膝蓋骨不安定症の発症要因(怪我をしたわけでもないのに膝が痛い!)

膝蓋骨不安定症にはいろいろな原因があります。

結局膝蓋骨が不安定となって、膝の違和感を覚えるわけですが、
不安定になる要因がいくつかあげられます。

それについて、以下でご覧いただきたいと思います。

1、つなぎとめる靭帯が緩んでいる場合

左の図は、膝のお皿(膝蓋骨)の周りを表したものです。

真ん中の膝蓋骨の上には、
大腿直筋と呼ばれる太ももの筋肉があります。

階段を下りるときや、ジャンプして着地する時などに、
膝蓋骨を引き上げるような方向に
この筋肉が引っ張ります。

膝蓋骨を引っ張り上げた大腿直筋の力に対して、
膝蓋靭帯が引き延ばされて膝蓋骨を止めようとします。

しかし、膝にかかる力は赤矢印で示したように、
外に力がかかり、
膝蓋骨は赤矢印の方向へ引っ張られます。 

そして、膝が軽く曲がって、
太ももとすねが軽く曲がるような角度になると、
青色矢印の方向へ力がかかります。

こういう状態になったときに、
患者さんの中には膝が外れたとか、
脱臼したとか表現される方もあります。 

階段を下りる時やジャンプして着地した時などにも、
違和感を感じる場合がよくあります。

膝の中には、
青色で示した内側膝蓋大腿靭帯という靭帯が 
内側から外に逃げる膝蓋骨を引っ張って
膝蓋骨が外に逃げないようにしています。

この靭帯が怪我によって切れたり、
緩んでしまった場合に
膝蓋骨は外側に脱臼してしまいます。

膝蓋骨不安定症の場合には、
必ず内側膝蓋靭帯が切れているわけではありません。

関節が柔らかい体質の方のなかには、
もともとこの靭帯に多少緩みがあって、
膝蓋骨の遊びが大きい場合があります。

水色の水平線で膝を切って、
上から見てみると、
膝の構造は下の図のようになります。

膝を曲げている時には、
左の図のように膝蓋骨が
大腿骨(太ももの骨)の溝に収まるような
構造になっています。

ところが、内側の靭帯が緩んでいたり、
切れていた場合には、 
内側から引っ張られる力が弱いので、
膝蓋骨が外側に逃げてしまいます。

また、外側の靭帯が硬くても、
外にかかる力が強くなるので、
同様の事態に陥ります。

つまり、内側と外側の靭帯の緊張度が違う場合に、
膝蓋骨が脱臼したような状態になり、
膝蓋骨の遊びが大きくなるということになります。

実際のレントゲンで見てみると、
赤色矢印の方向へ
膝蓋骨が動いているのがわかります。

黄色の縦線は膝の中心を表しています。

膝を曲げた状態で上からレントゲンを撮ると、
左のレントゲンの様に膝蓋骨の位置が良くわかります。

2、膝蓋骨と大腿骨の形に異常が見られる場合

上の図は、膝蓋骨の形を3つに分けたものです。

図の真ん中の「typeⅡ」と呼ばれる膝蓋骨の形は
内側(med)の斜面と外側(lat)の斜面の長さと傾きに
違いがあるのがわかります。

さらに、「typeⅢ」になると、内側はほぼ垂直の状態で、膝蓋骨も小さく見えます。

このようなtypeⅡとtypeⅢのような形状は膝蓋骨が大腿骨の溝に収まりにくく、
膝蓋骨が外側に動きやすくなります。

上の図では、いろいろな大腿骨の形が見られます。 

大腿骨の溝の形はいろいろですが、
どれにも共通して見られることは、
膝蓋骨の形とはかみ合わないということです。

どのようにかみ合わないのかということを表しているのが上の図です。

①では、溝の深さを示しています。溝が浅いと膝蓋骨とかみ合いません。

②では、外側の土手の高さを示しています。土手が低いと簡単に膝蓋骨が乗り越えてしまいます。

③は、外側の土手の傾斜を表しています。傾斜が浅いと、膝蓋骨が簡単に逃げてしまいます。

④は、大腿骨の溝の中心に対して、膝蓋骨がどの位置に収まっているのかを表しています。
膝蓋骨が中心線からプラスの方にずれていると、外側に膝蓋骨が逃げやすくなります。

左のレントゲン写真は、
正常な膝の状態です。

膝蓋骨と、大腿骨の形がきちんと
かみ合っていることがわかります。

左のレントゲン写真では、
膝蓋骨の形と大腿骨の溝の形が
かみ合わない状態であることがわかります。 

膝蓋骨の内側の傾斜が垂直に近くて、
大腿骨の溝が浅いことがわかります。

したがって、膝蓋骨が赤色矢印の方向(外側)に
簡単に動いてしまいます。

膝蓋骨不安定症は、以上の理由で生じると言われています。

診断については、別ページで詳しくご説明いたします。

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