骨密度を測定することは、骨粗鬆症と診断する上での一般的な検査です。
その数値は、若い人の骨密度を100%としたとき、骨密度が70%以下を骨粗鬆症と診断されます。
しかし、骨密度が、比較的高いのに関わらず脊椎圧迫骨折が生じるのはなぜでしょうか?
このページでは、骨強度に関与する骨密度以外の要因である
「骨質」についてご説明させていただきます。
強い骨を作るためには
骨の強度は、以下のような要素で保たれています。
強い骨を保つためには高い骨密度と良好な骨質が必要です。これを建物に例えると丈夫な建物が十分なセメントと良質な鉄骨で保たれていることと似ています。
骨粗鬆症の骨(鉄筋の建物に例えると)
骨粗鬆症の骨を鉄筋の建物に例えると以下のような図になります。
健康な骨は、鉄筋(コラーゲン)が規則正しい配列をしています。そして、コンクリート(カルシウム)が充実しているので、頑丈な構造を保っています。
一方で、骨粗鬆症の骨は、鉄筋が細く数が少ない上に錆びていて均一な配列が損なわれています。また、コンクリートは十分でないので、粗の部分があちらこちらにできて強度が弱くなっています。以上のように骨粗鬆症においてはカルシウムばかりを足して粗の部分を埋めたとしてもコラーゲンの部分が良質でないので結局強度は、上がらないままです。そこで骨粗鬆症の治療においては骨密度だけでなくコラーゲンで構成される骨質を上げることが重要になってくるわけです。
骨質に影響する因子
下の図は、骨強度が低下するメカニズムを示したものです。骨質に影響するものとして、生活習慣病があります。
骨質は加齢の影響を受けて徐々に低下しますが、そこに生活習慣病がさらに骨質を低下させる方向に影響します。生活習慣病には、糖尿病や脂質異常症などがありますが、不適切な食生活や生活習慣あるいは運動不足により体内でAGEs(最終糖化産物)と呼ばれる物質を蓄積することになります。そして蓄積されたAGEsは、コラーゲン架橋の異常を起こし骨質の低下に影響します。
最終糖化産物(AGEs)とは
上の図は、食事などで摂取した過剰な糖が最終糖化産物に変化する過程を示したものです。
上の図に示したように、AGEsは蓄積することにより、肌、骨、血管に影響を与えます。肌では、色素沈着し・しわ・たるみ・くすみの原因になります。また、血管では、動脈硬化になります。
骨では、本来はバネのような柔らかい結びつきによって弾力性を保っています。しかし、AGEsの蓄積が進むとコラーゲン繊維が、結ばれ、固く、もろくなり、弾力性が低下し、まるで枯れ木の枝のような状態になります。
上の図は、AGEsの蓄積を表した表です。加齢に伴い蓄積しますが、不適切な生活習慣や運動不足などでAGEsの蓄積が増大します。
以上のように骨の強度は、骨密度だけでの指標でははかれません。現時点では骨質を確実に測れる指標がありませんが少なくとも骨の強度に骨質が強く関与しているのはたしかです。骨密度が高いからといっても骨粗鬆症による脆弱性骨折の可能性はありますので、骨質を高めるように生活習慣を見直してみてください。