踵骨下滑液包炎

踵骨の底にはクッションの役割をするやわらかい組織がありますが、
裸足で踵に衝撃が加わり続けるとか、
靴の底で踵に衝撃がかかり続けることで炎症を起こしてしまうことがあります。

踵をついたときに痛みがあるとき、「踵骨下滑液包炎(しょうこつかかつえきほうえん)」である場合があります。

以下で、踵骨下滑液包炎について御覧いただきたいと思います。


踵骨には足底腱膜が付いています。
足底腱膜の繰り返す牽引力などにより、踵の底では反応性の骨の増殖が見られるようになります。
これを「踵骨棘(しょうこつきょく)」といいます。
この踵骨棘があるからといって、必ずしも踵の痛みの原因になるわけではありません。
しかし、それだけ踵の底に刺激が加わっているのだということがわかります。
その刺激を吸収し、緩衝材の役割を果たしているのが「しょう液性粘液嚢(ねんえきのう)」とよばれる組織です。

この「しょう液性粘液嚢(ねんえきのう)」は踵の底周辺に存在しています。

本来、踵骨下滑液包と呼ばれる組織は存在しませんが、
踵の底にあるクッションの役割をする軟部組織が繰り返す刺激によっては、炎症を起こしてしまいます。

これが踵の裏の痛みの原因であると考えられます。

治療としては、踵の骨の衝撃を和らげたり、負担のかかる部分の圧を軽減するために、
下の図のように足底板に穴を開けたものを使ったりします。

実際の症例

〜60歳 男性〜

60歳の男性です。

右の踵の腫れと痛みを訴えて来院されました。

痛くなったか所を詳しく確認すると、踵の裏の部分に押さえると痛い場所が ありました。
(×印の部分)

レントゲンを撮ったところ、特に異常所見は見当たりませんでした。

エコー検査をしてみると、踵骨の周囲に炎症を疑う領域が確認できました。
(赤色矢印の先の部分)

健側のエコーには、特に問題は見られませんでした。

患側と健側の画像を比べてみると、状態の違いがよくわかります。

このことから、踵骨下の滑液包炎と判断し、足底板を入れて処置しました。 

〜66歳 女性〜

次は66歳の女性です。

左の踵の痛みを訴えて来院されました。

痛みのある個所に規制の足底版をくりぬいて、痛い部分が靴底に当たらないように処置をしました。 

〜70歳 男性〜

70歳の男性です。

3週間前から、体重をかけたとき、左踵が痛くなったということで来院されました。

特に、歩き始めがつらいそうです。 

来院時には、左踵の周囲が赤く腫れていました。

足の底を見ると、×印がついた所に痛みがありました。

左踵のレントゲンを撮ってみると、踵骨棘が確認されました。

ところが、症状の出ていない右足にも踵骨棘がありました。

両足に踵骨棘があるのに、左だけに症状が出ているのは

どこに原因があるのかを確かめるために エコー検査を行いました。

左の踵の踵骨棘周辺に黒く炎症を起こしている画像が見えました。

治療としては、炎症を起こしている部分の圧を逃がすために、

足底板に穴をあけて、痛い部分が当たらないように処置しました。

そうすることで、痛みも和らぎ、症状も消失しました。 

踵骨下滑液包炎は足底板を入れて処置し、
経過を見ることでほとんどの場合治ります。

なかなか、治らない場合には靴を変えたり、
足底板の形状を変えることを行います。

このように対処のできる疾患ですので、
踵の痛みでお悩みの方は、
我慢せずに整形外科を受診されることをお勧めします!

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