足関節Soft tissue impingement(足のインピンジメント症候群)

足関節捻挫の後、なかなか痛みが引かなかったり、
一旦治ったと思っていても、スポーツをしたら、
足首を動かすと痛みが生じて、満足な形で競技ができないということはありませんか?

実は、レントゲン検査では異常を認めなくて、関節の不安定性もないにもかかわらず、
足関節の痛みが生じている原因の一つに「足関節Soft tissue impingement」があります。

聞きなれない名前の疾患ですが、
これは足関節の周辺で軟部組織が挟まってしまうことが原因で生じる疾患の総称です。

主に、足関節の前面で見られることが多いのです。

このページでは、この疾患がどういった疾患なのか御紹介したいと思います。

この疾患では、上の図の赤丸で囲んだ部分が痛くなります。

足関節捻挫をしたときに痛くなる場所とほぼ同じ場所です。

しかし、捻挫と違うのは
捻挫した場合には内側へねじると痛みが生じるのに対し、
足関節Soft tissue impingementの場合には、足を上へ反すと痛みが生じます。

この疾患は、以下のような順序をたどって発生していきます。

ではどのような症状が出るのか以下の写真で、実際の患者さんの症例を見ていただきたいと思います。

上の図は足関節の前面にある靭帯や軟部組織が傷んでいるのを表しています。

肥厚した軟部組織が足関節の前面で邪魔をしているのがわかります。

中には、前脛腓靭帯の一部の繊維が傷んで引っかかることもあり、
症状が長引くと軟骨部分にまで傷が生じてしまうこともあります。

このように骨自体はなんら異常が見られなくても、
軟部組織に異常が生じ、足関節前面で挟まって痛みを生じる疾患を
「足関節Soft tissue impingement」といいます。

(impingementとは「挟まる」という意味です。)

以下で実際の症例を御覧いただきたいと思います。

12歳の男子、徐々に足首が痛くなってきたとのことで、来院されました。

特に捻挫をしたということもなく、赤い印の部分が痛くなったそうです。

来院時には歩くのもつらいということでしたが、
足関節の前外側部分に腫れと痛みが強くありました。

横から見た写真です。

足を下に向かって動かすと、左右差はありませんでした。

しかし、上に向かって足を動かすと、右足がうまく上がらず、痛みが生じました。

この部分に注射をすると痛みが消失し、
歩くことが可能となりました。 

エコーを撮ってみても、特別靭帯が切れているという所見は無く、左の赤色矢印で示した部分に橋渡しの線が見えています。

ですので、前脛腓靭帯には異常がないとわかりました。

今回の足関節前面の痛みの原因は、
軟部組織の炎症が起きて足関節の動きに制限がおこったものと考たので、

炎症止めの注射をして経過を見ました。

この患者さんは注射をすることだけで、完治しました。


次は、17歳のサッカー部の選手です。

練習の時に足関節の外側の痛みが続いていて、
痛みがなかなか引かないので来院されました。

捻挫は以前にもしたことがありますが、
治っていて、再び捻挫したわけではないのですが、
いつまでも×印のついたところが痛いということでした。

右足と左足を比べると、右足のほうが若干腫れていて、
×印の部分に注射をしてみると、

痛みが消失したので、この部分に原因があるとわかりました。

レントゲンを撮ってみても、 

足関節の骨に異常はありませんでした。

以下の、エコーやMRIの写真は、
上の写真の

赤丸部分にある前脛腓靭帯と
青丸部分にある前距腓靭帯について見ていきます。

エコーを撮ってみると、赤丸部分で示した
前脛腓靭帯の明らかな異常がこの映像でははっきりわかりませんでした。

前距腓靭帯を見てみると、
明らかに緩んでいるとか、走行が不鮮明であるということはありませんでした。

以上のことから、エコーで見る範囲では靭帯が断裂しているとか、緩んでいないということがわかりました。

さらに患部の状態を詳しく見るためにMRIを撮影しました。

すると、赤丸の中央付近にある
前脛腓靭帯の損傷はほとんど見受けられませんでした。

次に、前距腓靭帯を見てみると、
こちらは青丸で囲んだ部分に黒い線が出ていて、
緊張もあり、異常はおこっていないことがわかりました。

ということで、MRIから、足関節前面の痛みの原因は
前脛腓靭帯はほとんど損傷されておらず、
オーバーユースによって滑膜などの軟部組織が炎症をおこし肥厚して、足関節内に挟まったものと考えました。

1か月前から痛みが出ていことや、プレーに支障が出ていたことなどから、初診から20日後に手術を行うことになりました。 

赤い丸で示した部分が肥厚した軟部組織です。

肥厚した軟部組織を取り除いたのが左の写真です。

下に見える前距腓靭帯はしっかりとしていて、傷んでいませんでした。
術後しばらくギプス固定をしましたが、痛みと腫れの状態を確認しながら約2カ月で徐々にスポーツ復帰しました。

捻挫を甘く見て、最初にしっかり治療しなかったり、
軽い違和感を覚えつつプレーを続けていると炎症を助長することになり、
「足関節Soft tissue impingement」になってしまう場合があります。

ですので、初回捻挫時に、安静と固定を行ってしっかり治すことが重要です。

足関節捻挫後に足関節前面に痛みがある場合には、
「足関節Soft tissue impingement」ではないかと疑い、
早めに整形外科を受診して早く痛みを取り除くことが大切です!

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