手の指が曲がったり、関節の一部がコブのように腫れてしまうことがあります。
しかし、この指の変形を見て、関節リウマチと思って来院される方もあります。
今回このページでは指の変形性関節である「ヘバーデン結節」と「ブシャール結節」についてご紹介したいと思います。
ヘバーデン結節
ブシャール結節
指の第2関節(PIP関節)が赤く腫れたり変形したりします。
いずれの指の変形も、曲げ伸ばしの際に痛みが生じたり、
動きの制限が出てきますが、朝のこわばりはありません。
朝のこわばりがないという点や、
指の付け根や手首などの関節が破壊されてくる点が見られないのが
ヘバーデン結節、ブシャール結節の特徴です。
この図はヘバーデン結節の外観からみたイメージです。
指の第1関節が腫れています。
腫れた部分がどんな状態になってるのかを示したものが、右側のレントゲン写真です。
赤い○で囲んだ部分が関節症になっています。
他の関節に比べ、隙間がなくなっており、骨の部分が白く強調して写っています。
こうなってくると、関節を曲げ伸ばしするときに痛みが発生します。
ヘバーデン結節は全部の指の関節に出るとは限りません。
手を良く使うと痛みが出て不具合を感じ、しかも腫れるので、関節リウマチではないかと思ったりされる方もいらっしゃいます。
また、第1関節の上に水ぶくれのようにミューカシストができる場合もあります。
正常な状態の指と比べると、運動制限が見られます。
指を全部曲げグーのようにしようとすると、痛みが出ます。
また、強く握ることができない場合も在ります。
しかし、関節リウマチに見られるようなこわばりとは違います。
明らかな原因は不明なのですが、一般には40歳以上の方に多く発生しています。
急に指を使うことになると、痛みで悩まされるので、関節リウマチではないかと心配して来院される方が多いのですが、実はまったく違う病気です。
以下で、実際の症例を御覧頂きたいと思います。
〜症例1〜
62歳の女性です。
左人差し指の関節の変形のため、買い物での支払いのときに手を出すのが恥ずかしくてつらいと訴えてこられました。
外観上は結節が生じており、見た目にもすこし指が変形したように写っています。
しかし、痛みがあるわけではありません。
レントゲンを撮ってみると、左の関節の中に明らかに棘ができていて、指を曲げると完全に曲げきることができませんでした。
良い方の指と比べると関節の隙間がなくなっていることがわかります。
これらのことより変形関節症であるとわかります。
〜症例2〜
次は47歳の女性です。
右手の人差し指から小指までの第1関節が腫れて、変形があるので来院されました。
特に小指の腫れが気になって相談にこられました。
しかし、痛みはありませんでした。
外観上、ミューカシストと呼ばれるふくらみができていました。
レントゲンを撮ってみると、やはり右手人差し指から小指までの第1関節の隙間が狭くなっており、 変形関節症になっているとわかりました。
横から見たレントゲンでも、小指の関節の隙間の消失は明らかでした。
この方には、痛みはないということなので、そのまま経過を見ても良いですよとお伝えしました。
さらに、右小指だけシーネ固定をして腫脹が消失するのを待ちました。
〜症例3〜
次はブシャール結節の方をご紹介します。
68歳の女性です。
左の薬指の腫れが気になって来院されました。
他の指には明らかな腫れは認められず、特に強い痛みもありませんでした。
レントゲンを撮ってみると、左の薬指の第2関節の部分は骨の棘が出ていて、変形性関節症の所見が見られました。
左右を比べてみると、関節の隙間が狭くなって、軟骨が磨り減っていることがわかりました。
特に痛みが無ければそのまま経過を見ても問題ないことをお伝えしました。
〜症例4〜
79歳の女性です。
左の中指と薬指の変形と痛みを訴えて来院されました。
この方は関節リウマチの既往は無かったのですが、多数の指の変形が生じてきたので心配になって来院されました。
指を輪にしてみると、左中指・薬指以外にも運動制限が見られました。
レントゲンを撮ってみると、明らかに左の中指と薬指の変形が見られました。
この方への日常生活への指導としては、人差し指に巻いてあるようなテーピングを施して、運動制限をして痛みが発生しないようにしました。
ヘバーデン結節・ブシャール結節は関節リウマチとは違います。
ですので、それほど心配なさらなくても良いのです。
この2つの病気で一番の問題点は見た目です。
しかし、痛みなども無く、見た目を気にしなければ、さして日常生活で問題になることはありません。
また、曲げ伸ばしで痛みがある場合はテーピングを行って対処することもできます。
指が変形してきて関節リウマチではないかと心配になった場合には、
まずは整形外科で関節リウマチであるのか、
それともヘバーデン結節やブシャール結節なのか診断をしてもらってください。
どんな病気でも、その病に合った対処を行うことが
苦痛を早く軽減するポイントです!