足関節の捻挫だと思っていて、腫脹や痛みが強い場合、骨折を疑いますが、
足関節内の稀な骨折の一つに、「距骨外側突起骨折」があります。
この骨折は、スノーボードの外傷として増えつつあると言われています。
このページでは、実際の患者さんの例もご紹介して、
距骨外側突起骨折とはどんな外傷であるのかをご説明したいと思います。
足関節捻挫と距骨外側突起骨折の圧痛点の違い
足関節ねんざの場合、多くは上の図で青×印で示した部分に圧痛点が見られます。
一方で、距骨外側突起骨折の場合では、やや前方で、外側の距骨部に圧痛を認めます(赤色×印の部分)。
この骨折は関節内の骨折なので、足関節全体が腫脹し、皮下出血が見られます。
距骨外側突起って、どこのことですか?
上の図は足部を外側から見た図です。
距骨と踵骨の境にある関節に面した部分で、距骨の外側に突出している部分があります。
この部分のことを「距骨外側突起」と言います。
踵骨の上に距骨が乗るように関節面が構成されています。
ですので、その関節面に沿った距骨外側突起が骨折し、
その骨片が大きい場合、関節に影響が出てしまいます。
距骨外側突起骨折発生のメカニズム
上の図は、距骨外側突起骨折の発生メカニズムを表しています。
上の図の左側は、足関節が背屈強制された状態を表しています(水色矢印の外力)。
右の図は、足関節が外反強制されて、外側突起に外力が集中していることを表しています。
これらの2つの外力で距骨と踵骨が衝突し、骨折すると言われています。
このメカニズムで起こる受傷機転としては、スノーボードで逆エッジで転倒したり、
ジャンプで着地時に失敗した際に起ここると言われています。
距骨外側突起骨折の画像所見
レントゲン画像
上のレントゲンは足関節を正面から撮影したものです。
赤色の丸で囲んでいる部分が外側突起骨折の部分を示しています。
左右を比べていただくと、赤丸の中には骨片が見えることがお分かりいただけると思います。
もし、レントゲンでわかりにくい場合には、CTの撮影を行う場合もあります。
CT画像
上の図は足関節を正面から見たCT画像です。
赤い丸印で囲んだ部分に骨折がはっきりと見えます。
このように、骨折を確認し、骨片の離れ具合(転位)の程度を確認し、保存療法が可能かどうかを判断します。
保存療法を行う場合、基本的にはギプス固定を約6週間行います。
転位の少ない場合、保存療法で骨癒合が期待できます。
では、以下で、実際の患者さんの例をご覧いただきたいと思います。
19歳の男性です。
左足関節外側の痛みで来院されました。
2ヵ月前にバイクで横転し、受傷されたそうです。
他院で足の捻挫といわれ、特に固定などの処置も行われず、
そのまま経過を見ていたそうですが、痛みが変わらないため当院へ来られました。
CT撮影を行ったところ、左の赤丸印の部分(距骨外側突起)に骨折が認められました。
別の撮影方法で行ったCT画像です。
足関節を斜め前方より撮影している画像で、赤丸印の部分(距骨外側突起)に
はっきりと骨片が見えています。
こうやってCT撮影を行う事で、捻挫と思っていた足の痛みが、
実は骨折であったのだとはっきりとわかりました。
56歳の女性です。
2ヵ月前にバランスを崩し、転倒しそうになったときに踏ん張り、痛みが出て、
接骨院に通院しておられたそうです。
しかし痛みが軽減しないため、当院へ来院されました。
左は初診時の外観写真です。
痛みの部位を特定するために、圧痛点を確認した後、痛み止めの注射を行いました。
すると、痛みが消失しました。
圧痛部位と比較して、レントゲン画像を見ると、
赤丸印で囲んだ部分(距骨外側突起)に骨折があることがわかりました。
受傷から2ヵ月たっていたこともあり、ギプス固定などは行わず、経過観察を行う事にしました。
経過観察を行い、赤丸印の部分(距骨外側突起)を比較してみたところ、
初診から2ヵ月の時点で骨癒合が確認できました。
32歳の男性です。
前日、ロッククライミングをしていて、約6mの高さより跳び下りて着地した時、
右足に激痛を覚えたそうです。
痛みのため、歩行が困難になり、当院を受診されました。
写真は、初診時の外観写真です。
腫脹が強く認められ、赤矢印の先で示した部分に限局した圧痛がありました。
左は正面から撮ったレントゲン画像です。
赤丸印で囲んだ部分に骨折を疑う画像が認められました。
しかし、骨折部の全体像がはっきりと把握できなかったっため、
CT撮影を行うことにしました。
左のCT画像は正面から撮影したものです。
赤色矢印の部分に骨折線が認められます。
いくつかの画像にわたり関節内に及ぶ複数の骨折線を認めたので、粉砕骨折型であると判断しました。
しかし、骨片の離れ具合(転位)が少ないとこがわかりました。
左のCT画像は、足関節を外側から撮影したものです。
赤色矢印の部分で、骨折線が確認できます。
こちらの画像でも骨片の離れ具合が少ないので、保存療法でも骨癒合が可能であると判断したので、
ギプス固定を選択しました。
治療の経過としては、ギプス固定中約4週間ぐらいは体重をかけないように、
松葉杖での歩行を指導しました。
固定期間はギプスと、取り外し可能なギプスを合わせて6週間行いました。
初診から6週間後のレントゲン写真です。
このレントゲンの赤丸印部分(距骨外側突起)に、骨癒合が認められました。
この時点で、痛みもなく、歩行も問題なくできるようになられました。
距骨外側突起骨折が足関節捻挫と明らかに違うのは、関節の腫脹と皮下出血の存在だと言われています。
また、受傷機転が明らかに足関節捻挫とは違うという事も念頭に置いて、
距骨外側突起骨折を疑うことが大切です。
スノーボードなどに行って、足関節の外側の痛みが出現した場合には、
この骨折の可能性が高いので、
医療機関へ行かれることをお勧めいたします。