
指尖部の痛みを訴えて来られる患者さんの中には事前に当院のホームページをご覧になってグロームス腫瘍ではないかと思い来院される方があります。しかし、診察をさせていただくと実際には違う疾患であったということもあります。そこで、実際に当院でグロームス腫瘍に似た症状の患者さんの例をご紹介します。
アテローマ
この疾患は表皮の老廃物や垢が皮膚内部(真皮)に溜まって炎症を起こし痛みを誘発します。ですので、腫瘍には分類されませんが皮膚表面から腫瘤を触れるため、軟部腫瘍と間違われることがあります。アテローマは肩甲背部や腋窩など指尖部に限らずみられます。指尖部では指腹部や爪下部でみられ、患部の圧痛を認めます。また、爪下部で発症している場合は爪の変形がみられる場合もあります。以下で実際の症例をご覧いただきたいと思います。
59歳の男性です。左母指爪の変形と痛みを訴えて来院されました。1年前より爪が割れてきたことをが気になり、他院を受診してMRI撮影をされたそうです。その際は腫瘍があると言われ、セカンドオピニオンを求め当院へ受診されました。

上の写真は当院での初診時の外観写真です。母指爪部の変形を認めます。

上の写真は当院での初診時のレントゲン画像(左写真)とエコー画像(右写真)です。エコー画像では末節骨基部直上に血管の増殖像を確認できます。(赤丸印)

上の写真は他院で撮影されたMRI画像です。MRI画像上では、母指末節骨上で不均一な高信号領域を認めますが、主要組織ではないとの診断でした。(赤丸印)

上の写真は当院で行った手術時のものです。摘出した組織を検査に出したところ、アテローマであるという返答結果でした。
神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
この疾患は神経鞘細胞の増生により発生する良性の軟部腫瘍です。神経のそばに発生するのでエコー画像では、腫瘍と連続する神経束がみられる場合があります。好発年齢は20〜50歳とされ、好発部位は四肢、体幹、頚部の順に多いとされています。症状は患部を叩打すると放散する電撃痛がみられます。以下で実際の症例をご覧いただきたいと思います。
51歳の女性です。右示指指腹部の痛みを訴えて来院されました。3年前より指先の痛みと腫瘤を触れることが気になっていましたが、徐々に痛みが強くなるため物をつまむ動作に支障をきたしていたそうです。3軒の医療機関を受診されましたが、原因が不明であると言われたので、当院のホームページを見て来院されました。
上の写真は当院での初診時の外観像です。ペン先の部分に強い痛みを訴えておられました。

レントゲン写真では特に骨の異常所見はみられませんでした。(左写真)エコー画像では指腹部に腫瘤像が確認できました。(右写真の赤丸印)

MRI画像では、エコー画像で確認した腫瘤像は境界明瞭の組織として輝度変化を認めました。

上の写真は当院で行った手術時のものです。摘出した組織を検査に出したところ、神経鞘腫であるという返答結果でした。
平滑筋腫(へいかつきんしゅ)
この疾患はその名の通り、平滑筋から腫瘍が生じます。発生する部位によって、血管平滑筋腫、皮膚平滑筋腫、外陰部平滑筋腫などに分類されます。中でも、血管平滑筋腫は疼痛が強く、30〜50歳が好発年齢とされています。男女比は2:3と女性に多く、好発部位は下肢、上肢、頭頚部、体幹の順に多いとされています。症状としては冷えると痛みが増強する特徴があります。
71歳の女性です。左中指の指腹部が痛むということで来院されました。20年前よりものが触れると痛みが出現し、他院ではガングリオンという診断でした。

上の写真は当院での初診時の外観像です。指腹部(点線で囲んだ部分)に圧痛を認めました。

レントゲン写真では骨の異常所見はありませんでしたが、左中指指腹部に腫瘍陰影を認めました。(左写真の赤矢印部分)エコー画像では、直径約6mmの腫瘤像を確認できました。(右写真の赤丸印)

MRI画像では、腫瘍の中心部に小さな結節像を認めました。この所見からはグロームス腫瘍は否定できませんが、輝度変化の程度を考えると他の腫瘍も疑われました。

上の写真は当院で行った手術時のものです。摘出した組織を検査に出したところ、血管平滑筋腫であるという返答結果でした。
以上のように指尖部での強い痛みを主訴として、患部に腫瘤を触れる場合には上記の良性軟部腫瘍が疑われます。いずれもグロームス腫瘍とよく似た症状を呈するので、画像検査等でしっかりと見極める必要があります。指先の痛みでお悩みの場合は近くの整形外科へ受診することをお勧めします。