足根骨癒合症(足首の捻挫と思っていたら、 こんな病気が見つかった!)

後足部の痛みの中で、スポーツをしている年代の子供さんに見られる疾患の一つに足根骨癒合症が見られます。

字のごとく、足の骨がくっついてしまっている状態をいいます。

しかし、完全に骨としてくっついているのではなくて、
多くは軟骨性、または線維性という骨とは違った組織で癒合しています。

もともと、生まれつきこの状態はあるのですが、症状としては出てこず、
スポーツで良く動かすようになったり、捻挫や怪我等をきっかけに偶然見つかるケースがあります。

聞きなれない病気ですが、このページでは足の構造も含めて説明していきます。

下の赤丸で囲んだ部分あたりが、
運動の後に痛いとか、長距離を歩いた後に痛いという症状が出ます。

本人の訴え自体は強い痛みというよりは、軽い違和感程度ということもあります。

上で赤丸で囲んだ部分で痛みが出る原因は、
下の図の1・2・3の骨が部分的に癒合していることが原因である場合がほとんどです。

3つの骨全部がくっつくことはほとんどなくて、
1の距骨(きょこつ)と、2の踵骨(しょうこつ)かくっついたり、
2の踵骨(しょうこつ)と3の舟状骨(しゅうじょうこつ)がくっついたりするケースがほとんどです。

では、この足根骨癒合症がおこると、どんな影響が出るのでしょう?

足骨の構造

左の図は右足を前から見た骨の絵です。

平面上にまっすぐ立っている状態での
骨の位置関係を表しています。

この状態で、1の距骨は2の踵骨の上に乗っています。 

この間の関節を距踵関節もしくは距骨下関節と言います。

この関節はでこぼこ道や、
バランスをとりにくい様な状況下になった時に、
床の状況に応じて骨自体が傾いて調節をし、
体が倒れないようにしています。

左の図の状態では、
足の内側に重心がかかり、
土踏まずが落ちた状態を表しています。

このとき、距骨は内側に傾き、
踵骨はその逆の方向に滑るようにして、
バランスをとっています。

左の図は、上の図とは逆で、
外側に重心が乗った状態です。

例えば足首を捻挫しそうになった状態や、
傾斜がかかったような道を歩いているときなどに、
このような状態になります。

先ほどとは逆に、
1の距骨は外側に、2の踵骨は内側に滑るようになります。

以上のように後足部にある骨は互いに滑る自由さがあって、
足がどんな条件にあってもバランスをとれるような構造になっています。

ところが…。

左の図のように、
癒合症によって、関節の間が不整な状態になっていると、
動きが妨げられて、
本来のスムーズな動きが妨げられてしまいます。

その結果、痛みにつながったり、
足の疲労感がいつまでも続くことになります。

足根骨癒合症は、その症状が出て、
スポーツの妨げになっている場合は、
癒合している部分を外して、
もとのなめらかな動きがとれるように手術を選択します。

以下では、実際の症例を御覧頂きたいと思います。

左の写真は、12歳の少年野球部所属の男の子です。

右足と左足を内側にひねって比べてみると、
左の足の方が内側に曲がらないことに気がつき、
親御さんと一緒に御来院になりました。

よく見ると、赤矢印で示した部分に
出っ張りがありました。

ところが、痛みはその時にはなくて、
野球もできているので、
経過を見ることにしました。  

左の写真は右足(良い方の足)のレントゲンです。

赤い矢印の部分を拡大してみると…。

赤丸印で囲んだ部分の関節は
なめらかな山の形状をしています。 

こちらは、症状のある方の足のレントゲンです。

赤色矢印の部分を同じように拡大してみると…。 

赤色の丸で囲んだ中央部分、
赤色矢印の先に示された部分に、
波状に薄くなった部分が見えます。 

さらに詳しく調べるために、CTを撮りました。

赤丸で囲んだ部分の関節が隙間が少なくなって、
線維性に癒合していることがうかがえます。

他の方向から撮ってみると、

赤丸で囲んだ部分の中央部に写っている
関節の骨がギザギザになっていることがわかります。

またさらに別の方向から撮ったCTでも
関節面が線維性癒合の状態になっていることがわかります。

この様にCTはあらゆる方向から骨の形状を確認することができるので、足根骨癒合症を疑った場合には有効な検査です。

検査は一通りして、病態もわかりましたが、痛みはその時にはなくて、野球もできているので、経過を見ることにしました。  

ところが、半年後に足関節の痛みを訴えて、
再び来院されたので、御家族とも相談の上、
手術治療をすることになりました。

左の写真は、手術後のレントゲン写真です。

赤丸で囲んだ部分に以前にあったような
不整な関節面は無くて、滑らかになっていることがわかります。

初診から約2年後が経っていますが、
野球も痛みなく継続されています。 

悪かった方の足を内側にひねっても、外側にひねっても、
なめらかに動くことが確認できました。 

37歳の女性で、
3日前より足の内くるぶし周辺に激しい痛みを覚えたので、
来院されました。

よく見ると、 赤矢印の先に、出っ張りが見えます。

押さえるとその部分が痛み、
足を動かす時もその部分に痛みがありました。

エコーを撮ってみると、 赤色矢印の先に黒い中に
若干白っぽく写る不整な像が見られました。

これだけみると、急激な発症でもあり、
石灰沈着性腱炎を疑いました。

が、触診したら隆起が硬く、
骨が隆起しているのではないかと考えられました。

レントゲンを撮ってみると、赤丸で囲んだ部分の中央部に、
骨が出っ張っている映像が写っています。

正常な青丸で囲んだ部分と比べてみると、違いが良くわかります。

別の角度から見たレントゲン写真です。

良い方の足は青丸の中央部に見える
距骨と踵骨の関節部分はなめらかです。

一方、悪い方の赤丸で囲んだ部分には、
赤色矢印の先に薄く溝の様に写っている部分が見えます。 

この部分が癒合部分であるとわかります。

この方は、経過としては、初診時に痛い場所に注射をしてからは、しばらくして痛みも消えて、徐々に日常生活も問題なくなったので、治療を終了しました。

ですので、今回急に出た痛みは、癒合症の痛みではなくて、
石灰沈着による腱の痛みであったと結論が出ました。

癒合部分は、今のところ問題ないので、
痛みが出たら来院してくださいという程度の指導で終わりました。

足根骨癒合症は、最初は激しい痛みがあるわけではないので、
わかりづらいことがありますが、足の関節の違和感を覚えたら、
この疾患も頭の片隅に置いて考えるようにされるといいと思います。

いずれにしても、痛みが無ければ問題はありません。

ただ、スポーツ時に痛むとか、仕事上で痛みが生じるとかといった場合には、
手術をして癒合している部分を取り除くことで問題は無くなります。

足首が運動後に疲れやすいとか、痛みが出てくる、
または、足首に変な出っ張りがあるなど、
思い当たることがあるときには、早い目に足の専門医までご相談ください!

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