日頃の生活の中で、必ず動作として出てくるのが、椅子からの立ち上がりではないでしょうか?
椅子といっても、テレビを見るときに使うような座イスから、テーブルで食事をするときの椅子、
あるいはお風呂の際に身体を洗う時に座っているシャワーチェアーなど、椅子の高さはまちまちです。
このように違った高さの椅子であっても、立ち上がる時の動作は、基本的には同じです。
このページでは、立ちあがる動作が楽にできるようにするために、
どんなことをしたらいいのかについて、ご紹介したいと思います。
立ち上がり動作に必要な条件
日頃何気なく椅子から立ち上がる動作ですが、
筋力があるうちは、少々無理な体勢からでも力に任せて立ち上がることができますが、
段々と筋力が衰えてくると、思うように立ち上がれないという場面が出てきます。
実は、立ち上がるときには以下の3つの動作をすることで、楽に立ち上がることができます。
では、どういう手順で立ち上がり動作を練習するのかというと・・・。
三段階に分けた立ち上がり動作
まずはじめに、①のように足を手前に引くという動作を行います。
足を引くことで、立ち上がる際の力を床に強く押し付けるような力が働くようになります。
特に、太ももの前面に堅く触れる大腿四頭筋が収縮することで、立ちがり動作は可能となります。
その張力を生かすためにも、足を引いて膝をなるべく深く曲げていくことが大切です。
次に②のように、前かがみになるということです。
立ち上がることができなくても、まずは前かがみになる動作を練習することで、
重心の位置を変える意識が持てるようになります。
たとえば、物をとろうとして手を伸ばす動作は、自然と前かがみになりますので、
身体を前に誘導していく意識づけになります。
そうやって、意識するだけでも、椅子から立ち上がる時の前かがみ動作の導入になります。
次に③のようにお尻を浮かせます。
自力で難しい場合は手すりを使うとか、介助してくださる方に助けてもらうことでスムーズに立ち上がることができます。
安定した立ち上がり動作を獲得するためのエクササイズ
利用者さんが実際にやっておられる場面を見ていただきたいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=hj2X0gaAqqk
上の動画のように、足をひかずに立ち上がった場合は、一見簡単そうに立ち上がったとしても、
立位姿勢は不安定で、後方に重心が残っているので、再び座り込んでしまうような状態になります。
そこで、「足を引く」「前かがみになる」という2つを唱えながら、
もしくは、周りのスタッフが声かけをしながら練習していただきます。
https://www.youtube.com/watch?v=z5PGHKqE_vU
上の動画のように、初めは今までの習慣で、足を引く動作がスムーズにできませんが、
繰り返し意識していただくことで、徐々にできるようになってきます。
https://www.youtube.com/watch?v=xvWQTg0hoag
最終的に、手すりに頼ることなく、立ち上がることができるようになっておられます。
なかなか立ち上がれなくても、大丈夫!
日常の生活動作で、自然とこういった形の立ち方が身についてしまっていませんか?
確かに立ち上がるという動作という点では、完成されていますが、身体の特定の部分に余計な負荷がかかってしまったり、
思わぬ怪我につながってしまうようなこともあります。
以下の動作がどういうところに負担がかかっているのかをご説明し、
どう修正するかをご紹介していきます。
椅子を押して立ち上がるパターン
上の写真にあるように、足を引かないままだと、腕ばかりに力が入ってしまい、効率よく力を使う事ができません。
また、足が引けていないので、たとえお尻が浮いても、前に推進する力が働きません。
そこで、以下の動作を反復して練習していただくと、楽に立ち上がることができるようになります。
この動作を思えていただけば、椅子の高さが変わってもスムーズに立ち上がることができます。
お出かけ時など、日頃と違う高さの椅子から立ち上がる時でも、安心です!
片方の足にしか力が入らなくても大丈夫!
立つ動作は両足に均等に力が常にかかっているとは限りません。
病気で左右のいずれかの足に力が入りにくかったり、お風呂などで床がぬれているなど、条件も色々あります。
そういった場合には、片方の足だけを引いて立ち上がるという方法もあります。
以下の動作は、腕に力が入っている場面です。
手すりを引っ張って立ち上がるパターン
上の写真にあるように、健側の腕の力に頼った立ち方では、片側に力が入っているので、
患側の足が不安定な状況に陥りやすいものです。
そこで、片足を引く動作を加えることで、安定した立ち上がり動作が得られます。
上の写真のように、患側の足を手前に引いた後に、前かがみになって立ち上がると、
患側の筋力も使いつつ、重心の位置が安定するので、立ち上がり動作がスムーズにできます。
実際に取り組んでいただいた利用者さんの様子を以下でご紹介します。
https://www.youtube.com/watch?v=mVz_J66XwjA
上の動画にあるように、一見立ち上がり動作ができて、良かったように見えますが、
立ち上がったときの立位姿勢は不安定で、右手で手すりを持っていますが、
後方に重心が残っているので、再び座り込んでしまうような状態となります。
https://www.youtube.com/watch?v=zVb2ks33gGk
そこで、力の入りにくい左側の足を少し手前に引いてから、立ち上がっていただくと、
腕に頼らなくて済むので、スムーズに立ち上がることができるようになります。
立位姿勢も手すりを持つことなく、安定して立つことができています。
このように立ち上がり動作は、繰り返し動作を行う事で、習得が可能です。
このエクササイズをより効果的にできるようになるために、以下の筋力トレーニングも並行して行うことをお勧めします!
立ち上がり動作につながる運動
スクワットエクササイズ
チューブエクササイズ(大腿四頭筋)
ヒールスライド
チェアスタンド
足関節周囲のエクササイズ
https://www.youtube.com/watch?v=ergAx5E9Kg4
足を手前に引き寄せたくても、足関節の可動域が十分でないと、手前に足を引き寄せることができません。
そこで、足関節周囲の柔軟性を保つために、上の動画のようなエクササイズを行います。
立ち上がり動作は、日常のいろんな場面で出てきます。
基本的な動作さえ身につけておけば、起き上がりにくい場面ができたとしても、
応用で立ち上がることができるようになると思います。
立ち上がれないといってあきらめずに、
もう一度立ち上がれるようにチャレンジしてみませんか?
介護するご家族も、立ち上がることができるだけで、だいぶ楽になりますよ!