小さな関節への注射も工夫しています!

指の付け根や、手首など小さな関節への注射の場合、
関節腔が小さいので薬液の注入によって急に関節の内圧が高まることで強い痛みがでます。

そこで、当院では、あらかじめ関節の皮下へ細い針を使って局所麻酔をすることで、無痛の関節注射を行っています。

以下で、その実際を御紹介いたします。

〜症例1〜

65歳の男性です。

右の変形性肩鎖関節症の方です。

右肩の痛みを覚えて、腕を上にあげることが不可能になったので、来院されました。

圧痛は写真の×印のところに認められました。

レントゲン写真では、肩鎖関節の形状が少し変形していました。

この部分へ直接注射を行うと、急に関節腔の内圧が大きくなるため、痛みが大きくなる恐れがあります。

そこでまず、肩鎖骨関節の正中側の皮下に局所麻酔をして、関節部の麻酔効果を得るために数分待ちました。

そして、麻酔を行ってから5分後に関節内に痛み止めの注射を行いました。

このように、あらかじめ皮下に麻酔をすることで、痛みのない注射を行うことができました。

〜症例2〜

48歳の女性です。

左親指の付け根の痛みを訴えて来院されました。

ビンの蓋をあけたり、タオル絞りなどで痛みを覚えるようになったそうです。

こちらの写真の×印で示したように、母指CM関節部に腫脹と圧痛が認められました。

レントゲン写真でも、変形性関節症が確認できました。 

痛みが強く、日常生活にも支障が見られるので、当座の痛みをとる目的で、痛み止めの注射をすることにしました。

CM 関節は関節腔が小さな関節なので、まずは中枢側の皮下に27ゲージの注射針で麻酔剤を注射しました。

数分待機した後、今度はCM関節に痛み止めの注射をしました。

前もって麻酔をしておいたため、無痛で注射ができました。

その後、リハビリとして装具療法を並行して行ったところ、
痛みは軽快しました。 

〜症例3〜

17歳の男性です。

野球部に所属していて、転倒した時に手をついてから、急に左手首が痛くなり、来院されました。

手関節を小指側へ倒す動作や、前腕をねじる動作で痛みが増強し、写真で示した×印のところが痛むということから、TFCC損傷だと考えました。

部活動もあるので、痛みを少しでも和らげ、活動できるようにするために、関節腔への注射を試みました。 

まず、TFCCの中枢側の皮下へ局所麻酔を行いました。

その5分後、TFCC部にステロイド注射を行いました。

前もって皮下に麻酔を行っていたので、狭い関節腔への注射を行っても、痛みは全くありませんでした。 

その後、手関節装具を装着することにより痛みは消失しました。 

小関節への注射をする場合、注射剤によって関節内圧が高まって痛みが出やすいため、
前もって麻酔をしておくことで、痛みを感じずに注射を受けていただけます。

さらに、急な疼痛が生じたことによる疼痛性ショックを避けることができるという利点もあります。

このようにして、当院では患者さんにとって優しい治療を試みています。

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