石灰沈着による関節の痛みは、日頃よく使う手関節や手指にもおこります。
腱鞘炎と思っていたら、腫れてなかなか痛みが引かない、
そういう場合には、石灰沈着による関節炎や腱鞘炎だったということもあります。
このページでは、石灰沈着による手関節や指関節の痛みについて見ていただきたいと思います。
手関節の石灰沈着
51歳の男性、左手関節の痛みを訴えて来院されました。
急に手が痛みだし、腱鞘炎かなと思って様子を見ておられましたが、腫れもきつくなって、痛みもあったので、来院されました。
赤矢印で示した部分に腫れと赤みがありました。
レントゲンを撮ってみると、左手の豆状骨と呼ばれる骨の上にうっすらと石灰の影がありました。(赤色矢印の先)
良い方の右手と比べてみると、明らかに左手には石灰化の影があることがわかります。
エコーで確認すると、ちょうど豆状骨の周辺に付着する腱のところに、石灰の影がはっきりと写っていました。
これが原因で、急性の炎症をおこしていると判断し、
この部分に痛み止めの注射をしました。
痛み止めの注射をすることで、痛みはすぐに収まりました。
75歳の男性、3日前より急に手が痛み出し、
じっとしていても痛い、手がうずくと訴えて来院されました。
赤矢印で示した周辺の部分が明らかに赤くなって腫れ、
手首を動かした時の痛みが特に強いそうです。
左右を比較してみると、明らかに右手の甲から手関節にかけて腫れているのがわかります。
手が腫れていますが、この原因は何かというと …
レントゲンを撮ってみると、手関節の中に黄色矢印の先で示したように石灰の影がありました。
今度は横からレントゲンを撮ってみると、手首の少し上の部分に石灰の影が見えます。(黄色矢印の先)
左のレントゲンは初診時から3週間後のものです。
石灰化の影はもう見受けられません。
角度を変えて横から摂ったレントゲンでも、石灰化の影は見受けられません。
これは、白血球によって掃除されて、石灰が消失した証拠です。
このように、石灰は体内にある白血球の貪食作用によって、無くなっていくのです。
62歳の女性です。
親指の付け根のあたりが腫れて、急に痛みが生じたので来院されました。
左右を比べてみると、赤色矢印の先が明らかに腫れていることがわかります。
ちょうど赤矢印のところが腫れていますが、
こういう部分に痛みがある場合、変形性関節症や母指の腱鞘炎なども考えられます。
しかし、明らかに赤くなって急に発症したということと、
軽い熱感などがあれば、石灰沈着由来の痛みであるということが考えられます。
レントゲンを撮ってみると、母指の付け根付近の関節に石灰化の影がありました。(赤色矢印の先)
ですので、石灰沈着性の炎症であると断定できました。
手関節周辺が腫れて痛む疾患には使い過ぎで生じるものが多いので、使い痛みかと思って様子を見ることが多いのですが、
石灰沈着の場合には、突然発症することで、
使い痛みと区別することができます。
手指の石灰沈着
手指の関節に石灰が沈着した例です。
明らかに右手の中指が腫れていることがわかります。
右手の中指が曲げられなくなって、
指先から、指の中ほどにかけて腫れています。
しかし、怪我をしたとか、捻挫などは一切ありません。
レントゲンを撮ってみると、赤色矢印の先に石灰化の影がありました。
ですので、痛みどめの注射をし、
指を曲げると痛いので、痛みと腫れが引くまで短期間固定しました。
55歳の女性です。
怪我やねんざなどをしていないのに、
前日から急に右手薬指が痛み出したということで来院されました。
右手薬指の中ほどが腫れて赤くなっています。(赤色矢印の先)
レントゲンを撮ってみると、右手薬指の関節に石灰化の影が見えました。(赤色矢印の先)
指ならば、痛みがある場合には捻挫などをまず疑いますが、
捻挫などしていない、そして急に痛み出すという場合には、
石灰化を疑ってみる必要があるということが、この例からわかります。
49歳の女性です。
急に激しく右親指の付け根が痛み出したということで来院されました。
親指の付け根が腫れて、使い痛みによる腱鞘炎も疑われましたが…。
エコーを撮ってみると、
右親指付け根に石灰化の影が見えました。
レントゲンでははっきり分からなかったのですが、
こうやって、エコーを撮ることで、はっきりと画像診断できた例です。
親指の腱鞘部分に痛みどめの注射をすると、すぐに痛みは消失しました。
石灰沈着による手関節や手指の痛みは、普通使い痛みによる痛みなどが考えられますが、
使い痛みの場合には徐々に痛くなってくる場合がほとんどで、
使うのをやめて様子をみることが多いものです。
しかし、急に痛みだしたり、腫れたりした場合には、石灰沈着性の炎症を疑ってみましょう。
急に手関節や手指の関節が腫れたり痛み出したときには、
様子を見るよりすぐに病院へ行って、
診察してもらい、痛みどめの注射をしてもらえばすぐに良くなります。
ですので、急に強い痛みや腫れが出た場合には、整形外科を受診されることをお勧めします!