このページで御紹介するのは、肘関節周辺に見られた石灰沈着性腱炎です。
肘の関節の痛みには、使い過ぎで生じる上腕骨外側上顆炎が多いので、
その違いに注意しなければなりません。
55歳の女性。
右肘関節の痛みと、夜間のうずきを訴えて来院されました。
3日前から痛みがひどくて眠れないぐらいになっていたということで、赤矢印の先、×印で示した部分に圧痛があります。
左右の肘を比べて見ると、
右肘赤矢印周辺がぼんやり腫れており、圧痛も見られます。
上腕骨外側上顆炎の場合は、関節の腫脹はあまりありませんし、
運動時に痛みが発生し、夜間のうずきなどもありません。
ということで、石灰沈着による急性の炎症が考えられます。
レントゲンを撮ってみると、
赤色矢印の先にうっすらと石灰の影が見えます。
この部分に痛み止めの注射をすることで、
痛みは軽減しました。
64歳の男性です。
怪我等の原因も無く、左肘の後ろ側が痛むということで来院されました。
前日の朝から少しずつ腫れて来て、熱感も強くなり、
肘の曲げ伸ばしをすると強く痛みました。
肘をつくことが続く事が仕事上あるなどの場合は、滑液包炎を疑いますが、今回はそういったこともありません。
ですので、石灰沈着による急性の炎症を疑いました。
レントゲンを撮ってみると、
赤色矢印の先で示した部分に石灰沈着による影が見えます。
ですので、その部位に注射すると、
炎症も収まり、痛みも無くなりました。
男性の場合、糖尿病や高尿酸血症などの内科的疾患の既往歴がある場合、こういった石灰沈着による炎症がおこることがあります。
64歳の女性です。
約3週間前から、外傷もないのに痛みが出てきたそうです。
5日前に他の整形外科へ行かれましたが、湿布だけを処方されただけで、3日前に、接骨院へ行かれたのですが、痛みはとれませんでした。
そして、2日前から腫れが生じてきました。
また、肘の曲げ伸ばしをすると痛みがあるということで、
当院へ来院されました。
レントゲンを撮ってみると、
上の写真の×印で示したところと同じ部分に石灰沈着による影が見えました。
どれくらいの位置で、
どのぐらいの深さに石灰沈着があるのかを診るために
エコーを撮ってみることにしました。
肘を縦に切って長さ2.4cmの石灰像が見られました。
肘を輪切りにした画像では、
厚さ0.4cmの石灰像が写っていました。
その後の経過を見るために、初診から4日後に来院していただいたときに再びエコーを撮りました。
赤色矢印の先に見える部分が薄くなっています。
これは、石灰白血球によって掃除されて、
消失してしまって中心部が空洞化している映像です。
このように、石灰は体内にある白血球の貪食作用によって、
無くなっていくのです。