足首の捻挫と思っていたら骨折だった!(腓骨遠位端骨折)

足関節の捻挫は子どもさんから大人の方まで良く見られる疾患ですが、
実は、捻挫だと思っていて、レントゲンを撮ってみると骨折であるというケースがよくあります。

その骨折は、外くるぶしのところの骨である腓骨の遠位部(端の方)で起こります。

このページでは、実際レントゲンで確認できた腓骨遠位端骨折の例を御紹介します。

そして、同じ骨折でも、子どもさんの場合と、大人の方の場合では、
違いがあるのだということについて見ていただきたいと思います。

では腓骨遠位部とはどこなのでしょうか?

下の図は、足を外側から見た絵です。

腓骨は足の外側にあってその一番端には足首を内側にひねって捻挫するときに損傷することの多い前距腓靭帯がついています。

内側に足首をひねった際には、下の絵にあるように、
前距腓靭帯に引っ張られるような形で腓骨の遠位端(腓骨の端)はがれてしまいます。

これを腓骨遠位端骨折といいます。

下の写真は実際に腓骨遠位端骨折の患者さんが来院されたときの写真です。

御覧の通り、外くるぶしのところが腫れていて、
赤矢印で示した部分を押さえると痛みがあり、
外見上、捻挫のように思われます。

しかし、体重をかけると痛かったり、内出血の具合などを考えると、
腓骨の遠位端部の骨折も疑わなければなりません。

そこで、レントゲンを撮ってみると・・・。

上の図にあるように、子どもさんの足首のレントゲンの写り方では、
骨端線と呼ばれる成長軟骨の線が残っています。

その骨端線よりもさらに先に、骨折線が生じます。

お子さんの腓骨遠位端部は骨とはいえ、
まだ未熟な何個成分が多いので、捻挫のような外力が加わると、
前距腓靭帯によって引っ張られて、軟らかい軟骨成分を含んだ骨ごとはがし取られてしまいます。

成人の場合では、中高年世代でこの骨折が目立ちます。

その理由は、若いうちは骨がしっかりしていて、
靭帯に引っ張られても骨ははがれず、靭帯損傷として終わってしまいます。

しかし、中高年世代になってくると骨の質が弱くなってきて、
捻挫などで靭帯によって強く引っ張られた時、
靭帯の付着部ごと骨がはがれてしまうからです。

腓骨遠位部の骨折が見逃されやすい理由

腓骨遠位端骨折の骨折線がわかりにくい理由の一つには、
レントゲン写真の撮り方があります。

下の絵になるように、
一般的には足首の正面からレントゲン写真を撮るときには
エックス線は真正面から腓骨に照射されるので(①の方向)、
骨折した部分と、腓骨本体が重なってしまって、
骨折線が隠れてしまいます。

このような条件で実際に撮ったレントゲン写真が下のものです。

赤丸で囲んだ部分には骨折線らしきものは写っていません。

しかし、レントゲンを照射する角度を変えることによって(②の方向)、骨折線がでてきます。

これは、骨折線の入っている角度になるべく近い角度を想定して斜め45°ぐらいから照射することで、
骨折線をとらえる撮影方法です(斜位像といいます)。

そうすると、上のレントゲン写真の患者さんと同じ方なのですが、
斜位像のレントゲンには赤丸印の中央に骨折線が見えます。

治療の方法

治療は、ギプス固定療法で治します。

下の写真にもあるように、足首を90°ぐらいの角度に保ったまま固定をします。

固定を始めてから2~3週間ぐらいは松葉づえを使用して患部に体重をかけないようにして歩いていただきます。

そして、骨折部分が安定していることをレントゲンで確認した後、徐々に体重をかけるようにして、
だいたい4~5週間ぐらいで固定期間は終了します。

その後は、足首を動かしながら関節の動きを良くすることと、
痩せてしまったふくらはぎの筋肉を強化するようにリハビリを行います。

そうすることで、ほとんど患者さんが支障なく日常生活にもどられています。

では、以下で実際の患者さんについて御覧いただきたいと思います。

子どもの腓骨遠位端骨折

7歳の男の子です。

右足関節の痛みを訴えて来院されました。

昨日、サッカーをしていて、ぬかるんだ地面に足を取られ、
転倒したそうです。

すぐにアイシングと、足関節を固定する処置を行ったそうです。

左のレントゲン画像は初診時のものです。

赤色丸印で示した腓骨遠位端部に骨折が認められました。

当日、ギプス固定を行い、松葉杖による免荷を行いました。 

左のレントゲン画像は、受傷1ヶ月後のものです。

赤色丸印で示した骨折部分は、認められますが、
転移しておらず、骨片は安定しています。

骨折部分が安定していたため、ギプスを後2週間行うことにしました。

左のレントゲン画像は、受傷2ヶ月後のものです。

骨折部は癒合してきており、圧痛も消失していました。

スポーツ復帰は、受傷から約2ヶ月半程度で、
以前からされていたラグビーを再開することができました。

左のレントゲン画像は、受傷後約10ヶ月のものです。

赤色丸印で示したように、
骨折部は、骨癒合していることがわかりました。 

ギプス固定と免荷を行い、スポーツ中止をすることで、
骨癒合しにくいといわれている腓骨遠位端骨折でも、
左のレントゲン画像のように骨癒合します。

6歳の女の子です。
左の足首を内がに捻るような形で受傷されました。

正面からのレントゲンでは、くるぶしの周辺は腫れていますが、
腓骨の骨折は見当たりません。

しかし、斜めから撮ったレントゲンでは、
うっすらと骨折線がはいっていることがわかりました。

ギプス固定を約1か月行って、
その間はできるだけ体重をかけないように指導させていただきました。

初診から2週間後のレントゲンです。

ギプスに緩みが生じたため、一旦ギプスを切って、
撮ったレントゲン写真です。

若干、腓骨の遠位部に骨折線が見えますが、
初診時とほぼ同じ位置にあるので、
骨折部が安定していることがわかりました。

そこで、再びギプスを巻いて、固定を継続しました。 

受傷後1カ月のレントゲン写真です。

以前に写っていた骨折線もほとんどわからなくなりましたので、
ギプスを外しました。

この時点で痛みもなく、歩くのもすこし引きずる感じはありましたが、
数日後には問題ない歩行状態になっていました。

受傷から1ヵ月半でリハビリも終了し、この時点で完治となりました。 

7歳の女の子です。

椅子から飛び降りて右足を内側へ捻るような形で受傷されました。

赤丸で囲んだ部分が、左足の同じ部分と比べて、
腫れていることがわかります。 

右足首を横から見て見ると、
赤矢印で示したところを押さえると、強い痛みがありました。 

この症状からだと、足首の捻挫も考えられますが、
お子さんの場合、靭帯のついている腓骨の遠位部での骨折も疑い、レントゲン撮影を行いました。

そこで、レントゲン撮影を行ったところ、
正面像では足関節周辺が腫れていることはわかりましたが、
骨折線ははっきりと見られませんでした。

次に、斜位像で確認してみると、
赤丸部分に骨折線が見つかりました。

ですので、ギプス固定を約1ヵ月間行いました。 

受傷後約1ヵ月半のレントゲン写真です。

赤丸部分に、もう骨折線は見られません。

ですので、完全に骨癒合ができたと判断しました。

その後、足首を動かしても痛みも見られませんでしたので、
特別なリハビリも行う必要はなく、
この時点で完治となりました。 

次は10歳の女の子です。

右足を内側へ強くひねって、受傷されました。

初診時に腫れと、腓骨の遠位部を押さえると、
強く痛みがあったために、単なる捻挫ではなく、
剥離骨折を疑ってレントゲンを撮りました。

斜位像のレントゲン写真でもはっきりとはわかりませんでしたが、身体所見から、骨折の疑いが十分にあったので、
ギプス固定を行いました。

すると、2週間後にギプスをとって、
レントゲンを斜位像で撮ったところ、
赤矢印の先の部分に骨折線が見えてきました。

ですので、再度ギプスを巻き直して、
固定をさらに2週間延長しました。 

受傷後、1ヵ月半のレントゲン写真です。

この時点で、固定を完全に除去し、
リハビリを開始しました。

赤矢印で示した部分は骨折線が薄く残っていますが、
足首を動かした時に痛みもなく、
腓骨部分を押さえても痛みが出なかったので、
この時点で治ったものと判断しました。

この方のように、
最初からはっきりと骨折線がわからないケースもあります。

ですので、身体所見をしっかりととり、疑わしきは、ギプス固定を行うことで、結果として、骨折を発見し治療を行うことができる場合もあります。 

9歳の男の子です。

前日にサッカーの練習中に誤ってボールに乗ってしまい、
右足を内側に強くひねって受傷されました。

正面からのレントゲンでも、斜位像のレントゲンでも、
はっきりとした骨折線は見当たりませんでした。 

しかし、エコーを撮ってみると、
腓骨の端が一部段差を生じていることがわかりました。

健側と比べると、腓骨遠位部の周囲は急性炎症を疑う映像があり、明らかに外傷によって何らかの損傷があったことがわかります。

これらの所見から、腓骨遠位部の裂離骨折と判断し、
ギプス固定を行いました。 

受傷後1か月と、1ヵ月半のレントゲン写真です。

1か月の時点では、
はっきりとわからないぐらいに骨折部分が治っていました。

最終的に、念のため、
1か月半たった時点でレントゲンを撮ってみると、
骨折線が完全にくっついていることがわかり、
骨折の完治が確認できました。

この時点でサッカーにも復帰することになりました。

大人の腓骨遠位端骨折

60歳の女性です。

階段から足を踏み外し、左足を強くひねって受傷されました。

初診時のレントゲンでは、正面像ではっきりと骨折線が確認できました。

念のため斜位像を撮りましたが、はっきりとはわかりませんでした。

治療は1ヵ月間のギプス固定を行いました。

腫れが引いた約1か月後のレントゲンです。

骨折線はわからないくらいまでになっていました。

押さえた時の痛みはまだ少し残っていましたので、
関節を動かすなどして、元の状態に戻るように、
リハビリを開始しました。

68歳の女性です。

玄関の階段を踏み外して、右足を強く内側に捻り受傷されました。

くるぶしの周辺は腫れて、薄く内出血の跡がありました。

×印のところに強い圧痛がありました。 

レントゲンを撮ったところ、
赤矢印で示したところに若干段差があるように見えますが、
はっきりと骨折かどうかはわかりませんでした。

そこで、エコーを撮ってみると、
骨の連続性が断たれ段差が生じていることから、
骨折であることがわかりました。

そこで、ギプス固定を1ヵ月間行いました。 

受傷から1ヶ月後のレントゲン写真です。

骨折線も全くなく、骨癒合は良好でした。

60歳の女性です。

階段から足を踏み外し、左足を強くひねって受傷されました。

初診時のレントゲンでは、正面像ではっきりと骨折線が確認できました。

念のため斜位像を撮りましたが、はっきりとはわかりませんでした。

治療は1ヵ月間のギプス固定を行いました。

66歳の女性です。

歩いているときに、
段差につまずき右足首を内側に捻り受傷されました。

捻挫だと思い、様子を見ておられたのですが、
腫れが強く痛みも徐々に強くなってきたので、来院されました。

赤矢印で示した部分が特に痛く、腫れも認められました。

正面から見たレントゲンでは、骨折を疑う像は認められませんでした。 

しかし、斜位像を撮影したところ、
赤矢印で示したところにはっきりと骨折線が見えました。

このように、成人の場合の腓骨遠位端骨折でも、
斜位像の撮影が確認のために有効であることがわかります。

この方はギプス固定を1か月行うことになりました。 

48歳の女性です。

バレーボールの試合中に人とぶつかり、
左足首を強く内側に捻って受傷されました。 

赤矢印で示した部分が強く腫れ、痛みもありました。

レントゲンを撮ってみると、正面像ではっきりと
左腓骨遠位端に骨折が見えました。

受傷から約1か月の時点でのレントゲンです。

骨折線はほぼ消失し、患部の状態も良好でした。

ですので、足首を動かしたり、足周辺のリハビリを行い、
バレーボールに復帰されました。 

腓骨遠位端骨折は子供の場合と、大人の場合で折れる場所は良く似ていますが、
骨折部の状態には違いがあります。

子供の場合は骨折部には軟骨成分が多いため、
厳格に固定をしたとしてもなかなか完全に骨癒合することが難しい場合もあります。

しかも、固定をすることで痛みが早くとれてしまうため、
治ったものと思い、早急に体重をかけたり、動かしたりしてしまう傾向が見られます。

ですので、初期の診断が大切で、
親御さんも含め、治療方針を厳格に守っていただくことできちんと治る可能性が高くなります。

大人の場合では、腓骨遠位部の骨質が子供の場合と違うので、
骨折部分は骨癒合するまでに多少時間がかかります。

ですので、どうしても固定する期間が御子さんの場合と比べて長くなる傾向にあります。

固定を外したあとのリハビリにも時間がかかる傾向があります。

腓骨遠位端骨折の治療は初期の正しい診断の下、
きちんと治療すれば予後も良好です。

足首をひねったとき、捻挫だと過信せず、
おかしいなと思ったら早い目に病院へ行ってください!

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