手根管症候群に対する手術療法

このページでは、手根管症候群に対する手術療法についてご紹介します。

当院では、手根管症候群に対して、日帰りで行える手術をしております。

皮切が短く、手術時間も短く、安全かつ確実に行うことのできる手術です。

実際の症例をご覧いただきながら、手術の説明を詳しくしたいと思います。

当院で行っている手根管症候群の手術は「手根管解放術」です。

手根管症候群の手術は、手の皮線にそって、少しだけ切開し、
正中神経の通っているトンネルを広くする手術です。

皮線に沿って手術するので、術後の傷跡もほとんど目立ちません。

あらかじめ手術の前に、

こちらの図のように、正中神経と横手根靱帯の位置を正確に把握するために、

手にそれぞれの位置を書き込みます。

横手根靱帯は豆状骨と舟状骨結節を結ぶ線と、

有鈎骨鈎突起と大菱形骨を結ぶ線の間にある青色矢印の部分に存在します。

正中神経は第1・2指節間と、豆状骨の延長線上と有鈎骨鈎突起と、

大菱形骨の交わる部分(緑矢印で示したところ)をとおってまっすぐに伸びています。

手根管症候群では、横手根靱帯の中枢側(青色矢印で示した部分)

に絞扼された正中神経の偽神経腫が生じます。

きっちりと解剖学的な位置を把握してから、正確かつ安全で、
短時間に手術を終えるので、患者さんの負担は少ないのが特徴です。

傷は、約1週間から10日程度で治るので、

比較的早く水仕事をしたり、お風呂に入ったりしていただけます。

術後の予定は

点滴(抗生剤入り);2~3日

手術の傷は3~4cmぐらいです。
患部は皮下で縫ってあるので、皮膚表面はテープで止めてあるだけです。

濡れないように、さらにもう一度上からテープを貼ります。

ですので、抜糸の必要はありません。

患部の固定:1週間程度(包帯でゆるく止める程度です。)

入浴:患部を濡らさなければ翌日より可能

食事:手術当日は軽食で

リハビリ;翌日より指先の運動を開始

手術後の経過は術前の症状の程度や、

罹病期間によって個人差がありますが、

仕事や家事に早期に復帰できます。

入院の必要はありません。

この写真は手術後のものです。

手の皮線に沿って皮切しているため、傷跡が目立たないのが特徴です。

以下で実際の症例をご覧いただきたいと思います。

56才の女性です。

右手のしびれと痛みを訴えて来院されました。

3ヶ月前より、諸事が困難で、自転車に乗ると、右母指・
示指・中指・環指がしびれて痛いとのことでした。

ボタンの賭け外しなども、しにくいとのことでした。

この写真は初診時のレントゲン画像です。

レントゲンで画像では、特に異常はありませんでした。

このエコー画像は初診時のものです。

正中神経を長軸撮影しています。

横手根靱帯部分で、正中神経が圧迫を受けていることがわかります。

手根管症候群を疑い、後日神経伝導速度検査をおこないました。

神経伝導速度検査の結果では、
NCVといわれる神経の伝達スピードをしめす数値が、
健側に比べ低下していることがわかります。

客観的評価からも、手根管症候群と考え、手術を行うことにしました。

79才の女性です。

6ヶ月前より、右手のしびれが出現し、諸事が困難で、お箸も持てないとのことでした。

こちらの写真は、初診時の外観です。

黒い線で引かれた母指から環指にかけてしびれがあり、同部位に知覚低下もみられました。

赤色矢印の部分をたたくと、しびれている場所に強い痛みが出てきます。

このエコー画像は初診時のものです。

正中神経を撮影した長軸画像です。

手根管部分で正中神経が圧迫され、通り道が狭くなっているのがわかります。

手根管症候群を疑い、神経伝導速度検査を行いました。

神経伝導速度検査の結果では、

赤色で囲んだ、神経伝導速度の結果が、

健側に比べ、低下していることがわかりました。

はっきり正中神経の絞扼が認められたため、
手術療法を行いました。

83才の女性です。

右手のしびれを訴えて来院されました。

1ヶ月前より、右手にしびれが出現し、よく物を落としてしまうとのことでした。

箸は持てるが、使いにくいともおっしゃっていました。

こちらの写真は初診時のものです。

黒い線を引いた部分の母指・示指・中指・環指がしびれています。

こちらのエコー画像は初診時のものです。

圧迫を受けている部分の正中神経は細くなっており、

そのすぐ中枢側に偽神経腫が生じていることがわかります。

そこで、手根管症候群を疑い、神経伝導速度検査を行いました。

神経伝導速度検査の結果は、神経伝導速度は健側に比べ低下しており、

患側は電気を流してからの反応時間も遅いとわかりました。

この写真は手術前のものです。

手術を行うに当たって、ガイドになる図を描きます。

皮切のポイントを短くし、安全かつ正確に短時間で手術を終える工夫をしています。

手根管症候群は、固定療法や注射による保存療法も選択肢の一つです。

しかし、一度手根管症候群になると、なかなか症状が改善しないケースもあります。

当院で行っている手術は、皮切が短く、手術時間も短く、安全で正確です。

手のしびれで、生活に不自由を感じている方や、
手指の痛みがつらく、長期間お困りの方は、
手術療法も治療の選択肢の一つとして考えていただくこともできるかと思います。

手指のしびれで、お困りの方は、お近くの整形外科でご相談ください。

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