
後脛骨筋機能不全は、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、
その名の通り、後脛骨筋が機能していないことをいいます。
後脛骨筋が働かず、足のアーチ構造が破たんしてしまうと、扁平足になります。
このページでは、後脛骨筋機能不全による扁平足での痛みや、治療方法について詳しくご説明していきたいと思います。
後脛骨筋とは?
後脛骨筋とは、脛骨の後面から足の内くるぶしの後ろを通り、足の舟状骨に付着しています。
この筋肉の作用は、おもに、動的な働きとしては、つま先立ちをすることであり、
静的な働きとしては、足の土踏まずを支えてアーチを保つ働きがあります。

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また、後脛骨筋は下の図にあるように、収縮すると足部を内がえしする作用があります。
その作用は、足に存在する筋肉の中で、最も大きな力を発揮します。

足のアーチ構造の中でも、大切な役割を持つのが後脛骨筋です。

一旦、後脛骨筋の筋力が発揮されずにアーチ構造が破たんすると、
初めのうちは骨や靭帯の緊張によってある程度は崩れずに保たれていきますが、
ますます、筋力が発揮されない状態が続くと、靭帯が伸びきってしまったり、関節の形状が崩れたりすることになります。
したがって、後脛骨筋が長期にわたって機能を失う事で、土踏まず(内側縦アーチ)が失われることになります。
後脛骨筋機能不全の症状
後脛骨筋機能不全の症状には、以下のようなものがります。

上の写真にあるように、後脛骨筋腱に沿った腫れが見られます(赤い点線部分)。
内側縦アーチは、消失しています(水色の直線の部分)。
さらに、健常な場合と比較すると、下の写真のようになります。

上の写真は足を後ろから見ているものです。
左の写真のように、後脛骨筋の筋力が働いている状態では、後ろから見た際に、
外側の足趾が第5趾くらいしか確認できません(水色の点線で囲んだ部分)。
一方、後脛骨筋が働いていない状態では、足の内側にカーブがでてきて、外側の足趾が数本見えます。
このように、踵が外側に傾いてしまって、足の形状が変わってくるというのが後脛骨筋機能不全の症状です。
後脛骨筋機能不全の診断と治療法
①外観での扁平足の有無

足の痛みを訴える部位を確認し、
外観で、扁平足の有無と、
足の後ろから見て、赤色丸印の足趾の見え方や、
踵骨の傾きを観察します。
②レントゲンによる扁平足の有無

レントゲンでは、体重をかけた状態で、
足の骨の位置関係を確認します。
上記の写真のように地面に対して足のアーチが
赤線のように確認できないものを扁平足と言います。
③後脛骨筋腱の変性・断裂の有無

痛みを訴えている場所が内くるぶしの周辺で、
左の外観写真やレントゲンによって
扁平足が確認されれば、
後脛骨筋の変性や断裂によって
機能していないのかどうか、MRIで確認します。
以上のように、後脛骨筋に異常がみられて、扁平足が生じているものを後脛骨筋機能不全といいます。
後脛骨筋機能不全による扁平足と診断できれば、治療の第一選択として足底板による保存療法を行います。
内側縦アーチ

内側ウェッジパッド

以上のような足底板を使っても、症状が軽減しない場合などには、年齢や職業を考慮し、手術を行う場合もあります。
以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。

73歳の女性です。
右足内側部(内くるぶし周辺)の痛みを訴えて来院されました。
歩くと、内くるぶしのあたりに痛みが出るとのことです。
左の外観写真は、初診時のものです。
赤色矢印で示した部分で、左足では見えない足趾が、右では確認できます。
また、内側の縦アーチも消失しており、扁平足が認められました。

左のレントゲンは初診時のものです。
赤色の線で示したように、足のアーチはレントゲンでも消失しており、扁平足であることが確認できます。

痛みの部位と、足の外観、レントゲンによる客観的なアライメントから、後脛骨筋機能不全による扁平足と考え、左の写真で示したように、足底板による回内側の矯正を行う処置をしました。

54歳の女性です。
右足内くるぶし後面の痛みと腫れを訴えて来院されました。
歩くと痛みがあり、右足片脚起立で踵を上げることが痛みのため困難とのことでした。
左の外観写真は、初診時のものです。
外観で、扁平足が(水色点線の部分)確認でき、
赤色点線の内くるぶし後面に腫脹が確認できました。

左のレントゲンは、初診時のものです。
健側と比較しても、患側ではアーチの消失が確認できます。
以上のことから、後脛骨筋機能不全による扁平足と考え、
注射を行いました。
注射で腫れや痛みがすっかり消失してしまいました。
後脛骨筋機能不全は内くるぶし周辺の腫れや痛みがあり、
後脛骨筋そのものが変性したり、断裂を起こし、結果として扁平足を引き起こしています。
ですので、腫れや痛みで歩くことがつらいことが多く見られます。
こういった場合は、まずは足底板での保存療法で痛みをとる処置を行って、対処していただければと思います。
扁平足でお悩みの方は、一度ご相談ください。