お子さんが足の裏の痛みを訴えて来院されるとき、「足裏の前の方が痛い」という訴えがあるとすれば、
この「Freiberg病」を疑います。
一般的に、思春期の女性に発症することが多いとされていますが、
それ以降に発症することもあります。
比較的稀な疾患で、最初はレントゲンを撮ってみても写らず、何の病気かわかないことが多々ありますが、
痛みが続いていて、後にレントゲンを撮ってみると、骨の変化が発見されて「Freiberg病」であるとわかるという場合もあります。
このページでは、以下で「Freiberg病」」についてご説明したいと思います。
Freiberg病とは?
Freiberg病とは、中足骨頭に繰り返される圧迫力が働き、骨頭部で壊死を起こした状態をいいます。
上の図のように、発生部位は第2中足骨頭に多く見られます。
次いで、第3中足骨頭に多く発生すると言われています。
発症のメカニズム
上の図は足の裏を見たものですが、中足骨頭は上の図の水色の部分で示してあります。
お子さんの場合、中足骨頭のほとんどは成長軟骨で構成されているので、
組織的に外力を受けたときに、弱い部分であると言えます。
上の図は、蹴りだし時の中足骨頭部付近の図です。
足の付け根の関節が最大反りかえる状態になる場面では、基節骨から第2中足骨頭部に対して圧迫力がかかります(水色矢印の方向)。
この状態をスポーツによって繰り返したり、ヒールの高い靴を履いて上の図のような姿勢を繰り返すことがあれば、
中足骨背側部にわずかな軟骨損傷がおきます。
さらにそれが続くと、血流障害が生じ、骨頭壊死の状態に陥ります。
このようなメカニズムでFreiberg病が発症すると考えられています。
なぜ第2・第3中足骨部にFreiberg病が多いのか?
以下の図は、立っているときの足を前から見て、中足骨頭部の位置を示しています。
足の横アーチを形成しています。
上の図では、第2・第3中足骨骨頭部は横アーチの頂点になっていて、
体重を支える重要な役割をしています。
体重がかかると、以下の図のようになります。
体重がかかると、大きく横アーチは沈み込み、中でも第2・第3中足骨頭にかかる床反力は他の骨頭部に比べて大きくなります。
そこへ、蹴りだし動作で指の付け根が反りかえると、さらに第2・第3中足骨頭部に圧迫力がかかります。
この動作が繰り返されることで、第2・第3中足骨頭部にFreiberg病が多く発生すると言われています。
Freiberg病の分類
以下の図は、Freiberg病の分類を示しています。
ステージが進行するにつれて、骨頭軟骨の損傷程度が拡大していきます。
また、治療法もそれぞれ異なってきます。
StageⅠ
軟骨下骨の微小骨折
StageⅡ
骨頭の圧壊による関節面の平坦化
StageⅢ
骨頭の圧壊が進行し、骨性の隆起が生じる
StageⅣ
骨性隆起が骨折し、遊離体となったもの
StageⅤ
骨頭の完全な平坦化
このように、分類して、治療の選択に役立てます。
治療法については、以下でまたご説明したいと思います。
画像診断
画像診断では、レントゲンやMRIが有効とされています。
当院では、エコー検査も合わせて行っております。
レントゲン画像による診断
レントゲンでは、骨の状態を確認し、
骨頭が変形していないかを確認します。
左のレントゲン画像は、StageⅡのレントゲン画像であり、
赤丸印の第2中足骨頭の扁平化が見られます。
MRI画像による診断
レントゲンでは軟骨などがはっきりと描写できないため、
MRIを撮影します。
左のMRI画像では、StageⅡの画像です。
左のMRI画像は足を上側から見ているものです。
右側のMRI画像は足を輪切りにして見ているものです。
赤矢印で示した第3中足骨頭には輝度変化が見られます。
このように輝度変化が見られる原因は、栄養障害が起こっているからです。
エコー画像による診断
エコーでは、リアルタイムで中足骨頭部の状態や、
軟骨の状態を詳細にみることができます。
左の図のエコー画像は、健側の第3中足骨頭部のエコーと、
患側の第3中足骨頭のエコー画像です。
矢印で示している、低エコーの部分が軟骨を示しています。
健側の軟骨と比較してみることで、
患側の軟骨の厚みがまだ残っていることがわかり、
修復の可能性もうかがえます。
以上のような検査を行い、治療方針を決めていきます。
Freiberg病の治療について
Freiberg病の治療は、StageⅠ~Ⅱは保存療法が選択され、StageⅢ~Ⅴは観血療法が選択されると言われています。
保存療法の目的は、繰り返される圧迫力を軽減することが重要です。
そのため、足底板などを処方して、罹患部位にストレスが加わらないようにして、経過を見ます。
以下の図は、足底板の例です。
これは、足の横のアーチをサポートするために使用します。
そうすることで、体重をかけたときのアーチの沈み込みが減少し、中足骨頭部にかかる圧迫力が軽減されます。
このように、保存療法を行い、定期的にレントゲン撮影をして経過を見ます。
観血療法は、外科的手術によって破壊された関節を形成する手術(骨切り術)などを行います。
以下で実際の患者さんについて見ていただきたいと思います。
左のレントゲン写真は成人の方の前足部です。
赤い丸で囲んだ部分が他の中足骨頭の形状に比べて平坦となり、
シャープさが無くなっていることがわかります。
さらに、骨頭のすぐ下では、「骨硬化」像という帯状の白い線が見られます。
この例では、小児ではなく、成人の方のFreiberg病ですが、
以前に発症していて、気がつかないまま成人して、
足が痛くなって、レントゲンを撮ってみると、
Freiberg病であったということがわかりました。
第2中足骨頭の変形の度合いは左右の足部を比較することでわかります。
別の角度からレントゲンを撮ってみると、
青色矢印の先で示した右足の第2中足骨頭は丸みを帯びていますが、
赤色矢印の先で示した左足の第2中足骨頭は平坦に写っています。
処置としては、主に保存療法が選択されます。
中足骨列を支えて、第2中足骨頭にかかる負担を軽減するために、
足底板療法を行います。
7歳の男性です。
この方は右第3中足骨頭部の痛みを訴えて来院されました。
レントゲンを撮ったところ、第3中足骨頭部が圧壊していることがわかりました。
向かって左の写真は足を上から見たものです。
また、右の写真は正面から足を撮影したMRIの画像です。
第3中足骨頭部の赤色矢印で示した部分に輝度変化が認められます。
また、エコー検査を行うと、健側のエコーの軟骨層に比べ、
患側のエコーでは、軟骨層に厚みがあり、
保存療法によって修復の見込みがあると考え、
保存療法を行いました。
左のレントゲンは初診から約1ヶ月後のものです。
この時点で、痛みは消失していました。
レントゲン画像で圧壊の進行は認められませんでした。
初診から4ヶ月後のレントゲンです。
第3中足骨頭の修復が確認できます。
約1年後のレントゲン画像です。
第3中足骨頭部の圧壊は消失し、
この時点で、日常生活での痛みや支障は消失していました。
Freiberg病の予後や治療法は、病気によって変わってくるので、
できるだけ早期に発見できれば、修復の可能性は十分あると考えられます。
ですので、お子さんが足の痛みを訴えて、体重をかけるのに躊躇しておられるような場合は、
早めに整形外科を受診されることをお勧めいたします。