五十肩(肩関節周囲炎)では、関節の可動域が制限されるという症状が見られますが、
もう一つよく見られる症状として、夜間痛があります。
日中のように、肩関節を動かしているわけではないのにもかかわらず、
関節の痛みが出て、つらい思いをしておられる方も多いのではないでしょうか?
そこで、その症状を少しでも和らげるためにはどうしたら良いのかということについて、
このページではご説明していきたいと思います。
なぜ五十肩は夜間痛が起きるの?
五十肩のほとんどの方は、夜痛みのため、目が覚めると言われています。
夜間に痛みがでる理由を以下でご説明いたします。
以下の図①②③は、肩関節包をイメージしたものです。
図①は腕を下垂した時の正常な肩関節の関節包をイメージしたものです。
関節包の一部分は少し脆弱な部分(半円状に飛び出ている部分)があります。
正常な状態でも、関節包の脆弱な部分には内圧がかかりやすくなっています。
図②は、五十肩の関節包をイメージした図です。
関節包の容量自体が正常な状態の時よりも、小さくなっています。
それが原因で、関節内圧が高くなり、関節包の脆弱な部分には、より大きな圧力がかかります。
図③は、五十肩の患者さんの就寝時をイメージしたものです。
痛みのある側を下にして寝ると、体重と床からの圧により、関節腔内の圧力はより高まって、
関節包の最も脆弱な部分に圧が集中してしまいます。
その結果、就寝時に痛みが出て、目が覚めてしまうことになります。
肩甲骨の位置異常が夜間痛の原因になります!
五十肩の症状の一つである夜間痛の原因は、肩甲骨の位置異常が影響するとも言われています。
肩甲骨は、肋骨上を滑走するので、いろんな方向に動きます。
上の図で示すように、①は正常な肩甲骨の位置を示した図です。
②は肩甲骨が扉を開いたり、閉じたりするような動きを外転・内転といいます。
③は肩甲骨が上に動いたり、下へ動いたりする動きを、挙上・下制といいます。
④は肩甲骨がハの字に開いて、前に倒れて行くようなうごきで、上方回旋といいます。
⑤は肩甲骨どうしが、少し離れ、後ろに倒れていくような動きで、下方回旋といいます。
これらの肩甲骨の動きは肩甲骨周囲の筋肉の作用で自由に動かすことができます。
五十肩の場合、肩甲骨は下方回旋の方向に位置異常を起こしていることが多く見られます。
以下の左図は、就寝時に位置異常を起こした肩甲骨が床面に固定された状態を示しています。
肩甲骨が下方回旋(後ろに倒れている状態)した状態で寝ると、床面で肩甲骨が固定され、
肩甲骨は上方回旋(真上に倒れる状態)に強制され、
関節包の脆弱な部分が伸張します。
さらに、上肢は重力によって伸展・外旋し、夜間痛を伴います。
夜間痛を緩和する方法として、上の右図のように、タオルや枕を使用し、
上肢のポジションを変えて寝ることが有効だと言われています。
このように肩甲骨の位置異常は夜間痛と関連があるため、
肩甲骨の位置異常を把握することで、
どの筋肉が働いていないかを推測し、リハビリの時に役立てます。
次のページでは、五十肩による肩甲骨の位置異常に着目したリハビリについてご説明したいと思います。