足関節が不安定な状態が続くと、
過度の関節の遊びによりすれた部分にトゲ状の骨ができてくることをいいます。
たとえこれがあったとしても、直接痛みの原因になることはないのですが、
不安定性がつづいて、さらに骨が大きく増殖して関節の運動を妨げたり、運動時の痛みが生じたときに問題になります。
では、この病気はどんなものなのでしょうか?
衝突性外骨腫は、上の図の赤丸の部分で痛みが生じます。
足関節の動きを斜め前から見ると、左のアニメーションのようになります。
ほぞ穴のような仕組みになった足関節は、不安定性がない場合、
距骨の上をスムーズにスライドしていきます。
軟骨面もつるつるしていて、滑りも良く、関節の動きが妨げられることもありません。
左のアニメーションは足関節を前からみたものです。
不安定性があって、距骨が内側に傾くようなことが繰りかえし続いた場合、関節の軟骨部分が傷つくことがあります。
さらに、骨の部分では、増殖性変化がでてきて、トゲのような部分ができることがあります。
左のアニメーションは、足を横からみたものです。
足首を下から斜め上に動かす、ボールをけるような動作をしたときに、足関節の不安定性があると、足関節の前の部分で衝突が生じます。
そうすると、衝突している部分では、足のトゲによって、
関節の運動が妨げられる結果となります。
さらに、足の関節が、前にスライドするような不安定性があると、距骨の軟骨部分さえも傷めてしまう結果となります。
このように足の関節が不安定であると、いろいろなところで関節の中で衝突が生じ骨棘(こつきょく)ができます。
以下で、実際の症例をご覧ください。
左の写真は、CT画像で骨棘(こつきょく)を表したものです(赤丸部分)。
今まで御説明したように、関節の不安定が原因で、骨が増殖して、トゲのようなものができてきます。
時には、下の距骨滑車(つるつるの軟骨面)を傷つけてしまいます。
左の写真は、20歳、男性のレントゲン写真です。
足関節の捻挫を繰り返していて、そのまま放置しておられました。
ところがある時、急に足首のひっかっかり感を覚えて、足首を踏み込めなくなったとのことで、御来院になりました。
上のレントゲン写真が足首を底屈(足首を下に向ける動作)を行ったときのものです。
下の写真が足首を背屈(足首を上に向ける動作)を行ったときのものです。
上の写真で→が指している部分に骨棘(骨のトゲ)が見えます。
下の写真の様に、足首を曲げたとき、この骨棘が下の骨に当たり、足首が曲げられなくなっていることがわかります。
さらに、負荷をかけてレントゲンを撮ってみると、
この方は、足関節の不安定性として、前の方にずれるということ(上部写真→側)と、内側に緩みがある(下写真→側)ということがわかりました。
CTを撮ってみると、一つの小さな骨のトゲだけがあるのではなくて、幅広く、いくつもトゲができているのがわかりました。
なおかつ、小さな骨片も存在していました。
痛みも続くので、この方は手術適応となりました。
骨棘を撮った手術後のレントゲンが左の写真です。
骨棘がなくなって奇麗になっています。
この方は靭帯がゆるんでいたので、靭帯の手術も同時に行いました。
ギプス固定4週間となりましたが、その後、日常生活も問題なく回復されました。
今度は、29歳サッカークラブ所属の男性です。
ボールをける際、左足首が痛むということで来院されました。
足首を動かしていただくと、背屈がしづらくなっていました。
痛みの場所は、一番下の写真の×印の部分でした。
つま先を下に向けた状態でレントゲンを撮ってみると、
左の写真の様になっていました。
つま先を上げた状態で、レントゲンを撮ってみると、
矢印の先に示したところに、骨のトゲができていて、
足首の動きを妨げていることがわかります。
CTで立体的に見てみると、
やはり単純にトゲがあるだけではなく、
広い範囲でトゲができていて、骨がギザギザになっていることがわかります。
別の角度からCTを撮ってみると、トゲだけではなくて、小さな骨片もあったということがわかりました。
この方は、足関節の不安定性があまりなかったので、骨片の摘出と、骨棘の摘出の手術だけになりました。
手術後レントゲンを撮ってみると、骨の表面が奇麗になっていることがわかります。
手術後、日常生活も問題なく、サッカーにも復帰されました。
足関節の不安定性は、痛みがなければついついほったらかしになりがちです。
確かにトゲがあったからといって、直接痛みに結び付かないこともあります。
しかし、足首の周りでは気付かないところで、
上記のようなことが起こっている可能性があります。
ですので、今後スポーツのプレーや、日常の段差で足首に引っかかりがあるなと思われる方は、
一度健康診断を受けるような気軽な気持ちで、
足首のメディカル・チェックを受けてごらんになることをお勧めします。
上記の例は手術適応でしたが、必ずしも全部が手術となるわけではありません。
テーピングや足関節装具で対処ができますので、
御困りの際は、御気軽にご相談ください。