上腕骨内側上顆骨端線離開 または 上腕骨内側上顆骨折

       子供さんの肘周辺に生じる骨折の多くは、転倒によって手をついて怪我をする場合と、

投球動作を繰り返すことによって生じる場合の2種類があります。

このページでご紹介する上腕骨内側上顆骨端線離開(上腕骨内側上顆骨折)は、いずれの受傷機転でも起こります。

                          重症度が高ければ、手術になりケースもありますが、ほとんどが骨端線部分での損傷が多いので、

ギプス固定で治癒する場合がほとんどです。

以下で、上腕骨内側上顆骨端線離開(上腕骨内側上顆骨折)についてご紹介したいと思います。

上腕骨内側上顆ってどこ?

上腕骨内側上顆は肘の内側の隆起した部分のことを言います。

上腕骨内側上顆には手首をまたいで前腕に沿って走行する手首を曲げる筋肉群が集まっています。

深部には、内側側副靭帯が付着していて、肘関節の側方動揺をおさえています。

このように、上腕骨内側上顆には重要な組織が集まっていて、骨折や脱臼などによって傷ついた場合には、
後に肘の不安定性が生じることもありうるので、注意が必要です。

上腕骨内側上顆骨折の分類

上腕骨内側上顆骨端線離開(上腕骨内側上顆骨折)は8~17歳に多く見られ、中でもピークは11~12歳と言われています。

この年代では、骨端核の出現から骨端線が閉鎖するまでの年齢に一致するので、

本骨折は、Salter-Harris分類のタイプⅠ型の骨端線離開と同じ型が生じます。

それを分類したものが以下の図になります。

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Ⅰ型 : 骨片の転位がほとんどない。

Ⅱ型 : 骨片の転位が5mm以上ある場合。

Ⅲ型 : 関節内に骨片が入りこんでいる場合。

Ⅳ型 : 肘関節の脱臼を伴い、骨片が関節内に入り込んでいる場合

 

以上の分類で、Ⅰ型が多く見られ、ギプスによる固定で治ります。

稀に転位が大きい場合には、手術を選択する場合もあります。

上腕骨内側上顆骨端線離開(上腕骨内側上顆骨折)
の発生メカニズムと受傷機転

上腕骨内側上顆には、手首を曲げる屈筋群が付着しており、
何らかの原因で、強い牽引力がこの部分に加わると、
脆弱な骨端線の部分で離開が起こります。

上腕骨内側上顆骨端線離開(上腕骨内側上顆骨折)の発症には、大きく分けて2つの受傷機転があります。

外傷による骨折

転倒によって、肘関節を伸ばしたまま、
手首が背屈した状態で手をつくと、
   肘に外反力が生じ、内側上顆粒に付着している
前腕の屈筋群の牽引力が生じ、
内側上顆に骨折が起こります。

投球による傷害

投球動作により、
肘関節内側の伸張が繰り返されることで、
手首を曲げる屈筋群の牽引力が
骨端線部にかかり、離開が生じます。

 

受傷機転には上記の2つの場合がありますが、
どちらも、ほとんどの場合はギプスによる固定で治癒することが可能です。

 

以下で、実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。

6歳の男の子です。

右肘内側の痛みを訴えて来院されました。

昨日、通っている体操クラブでバク転をして、
右手をついたとき、肘が痛くなったそうです。 

受傷時、ボキッと音がし、その後腫れて痛むという事でした。

左のレントゲンは、初診時のものです。

左右比較したところ、異常は見られませんでした。

しかし、痛みが強いので、骨折も疑い、ギプスによる固定を行いました。

左のレントゲンは、受傷後1週間のものです。

骨折の有無を確認するため、レントゲン撮影を行いましたが、
特に異常は見られませんでした。

しかし、痛みが継続していたので、
再びギプスによる固定をあと2週間継続することにしました。

ギプス固定を合計3週間行い、リハビリを行っていましたが、
なかなか痛みが取れないため、再度レントゲン撮影を行いました。

左のレントゲンは受傷後約2ヵ月のものです。

レントゲンで黄緑の矢印で示す部分に仮骨が見られたことから、
上腕骨内側上顆骨端線離開であったことが確認できました。

肘の側方動揺性を確認するため、ストレス撮影を行いました。

上腕骨内側上顆の骨端線部の離開は見られず、
安定していることが確認できました。

引き続きリハビリを行う事で、
上腕骨内側上顆部での圧痛も消失し、治癒しました。

15歳の男性です。

右肘内側の痛みを訴えて来院されました。

腕相撲をしていて、突然肘に痛みが出現したとのことです。

他院で、骨折は無いと言われ、経過を見ていましたが、
痛みが引かないため、受傷2週間目に当院を受診されました。

左の写真は初診時のものです。

赤色矢印の部分に、痛みを訴えていました。

レントゲン撮影を行ったところ、
右上腕骨内側上顆の骨端線が離開しており、
骨片の転位が認められました。

骨片が下方に転位しており、手術適応と判断しました。

左のレントゲンは手術前と手術後のものです。

手術は骨片を整復位に保持するため、ネジによる固定を行いました。

このように、転倒して手をついたり、野球などによる受傷機転ではなく、
自家筋力によって生じる場合もあります。

10歳の男の子です。

受診当日の朝、キャッチボールをしていて急に痛くなったそうです。

左の写真は初診時の外観写真です。

赤色矢印の部分に痛みを訴えており、圧痛もありました。

初診時には、可動域制限も認められ、
左の写真のように完全に肘を伸ばすことができなかったり、
完全に曲げることもできない状態でした。

左のレントゲンは初診時のものです。

赤色矢印で示した上腕骨内側上顆骨端線部に
著明な骨片の転位は認められませんでしたが、
圧痛が同部位に存在したため、
上腕骨内側上顆骨端線離開と判断しました。
 
痛みが強かったので、2週間のギプス固定を行いました。

左のレントゲンは受傷後2ヵ月のものです。

可動域制限と骨端線部の圧痛が消失していたため、
治癒と判断し、スポーツ復帰を許可しました。

 

先にご紹介した上腕骨内側上顆骨端線離開(上腕骨内側上顆骨折)の一例にもあったように、
骨端核が出現していない年齢では初診時のレントゲン画像では骨片が写らない場合もあります。

肘関関節の腫れや、圧痛の場所、受傷機転など所見を総合して判断し、
本骨折の存在も念頭に入れて、治療に当たることが大切です。

この骨折に限らず、子供さんの肘関節のことでお悩みの場合には、
当院までご相談ください!

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