骨端症のなかでも、稀とされる肘関節で見られる骨端症を「Panner病(パンナー病)」があります。
これは上腕骨小頭と呼ばれる肘の関節を構成する部分で重要なところが、血流が阻害されることによって生じる疾患です。
子供さんの上腕骨小頭の障害で、良く耳にするのは「上腕骨小頭離断性骨軟骨炎」ですが、それとはまったく異なる疾患です。
このページでは、「Panner病(パンナー病)」と野球肘の一つである「上腕骨小頭離断性骨軟骨炎」との違いを中心にご説明していきたいと思います。
小児の肘関節の構造
子供さんの肘のレントゲン写真を撮ると、骨端線や骨端核などの成長に影響を持つ部分が画像に現れます。
その構造は、右の絵にあるように、上腕骨の先端部分において軟骨部分(水色の部分)と中の骨端核(白い部分)で構成されています。
軟骨や骨端核は将来的に骨として成熟していく部分です。
では、子供さんと成人の肘の構造の違いを以下の図で見てみましょう。
上腕骨小頭の血管分布とPanner病の病態
子供さんの場合は、骨が完全に成長していないので、成長軟骨が存在します。
上腕骨小頭では、上の図にあるように、小児期の骨端核へ栄養を供給している血管分布が乏しく、主に後方からの血管で支配されています。
やがて骨端核は完全に骨化し、成長軟骨は無くなってしまいますが、栄養血管で満たされます。
Panner病(パンナー病)では、この栄養血管に何らかの障害が発生し、血流が途絶えることによって上腕骨小頭の壊死が出現すると推測されています。
血行障害の原因としては、繰り返される微小外力などの循環障害節などさまざまな説があります。
Panner病の症状
肘関節の疼痛と可動域制限を主訴とする場合が多いようです。
これらの症状は、野球などのスポーツによる肘の過度使用後に出現する場合もありますが、特に誘因がないものもあり、はっきりした原因は定かではありません。
しかし、肘関節の痛みと可動制限を訴えるお子さんの中に、Panner病と同じような症状を訴える「上腕骨小頭離断性骨軟骨炎」という疾患もあります。
また、発症年齢が上腕骨小頭離断性骨軟骨炎では12歳~15歳であるのに対して、Panner病は10歳以下であると言われています。
また、可動域制限に関して、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎では肘関節の伸展制限が起こるのに対し、
Panner病は伸展・屈曲の両方で可動域制限が出ると言われています。
以下で、Panner病と上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の違いについてご説明したいと思います。
Panner病と上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の鑑別診断
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の病期は上の図のようになります。
外側型野球肘として広く知られていますが、初期は透亮像といって、上腕骨小頭の一部が薄くなる画像が見られます。
投球を続け、肘の酷使が続いた状態で大人になると、遊離した骨片が生じ、いわゆる「関節ネズミ」が出来てしまいます。
これに対して、Panner病は下の図のようになります。
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎との違いは、病変が上腕骨小頭骨端核全体におよぶことです。
上の図にあるように、正常な状態では、上腕骨小頭は豆状の大きな骨端核を含んだ小頭がはっきりとした輪郭で写ります。
しかし、病気が進行するとともに、上腕骨小頭は委縮していきます。
Panner病の経過に関しては、上腕骨小頭が完全に修復されるまでに1~3年かかると言われていますが、予後は良好です。
Panner病は上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と一見似ている症状ですが、まったく病態の異なる疾患です。
Panner病は非常に稀な疾患ですが、子供さんの肘の痛みを伴う疾患の一つに、こういった疾患もあります。
運動の有無にかかわらず、肘の痛みを訴えるお子さんを診るときにはこういった疾患もある事を念頭において、
子供さんが肘の痛みを訴えた場合には、早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします。