腰椎分離症は良く耳にする疾患であると思いますが、
その病態は、成長期に活発にスポーツ活動をすることで起こる疲労骨折であるといわれています。
疲労骨折であるという考えから、早期に分離症を発見できれば、骨癒合が期待できます。
そこで、このページでは、当院で以前から取り組んでいる成長期の腰椎分離症に対する治療の方法を中心に
ご紹介していきたいと思います。
腰椎分離症とは?
腰椎分離症は以下のところで主に発生します。
成長期に見られる腰椎分離症の多くは下位腰椎に主に見られます。
上の点線で囲んだ部分を拡大すると、下の図のようになります。
赤矢印で示したところが、いわゆる腰椎分離が生じている所です。
この状態が続くと、腰痛の原因になります。
では、どうしてこのような状況になるのかという事を、下記で説明していきます。
腰椎ってどんな構造になっているの?
こちらの図は腰椎を取り出して、斜め上から見た図です。
椎体の後面に存在する腰の関節を形成する上関節突起と下関節突起の間を
橋渡しする部分を椎弓といいます。
この椎弓部分に繰り返すストレスがかかると、疲労骨折を生じます。
この状態が腰椎分離症の状態です。
腰椎分離症の発生メカニズムと痛みの関係
スポーツ活動のなかでも、特にランニングや体操競技によって腰が反ったり、
野球やテニスなどの腰をひねるスイング動作などが繰り返し続くと、
腰椎にストレスが加わり続けて、腰椎分離症を起こします。
発症の仕方はさまざまで、徐々に痛みを感じるケースや、
ある時一瞬ギクっと痛みが走って、それ以降腰痛が続くというような場合もあります。
どんなストレスが腰椎にかかっているのかというと、
この図のように、腰をそらすようなときには、椎弓を剪断するような伸展ストレスが加わります。
腰をねじるような動作では、椎弓を上下別方向へ回旋するストレスがかかります。
上で示した2つのストレスがずっと続くと、腰椎の椎弓部分に徐々に下の方から亀裂が入ってきます。
そして、それがさらに進行していくと、針金が何度も曲げられると、
折れてしまうように疲労骨折が起こります。
このように亀裂の入りかたや、進行度合いは、患者さんお一人お一人によって違います。
ですので、たとえ亀裂が入っても、亀裂が小さい早い時期に治療を開始すれば、骨癒合できると言えます。
亀裂が生じたことによって、周囲の組織にはさまざまな影響が出ます。
特に、痛みに関しては、分離部周囲の後枝内側枝と呼ばれる神経などを介して、痛み信号が伝わっていきます。
そして、後枝筋枝に伝わった痛みの信号は筋肉に緊張をもたらすことによって、腰痛となって現れます。
これが腰椎分離症の痛みのメカニズムです。
腰椎分離症の症状
腰椎分離症に限らず、腰部の疾患は腰のあらゆる動作に痛みとして出ます。
しかし、その動作の中で分離症を疑うべき動作は下の図のようなものです。
上の図のような痛みがある場合に、
腰椎分離症と診断するために、以下の写真のようなテストを行います。
上の写真のテストは片脚起立をし、軸脚に重心をかけた状態で腰を反らせます。
軸脚側の腰に痛みが出現すれば、腰椎分離症を疑います。
腰椎分離症の診断から治療に至るまで
当院では、腰椎分離症を治療するに当たり、
患者さんご自身とご家族の方も含めて、以下のような方針をご説明させていただき、
治療にあたっております。
上記のような流れで、骨癒合が可能と判断した場合には、
今後の治療の見通しや計画を御説明したうえで、
骨癒合を目的とした腰椎分離症の治療を開始します。
その根拠となる指標が以下の表です。
骨癒合を目的とした治療を行うタイミング
腰椎分離症の骨癒合を目的とした治療を行うに当たっては、
発見した時期によって治療の方針がまったく異なってきます。
骨癒合が期待できると判断できる時期は、上の表でいうところの早期と進行期です。
なかでも、亀裂がないできるだけ早い時期に見つけることができれば、早期治療ができるので、
早期にスポーツ復帰が可能となります。
進行期の中でも、発見時期がなるべく早ければ、骨癒合を目指した治療に入る事が出来て、
結果としてスポーツ復帰も早くなります。
終末期では、骨癒合の期待は限りなく少なくなりますが、
体幹トレーニングや極力腰に負担がかからない動作スキルを身につけることによって
十分にスポーツができるように当院ではリハビリ指導を行っています。