人工膝関節置換術 TKA(変形性膝関節症の手術療法)

これから迎える高齢化社会では、年を重ねても、アクティブであり続けることがみんなの願いですよね!

しかし、年齢を重ねると、膝の痛みが出てきて、日常生活に支障がでることもあります。

そうなってくると、行動範囲が狭くなったり、楽しみにしていた外出ができなくなってしまう恐れがあります。

行動的な日常でい続けたいという願いから、人工膝関節置換術によって、
痛みのない生活を取り戻し、生活の質を高めるという選択をされる方も増えてきました。

そこで、このページでは、人口膝関節置換術について述べていきたいと思います。

変形性膝関節症については別のページで診断やリハビリについてすでに述べてきました。

下の絵にあるように主に内側の軟骨が徐々にすり減ってくると、
いわゆるO脚の変形性膝関節症に至ります。

レントゲンを撮った状態がたとえ変形の度合いが強くてO脚が著しい場合でも、
痛みが少なく、歩行ができる方も多く、そういった場合には、置換術の対象にはなりません。

置換術の対象になる方は、膝の痛みが強く、歩くことが困難で日常生活に支障がでて、困っておられる方で、
年齢や、外見、レントゲン画像の結果などで決まるわけではありません。


膝のサポーターや注射など続けているのですが、膝の痛みがなくなりません。

最近、知り合いの人が「人工関節の手術をして、

楽になったよ」と言ってるのを聞きました。

この手術はどんなものなのですか?

また、私もこの手術を受けたら、楽になるのでしょうか? 

でも、手術って怖いんです~!

膝が痛いのは、さぞお辛いでしょうね・・・。

膝の痛みを治すために、いろんな事をやってこられて、
痛みの状態が変わらないのは本当に困りますよね。

でも、痛みなく暮らしたいとか、活動的に過ごしたいと思っておられるのならば、
手術も1つの選択肢だと思いますよ。


実際に、どういった方がされているのですか?

また、手術するタイミングってあるのですか? 

まず手術するかしないかの決めては、変形の度合いではなくて膝の痛みです。

じっとしていてもうずいて痛かったり、
歩こうと思ったら強い痛みがあって数10mしか歩けないなど、
日常生活での不自由さが決め手になります。

手術するタイミングは、色々な治療をやった後、
それでも効果が見られない場合に御相談に乗っています。

決して、年齢が決め手ではありません。


でも、実際、何歳ぐらいの人がこの手術を受けているのですか? 

多くは70~80歳前後というところでしょうか?

以前は65歳以上の方が適応と考えられていましたが、
人工関節の対応年数が15年以上であるといわれているので、
手術の適応年齢が広がりつつあります。


人工膝関節置換術をすると、
生活がどのように変わるのですか?
 

まず、痛みがほとんどなくなります。

膝の機能も曲がる角度がある程度までは回復します。
たとえば、痛みが楽になったので、旅行ができるようになったとか、
膝が前よりも曲がるようになったので、椅子からの立ち上がりがスムーズにできるようになったとおっしゃる方が多いですね~。


先生!

正座できますか~?

自転車も乗れるようになりますか?

いや~、実を言うと、正座はちょっと難しいかと思います・・・。

今、色々と研究されている段階ですが、
正座は難しいのが実情です・・・。

自転車は膝の曲がり具合にもよります。
また、バランス感覚なども変わってきますので、安全面から言うと乗らないほうがいいのですが、実際には乗っておられる方もいらっしゃいますよ。


手術したとして、入院の期間はどのぐらいになりますか?

また、リハビリはどうなっていますか? 

病院にもよりますが、入院期間は約1カ月前後のようですよ。

リハビリはお家の近くの病院で行うというケースもあります


そうですか・・・。

痛みが早くなくなるなら、手術も考えてみようかしら・・・。

私ひとりじゃ決められないし、主人や子供たちにも相談してみます。

また、相談に乗っていただけますか~? 

手術をするという決断はなかなかできないものですよね。

不安なことや、御不明なことなど、納得いくまで御相談にのりますので、
お気軽にお越しくださいね~!

人工膝関節置換術の実際

左の絵は、関節の中の軟骨表面を表した図です。

関節の軟骨の下には、軟骨下骨と呼ばれる骨がありますが、
その構造は、強度がまちまちで、ピンク色で示したように、
若干強度が弱いところがあれば、
体重がかかったときに軟骨部分がへこむような状態になります。

その部分に度重なるストレスがかかり続けると、
軟骨表面はデコボコとなり、さらにすり減った状態になり、
やがて、軟骨がなくなってしまい、
軟骨下骨が露出してしまう状態になります。

こういう状態では、膝を曲げるのに不都合が生じ、
痛みも強く出てしまいます。

人工膝関節置換術は、この摩耗した部分を取りさり、
新しい膝関節に取り換えるという発想で行われます。 

人工関節の目的には膝関節の動きを元のように戻すことがあります。

左の絵にあるように、正常な膝の関節の動きは、

膝の曲げはじめでは大腿骨は後ろへ滑り、
深く曲げていくにつれ、大腿骨が回転するような動きをします。

人工関節に置き換わった膝では、
軟骨部分はすべて人工物に置き換えられているので、
スムーズに動くことになります。

しかし、まったく元の膝と同じような動きにはなりません。

人工関節は、できるだけ膝を曲げることができるように
デザインされていますが、 
曲がる角度には限界があります。

手術で気になるのは傷の大きさですが、
左の図の水色の線で示した部分、
膝のお皿の上下約10cmぐらいが一般的です。

人工関節にすると、どんな点がいいのかという事を、下の図で御説明します。

上の図は、立った状態で、足の角度や膝のどこに重心がかかるかを示したものです。

正常の場合、赤い線で示したように、大腿骨と脛骨の作る角度はやや外向きのく字になり、
体重のかかるラインは青色の線で示したように、膝の真ん中あたりを通っています。

しかし、変形性膝関節症では、主に内側の軟骨がすり減ってしまうため、
大腿骨と脛骨の作る角度(赤線で示した角度)はほぼ直線のような状況になり、
体重のかかるライン(青色の線)は膝関節の内側を通ることになるので、O脚傾向になります。

ですので、人工膝関節では、手術によって大腿骨と脛骨の角度を変えて、
できるだけこの体重のかかるラインを正常に近づけます。

そうすることで、立っている姿勢も安定感が得られますし、
歩幅も大きく足を前に出すことができるようになります。

以下で、実際の患者さんの現在の状態をお伝えいたします。

手術当時77歳の男性です。

以前から、変形性膝関節症の治療で、
ヒアルロン酸注射や、膝装具などを続けてこられましたが、

痛みのために、外出がしづらくなってきたため、
手術をされました。

手術前に体重をかけない状態で撮ったレントゲンでは、
関節の隙間が減って、骨の辺縁が白く硬化していることがわかりました。 

手術後のレントゲン写真では、左ひざと比べると、
人工関節で作られた関節には隙間が作られて、
見た目にも膝が伸びきっていることがわかります。

その後、この方は自転車も乗れるようになられ、
反対の膝のリハビリも兼ねて、
足の筋力を鍛えるために筋トレもおこなっておられます。 


手術時70歳の女性です。

この方も、以前から変形性膝関節症の治療として、
ヒアルロン酸注射や運動療法、鍼灸治療も併用しておられましたが、通院するのにも痛みが出てきたため、手術を選択されました。

左の写真は体重をかけずに撮ったものです。
左右ともに膝関節の隙間がなくなり、
骨の辺縁が白く硬化していました。

体重をかけてレントゲンを撮ってみると、
さらに隙間がなくなり、骨どうしがぶつかり合うような映像でした。

ですので、片方ずつ人工膝関節置換手術をすることになりました。

左のレントゲン写真は手術後のものです。

上の写真に比べて、膝のアライメントが
より正常に近づくかたちに改善されていることがわかります。 

現在の膝の外観です。

手術痕もあまり目立たず、痛みもなく過ごされています。

膝の左右の曲がり具合を見てみると、
屈曲角度は自分の力で曲げることができる角度は100度ぐらいです。 

リハビリを継続しておられて、
すこしでも現在の良い状態を保つように頑張っておられます。 

自転車をこぐような動作をしても、これだけ膝がまがっておられます。

十分にトレーニングができるので、
活発に活動もでき、健康状態も維持されておられます。 


次も70歳代の女性です。 

膝の治療に以前から通っておられて、先に御紹介した方と御一緒に膝のリハビリを頑張っておられました。

手術前の体重をかけない状態のレントゲン写真です。

体重をかけると、骨どうしが当たってしまうぐらいに、
膝が変形しておられることがわかります。

日常生活にも支障が出ていることや、先ほど御紹介した患者さんとお知り合いで、その方の経過が非常に良く、
順調に過ごしておられるのを見て、
御自身も手術されることを決められました。 

この方も手術を浮かられることになりました。

手術後のレントゲン写真です。

膝の関節のアライメントが正常に近くなり、
膝がスムーズに動くようになりました。 

現在の膝の外観です。

手術痕もあまり目立たず、
痛みもなく順調に過ごされています。 

膝の曲がり具合も、非常に良く、
自力で曲げて120度近くまで曲がるようになっておられます。 

この良い状態を保つために、現在もリハビリを頑張っておられます。 

この方も、自転車をこぐ動作をされても問題なく膝が曲がっています。

日常生活でも、活動的な毎日を過ごしておられます。

膝が痛くて歩けないのでは、生活の質が低下します。

筋トレやアルロン酸注射や、装具療法など治療方法は色々ありますが、
それらを行っても痛みがとれない場合や、
歩くことに支障が出る場合には、
人工関節置換手術も治療の選択肢として考えてもいいのではないかと思います。

変形性関節症による膝の痛みでお悩みの方は、
ぜひ御相談ください。

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