中足部のスポーツ傷害の中で、良く見られるのが、
この有痛性外脛骨といわれる疾患です。
外脛骨とは、足の内側にある過剰骨(よけいな骨)もしくは、
種子骨の一つです。
健常な方の15%ぐらいの方にあるといわれていて、
症状がなければ何も問題ありません。
しかし、もし痛みが出てきた場合には、
治療が必要になってきます。
ここでは、有痛性となった場合の外脛骨障害について述べていきます。
上の図は、足を内側から見た図です。
1枚目の図で内側の骨の端に外脛骨があります。
そもそもは舟状骨粗面という足の内側に出っ張った部分があるのですが、
その部分に後頚骨筋という筋肉がついています。
この筋肉は足の土踏まずに重要な役割をしていて、
この筋肉が緊張することで、
足のアーチが保たれています。
疼痛発生のメカニズムとしては、捻挫や繰り返される後頚骨筋の引っ張る作用によって、外脛骨部分が舟状骨の部分からはがれるようになって、その部分で炎症をおこします。
また、こちらの外観写真にあるように、足の土ふまずが扁平足傾向になっている方に有痛性外脛骨は多く見られます。
それは、外脛骨についている後脛骨筋がピンク色の矢印で示したように上のほうに足のアーチを引き上げているため、土ふまずが下がるとさらに後脛骨筋が引き延ばされるようになるからです。
右のレントゲン写真では縦アーチが失われて、扁平足となり、骨の並びも平たんになっていることがわかります。
この絵は外脛骨を上から見たものです。
レントゲンを撮ると、左の絵のように3つのタイプに分かれます。
Ⅰ型は見た目に舟状骨から離れているように見えます。
II型は舟状骨と重なるように映ったり、すぐそばにあるように写ります。
Ⅲ型は完全にくっついたかのように舟状骨が大きく写ります。
実際のレントゲン写真を見てみましょう。
Ⅰ型は舟状骨から完全に離れた位置にあります。
実際は後脛骨筋腱の中に存在して、丸く小さいものが多いです。
ですので、一旦痛くなっても、腱の炎症さえ収まれば、なんら問題なく治ってしまいます。
また、この骨片があっても、症状が出ずに終わることもあります。
II型の場合は、舟状骨のそばにあって、その連結部分は線維性または軟骨性に結合し、後脛骨筋腱 のつく場所の近くにあります。
見た目は、関節の様にみえますが、実はまったくそういう機能はもっていません。
II型が有痛性になるケースが多く、捻挫などをきっかけに連結部分で不安定な状態が続いて、症状が出ます。
いったん収まりますが、また繰り返して症状が出ることもあります。
Ⅲ型は、舟状骨と骨性にくっついていて見た目に舟状骨が大きくなったように写ります。
後脛骨筋腱のつく場所が突出したように見えます。
このケースもそんなに痛みが長引きません。
では、治療方法ですが、ほとんどが手術をしなくても治ります。
その方法の一つとして、足底板療法があります。
この写真は、透明なガラスの台の上に乗っていただいて、測定板を合わせているところです。
下から鏡で映すと、土踏まずの部分にパットがあっていることがわかります。
この絵の様に土踏まずから、かかとの部分までサポートするような足底板が有効です。
この縦アーチパッドの役割は外脛骨部分を下から支え、後脛骨筋の牽引力を緩めることです。
これならば、運動靴やスパイクにも違和感なく使えます。
こうすることで、縦アーチをサポートして、後脛骨筋腱が外脛骨部分を強く引っ張らないように支えます。
これは実際の縦アーチパッドの写真です。
形状はちょうど土踏まずに当たるようになっていて、
既製品でサイズも豊富にあります。
これらを運動靴やスパイクに入れて、足の痛みを軽減します
この写真は、足底板を踵に入れることで、こんどは後脛骨筋を引き上げるようにします。
体重のかかる位置が、足のかかとの部分に乗るので、直接土踏まずにかかる負担が軽減できます。
この写真は、立った状態で足を後ろから見たものです。
この写真で向かって右側の足は踵の中央のラインと、アキレス腱のラインがくの字になっているのがわかります。
すなわち、縦アーチが喪失して扁平足になっています。
そこで、踵の内側を上げる様な足底板を入れることで、踵の位置を補正します。
踵の補正用の足底板はこの写真の様に薄くて、靴の中でも邪魔にならないものです。
いろんな足底板を組み合わせることで、体重をかけるときに、痛みを軽減するようにします。
また、テーピングを併用することもあります。
実際の症例を見てみましょう。
10歳の女の子ですが、右の足首を捻挫してから、足の内側の痛みが続くので来院されました。
歩くと赤矢印で示した部分が痛くなると訴えていました。
立ってもらって後ろから見てみると、軽い扁平足傾向にありました。
それで、レントゲンを撮ってみると、黄色矢印の先に骨片が見え、有痛性外脛骨のⅠ型であると判断しました。
もともとこの骨片があったところに、捻挫が契機になって痛みが出ているので、1~2週間は体育や激しい運動は休止して、様子を見ることで、症状が改善しました。
さらに外脛骨があることがわかったので、足底板を入れて再発予防に努めました。
今度は違う患者さんの症例です。
16歳の女の子です。
赤矢印の部分が痛いということで、来院されました。
別角度で見ると、矢印の先の部分が腫れています。
クラブ活動で練習量が多くなって、痛み始めたようです。
普段歩く時は少し痛む程度ですが、クラブが終わった後には痛くて、歩くのにも支障をきたしていました。
レントゲンを撮ると、赤矢印の先に外脛骨が存在していることがわかりました。
左の足と比べてみてもらうと違いが良くわかります。
診断は有痛性外脛骨のⅡ型であると診断されました。
右足は一見扁平足傾向にあって、縦アーチが消失していることがわかります。
立って足に体重をかけた状態でレントゲンを撮ると、明らかに縦アーチの山がすこししか見られません。
こういった場合に、足底板は有効です。
この方は痛みがある間はクラブを休み、足底板療法で治療しました。
クラブへの復帰は、3~4週間ぐらいでできることが多いのですが、再び痛みが出ることもあるので、足指を使う運動療法や、予防を兼ねてテーピングでアーチを支えることも併用します。
運動療法についてはここをクリックしてください。
有痛性外脛骨は、ほとんどは手術をしないで治ります。
特に運動量が活発になるころに出るので、骨の成長が停止する15歳から17歳ぐらいには一時期痛みが出ても自然に治ってしまうこともあります。
ところが、強い痛みが繰り返し出て、そのたびに運動の休止を強いられるような場合、長期間痛みが続いてスポーツができな場合には手術に踏み切ることもあります。
手術には2通りあります。
こちらの写真は皮膚の上から外脛骨部分に向かって鋼線を入れて、分裂している部分を貫いて、人為的に一体化させます。
ただし、この手術の適応年齢は15歳以下の子供さんに限られています。(骨の成長が期待できる年代が対象です。)
手術後は3週間ぐらいのギプス固定を行います。
実際の手術では、こちらのレントゲンの様に鋼線が骨を貫いているのがわかります。
こうやって、鋼線によって分裂部分の骨を刺激して、骨癒合を促進させるように働きかけます。
こちらのレントゲンは18歳の女性です。
7年前(11歳)に上の様な手術を受けました。
左足の骨が一体化して、くっついていることがわかります。
痛みもなく、過ごしておられます。
今度は別の手術方法で治った患者さんです。
18歳の高校サッカー部所属の男性です。
2か月前よりサッカーをしていて痛みのために走れないと訴えて来院されました。
レントゲンを撮ると、外脛骨のⅡ型であることがわかりました。
痛みがなかなか引かないので、局所麻酔剤を患部に注射したところ、痛みが消失しました。
しかし、しばらくすると、また痛みが出るので、手術をすることになりました。
斜めから撮ったレントゲンでは、赤色矢印が示す外脛骨と近接する部分に麻酔注射をすることで、痛みが消えたことから、原因がそこであると確定しました。
そこで、手術療法によりこの骨片を摘出することを試みました。
こちらは術後のレントゲンです。赤色矢印の先に有った骨片は見られません。
術後はギプス固定を3週間行い、足底板を入れて土踏まずを保持します。
クラブへの復帰は、2~3か月ぐらいで競技復帰しました。
その後、再発もせず、継続してスポーツをしています。
有痛性外脛骨は運動を休止したり、足底板療法などで治ります。
捻挫の場合、足の外側が痛む場合が多いのですが、
有痛性外脛骨は足の内側が痛むのが特徴です。
まずは、運動を休止してみて、
それでも痛みが続くようなら、
早い目に足の専門医に御相談ください!