バレーボールやドッチボールなどの球技をしている最中に、つき指をするような形で骨端線損傷が生じることがあります。
時には、指の変形が生じて、整復手技を必要とするような場合もあります。
このページでは、手指に生じた骨端線損傷の例をご紹介し、その治療の経過を含めてみていただきたいと思います。
手指の色々な場所で起こる骨端線損傷
手指は基節骨、中節骨、末節骨からなり、以下の図で示すように、色々な部位で骨端線損傷が生じます。
手指で起こる骨端線損傷の治療法としては、副子やギプスを用いた固定を2~3週間することで治ります。
受傷直後は、指の変形が見られるような場合であっても、徒手整復をして、
元の位置に骨を戻し固定療法を行う事で十分治ります。
子供さんの場合、日常で自然に指を使う事が、そのままリハビリになるので、
ギプスが取れれば、特別なリハビリもほとんど要りません。
では、以下で実際の患者さんの症例をご覧いただきたいと思います。
基節骨骨端線損傷
13歳の男の子です。
右母指の痛みを訴えて来院されました。
前日、野球をしていて、スライディングをした時、
右母指を地面にぶつけ受傷されたそうです。
近隣の整骨院を受診し、
翌日、当院へ紹介となりました。
左の写真は初診時のものです。
赤丸印で囲んだ部分に腫脹が見られます。
レントゲン撮影を行ったところ、
赤色矢印で示したところに、
右母指基節骨骨端線損傷(Salter-HarrisⅡ型)がめられました。
転位が認められるため、徒手整復を行い、ギプス固定を行いました。
左のレントゲン写真は、整復後のものです。
転位していた部分は元に戻っていることが確認できます。
左の写真は受傷後3週間のものです。
ギプスを除去し、レントゲン撮影を行ったところ、
骨端線損傷は治っていることがわかりました。
10歳の女の子です。
左手小指の痛みを訴えて来院されました。
昨日、球技運動をしていて、ボールが左手小指に当たり、
受傷されたそうです。
左の写真は初診時のものです。
赤丸で囲んだ部分に、腫脹が認められました。
レントゲンを撮ってみると、赤色矢印で示した部分に
左小指基節骨骨端線損傷 (Salter-HarrisⅡ型)が認められました。
転位が認められたので、徒手整復を行って、
ギプス固定をすることにしました。
左のレントゲンは、徒手整復を行い、
ギプス固定をした状態で撮影したものです。
固定方法は、隣接する指を添え木変わりにして、
2本の指をまとめてギプス固定を行いました。
赤色矢印で示した部分にあった転位は、
元の正常な位置に戻っていることが確認できました。
受傷後3週間のレントゲン写真です。
赤色矢印で示した骨端線損傷の部位は、
治っていることが確認できました。
中節骨骨端線損傷
9歳の男の子です。
左環指の痛みを訴えて来院されました。
受診当日のお昼頃、左手にボールが当たり、受傷されたそうです。
左の写真は初診時のものです。
赤丸で囲んだ部分に腫脹が認められます。
向かって右の写真は、爪の方向を見て、
回旋転位の有無を確認しているところです。
左環指に回旋転位があることがわかります。
レントゲン撮影したところ、
左環指中節骨骨端線損傷(Salter-HarrisⅡ型)が認められました。
転位が認められたため、徒手整復と固定を行いました。
徒手整復は、左環指DIP関節PIP関節を屈曲位にさせ、
そのままの肢位でテーピング固定を行いました。
さらに上からアルミシーネの固定を行い、
指が伸ばせないようにしました。
左のレントゲンは、整復後のものです。
転位があった骨端線損傷の部位は
元の位置に戻っていることが確認できました。
左の写真は受傷後3週間のレントゲンです。
伸展位にしても、転位は認められず、
骨折部が治っていることが確認できました。
末節骨骨端線損傷
14歳の男の子です。
右環指の痛みを訴えて来院されました。
受診当日、学校のドアで指を挟んで受傷されたそうです。
左の写真は初診時の外観写真です。
赤色丸印で囲んである部分に腫れと、変形が確認できました。
レントゲン撮影を行ったところ、
右環指末節骨骨端線損傷(Salter-HarrisⅡ型)が認められました。
転位が認められたため、徒手整復を行い、
アルミシーネによる固定を行いました。
左のレントゲンは、整復後のものです。
赤色矢印で示した部分に認められた転位は
元の位置に戻っていることが確認できました。
受傷後3週間のレントゲンです。
赤色矢印で示した骨端線損傷は治っていたため、
この時点で固定を除去しました。
手指の骨端線損傷は成長期の子供さんによくみられます。
痛みが強く、腫れも強いため、大変な怪我に見えますが、
子供さんの骨折は回復が早く、元のように動かせるようになります。
損傷の程度はさまざまですが、早めに処置をすればきちんと治る怪我ですので、
医療機関への早めの受診をお勧めいたします。