足の甲や足趾の表面が痺れるというご経験はありませんか?
皮膚の感覚を司る神経は、細かく枝分かれして、足指の末梢まで伸びています。
その神経が末梢へ延びる途中で圧迫を受けた場合に、足指の一部分だけがしびれるという症状が現れます。
これは「足の皮神経麻痺」
が原因であることが多いのです。
このページでは、一見、坐骨神経痛や末梢神経麻痺と間違われるような
「足の皮神経麻痺」について見ていただき、
靴が圧迫原因となった例をご紹介したいと思います。
足の皮神経の走行
以下の図は、足の甲や足趾に至る神経の走行を示しています。
浅腓骨神経は、
下腿の下3分の1あたりで
内側足背皮神経と中間足背皮神経へと
枝分かれします。
これらの神経は、
知覚を司る神経であるため、
足趾に力が入らなくなるような運動麻痺は生じません。
腓腹神経はふくらはぎの外側を通って足の外側まで降りていき、
一部は踵の外側を通ります。
この神経も知覚を司る神経なので、
ですので、
足趾が動かしにくいなどといった症状はありません。
下の図は足の甲から足趾をさらに詳しく見たものです。
靴による障害でよくみられる足の甲や足趾の痺れは、
右側の×印の部分で圧迫を受けることで、
浅腓骨神経の皮神経である内側足背皮神経に障害が出て、
青色部分に知覚低下が生じます。
左側の×印の部分で圧迫を受けると、
腓腹神経に障害が出て、
赤色部分に知覚低下が生じます。
浅腓骨神経麻痺が生じる原因となるもののほとんどは、
靴による圧迫が多く、
たとえば、ベルトや靴紐による直接的な圧迫や、ヒールによって足が前にスライドすることで
靴のエッジが食い込むことなどが多く見られます。
腓腹神経麻痺の場合は、以下の図で示した、
靴の履き口があたる外くるぶしの下で圧迫されることが多くの場合の原因です。
こういったケースでは、対処法として、
靴選びの指導を行い、圧迫原因を取り除くことで、痺れは徐々に取れていきます。
以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。
靴による浅腓骨神経麻痺
45歳の女性です。
左母趾MTP関節背側の痛みと痺れを訴えて来院されました。
5~6年前より、誘因なく痛む、靴を履いていると足の趾先がピリピリするとのことでした。
初診時の足を横から見た外観写真です。
×印の部分が靴を履くと痛い部分です。
また、指先の斜線部分のところは、知覚低下が認められました。
初診時に足を上から見た外観写真です。
赤色矢印で示した、痛みを訴えていた部分を叩くと趾先の斜線部分がピリピリとし、
実際の症状の再現が見られました。
何が原因なのかをつきとめるために、
普段履かれている靴などを次回来院時にお持ちいただくようにお願いしました。
写真は、再来院時に持ってきていただいた靴です。
これは、以前お仕事をされていたときに履かれていた靴だそうです。
ちょうど赤色矢印で示したところが、
先ほどの足の写真で示した×印の痛い部分と重なることがわかりました。
現在は、この靴はあまり履かれないという事でしたので、
今後どのような靴を選べばいいかというポイントをお教えしました。
21歳の女性です。
1週間前から、足趾がしびれることに気がついておられたそうですが、
毎日長時間の立ち仕事をしておられるため、我慢しておられました。
ところが、いよいよ仕事中、痛くて我慢できないため、来院されました。
上の写真にあるように、赤矢印で示したところをたたくと、
親指の斜線部分に痛みがでました 。
次に、実際に日ごろ履いておられる靴を履いてもらって、
しびれが出る状態を再現していただきました。
すると、サンダルのひもの部分が親指の付け根と小指の付け根を圧迫していました。
それが原因だろうということで、浅腓骨神経麻痺であると考えました。
原因となるサンダルを履いた状態でレントゲンを撮ってみますと、
ひもが関節の上にかかっていて、圧迫する状態になっていることがわかりました。
ヒールが高いので、より前重心になるため、
親指の付け根あたりにかかる圧迫が強くなることもわかりました。
原因が、サンダルにあることがわかったので、
サンダルを履くことを中止していただき、
様子をみていただくことにしました。
靴による腓腹神経麻痺
50代の女性です。
左の足の小趾の周辺がしびれるということで来院されました。
2ヶ月前から、思い当たる外傷がなくて、痛みが生じたそうで、
3週間前からは、歩くと痛みとしびれ感が強くなっていたそうです。
両足を比較してみると、
目立った腫れもなく、
斜線部分に痛みとしびれ感がありました。
詳しく見てみると、
足関節の外側の×印を付けた部分をたたくと、
しびれ感を訴えておられる斜線部分のところが
よりひびくと言っておられました。
このことから、外くるぶしの下を走る腓腹神経が、何らかの原因で圧迫を受けて、
小趾部分に痛みやしびれ感が生じているのではないかと考えました。
念のため、レントゲンを撮って足関節周辺の骨の異常がないかを確かめてみましたが、
骨には異常がありませんでした。
足関節の×印を付けた部分の周辺をエコーで確認したところ、
肥厚した腓腹神経が見えました。
外くるぶしの周辺で、何が原因で腓腹神経が圧迫を受けているのか原因を考えるために、
靴を履いていただきました。
すると、靴の履き口の部分が×印を付けた部分に当たっていることがわかりました。
角度を変えて、つま先立ちになり、蹴りだした状態の足の肢位にしていただくと、
×印のところが靴の履き口に乗ってしまうことがわかりました。
対処法として、
靴を変えていただき、
×印のところに圧がかからないように
パッドを当てて除圧しました。
こうすることで、痛みとしびれ感が緩和されました。
足の痺れ感が生じたときは坐骨神経痛であると判断される場合がありますが、
よく原因を突き止めていくと足背皮神経の麻痺であるということがあります。
足背皮神経や腓腹神経は知覚を司る神経なので、
足趾や足首に力が入らなくなったりするという事はありません。
足の趾の感覚の一部がおかしいなと思ったら、足の皮神経麻痺を疑ってみて下さい。