強かったり、体重をかけると痛くて辛いなどようなことを訴えておられる場合には、
今回ご紹介した中足骨骨端線損傷である場合もありますので、
そういった場合には、早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします。